家出少女は昔振られた幼馴染と瓜二つ

ナックルボーラー

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 鈴音がウサギと戯れた後、俺達は様々な動物を見て回った。
 本当にこのテーマパークはお金が掛かっているのか、動物だけでも100種類いる。それだけの動物を一日で網羅するのは難しく。有名所だけを回ったのだが、終始鈴音の目は輝いていて本当に楽しそうだった。
 そして、5時を回った頃。動物園を楽しんだ鈴音は、最後に俺に願いをして来た。

「ねえ康太さん。最後にさ、ここには公園みたいなフリースペースがあって、そこで……遊ばない?」

 遊園地と動物園とは別に、ここには芝生の広場があって、そこで遊ぶことも出来る。
 しかも道具の貸出もしていて、そこで俺達は”ある物”を借りる事にした。

「まさか、今日1日の締めがこれだなんて意外だな」

 俺は握っている物を鈴音に放り投げる。
 鈴音は俺が投げた物をキャッチして、それを俺に投げ返す。

「いいじゃん。私、これにも憧れていたんだしさ」

 鈴音が投げた物、軟式野球ボールを俺はグローブでキャッチする。
 そう。俺達が今しているのはキャッチボール。
 
 道具貸出の中にはサッカーボールやフリスビーとかもあったが、鈴音はキャッチボールを所望した。
 パンフレットに書かれている貸出場の説明欄にグローブやボールも貸し出ししていると書いてあったから、それで知ったらしい。
 この広場ではバットで打つとかは出来ないが、キャッチボール程度は出来るようだ。

「憧れって、キャッチボールこういったのって、普通男子がする物だろ。どうしてお前が」

 俺はボールと共に鈴音に質問を投げる。鈴音はそれを受け取り。

「私が良く遊んでいた公園にさ、「将来はプロ野球選手だ!」って毎日キャッチボールしている親子がいて、楽しそうにキャッチボールする姿が凄く羨ましかった。だから、一度お父さんとキャッチボール出来たらな、って思ってたんだ」

 本当に、鈴音のその父親に対する憧れを聞くと涙が出るぜ。

「それで、キャッチボールは楽しいか?」

「楽しいよ。よし! 私全力で投げるから、あまりの豪速球に驚き慄け!」

 又しても鈴音のフォームだけは見様見真似で経験者っぽいが、いざ投げて見ると。

「おいおい、何処に投げてるんだよ!」

「うわっ、ごめん!」

 俺のグローブから10個以上離れた所に暴投となる。大体予想は出来ていた。
 速度も無いから、横に逸れたボールだけど経験者の俺は難なくそれをキャッチ。

「いいか鈴音。ボールってのはな、こうやって投げるんだよ!」

 十数年ぶりのブランクを叩き起こして放り投げたボールは鈴音の胸に構えたグローブに入る。

「おぉお! ナイスボール! そう言えば康太さんって中学の頃野球していたんだよね。そう言えば、お母さんから聞いたけど、一度だけサヨナラタイムリーヒットを打ったんだってね」

「そうだぞ。最終回の7回裏、2-0で敗けてる状態でのツーアウト、ランナー満塁、回って来たのが7番センターの俺、正直俺に回って来た時点で皆諦めムードで、なんせ、その時の試合で俺は一度もヒットを打ってなかったからな。けど俺は、全員の予想を裏切り、内角に来たボールを左中間に鋭い弾道で打ち、1塁ランナーも帰還して、2-3で逆転勝ち! あの時の感触は今思い出しても気持ちいいぜ」

 鈴音に自身の武勇伝を語れて誇らしげになる。
 鈴音は他には他には?と聞いて来るが、野球でヒーローになったのはその試合だけでこれ以上語る事は出来なかったが、その後は他愛もない会話を交えながら俺達はキャッチボールをする。
 飽きもせずに、取っては投げて、取っては投げてを繰り返す事、約50回を超えた頃だった。

「本当に、この時間がずっと続けばいいな……」

 イキイキとキャッチボールを興じていた鈴音の表情が突然寂しそうな顔になる。
 その顔になった途端、鈴音はボールを握る手を下ろす。 
 そして鈴音は愛想笑いの様に微笑み。

「ねえ、康太さん。今日は私の我儘に付き合ってくれてありがとね。私の相手、大変だったでしょ?」

 突然の質問に戸惑い、疲れた事に対して疲れてないと言えば嘘になるが、それは親としての責務でもあり喜びでもあるのだから、俺は首を横に振り。

「別に、これぐらいの事、大変じゃねえよ」

 俺の言葉を社交辞令と捉えたかどうかは分からないが、鈴音は、ありがとう、と微笑して。

「本当に、今日は楽しかった。ずっと憧れていた。お父さんが出来たからこんな事をしてみたいって。動物園に行ったり、遊園地に行ったり、こうやってキャッチボールをしたり。本当はまだまだしたい事が沢山あるけど、今日の楽しい思い出があれば、もう……思い残すことはないよ」

「思い残すって……何を言ってるんだ鈴音!?」

 鈴音の言っている意味を全然理解出来ない俺が少し張り上げて尋ねるが、鈴音は俯き黙る。
 その時俺は、思い出したかの様に鈴音のあの事を問う。

「そう言えば、色々あって忘れてたけど、4ヵ月前の宮下が来た日、お前は理由も言わずに家出したな……。お前まさか、まだ何かを隠してるんじゃねえのか?」

 ドタバタしていて俺と凛は、あの日の鈴音の行動理由を聞くのを忘れていた。
 思い出し尋ねた俺に、鈴音は小さく笑い。

「これはお母さんにも聞いた事だけどさ。康太さんはお母さんとの子供、欲しい?」

 質問を質問で返され、その内容に俺は顔を熱くする。
 凛との間に子供が欲しい……って。子供がなんつう質問をしているんだ!
 はぐらかす事も考えた。だが、鈴音の目は真剣だった。真剣な奴に曖昧な回答は失礼だよな。

「欲しくないかって言われたら、欲しいよ」

 娘になんて返答をしているんだ俺は!
 けど、俺は嘘は言えなかった。違う。鈴音の真剣な目がそれをさせて貰えなかった。
 だが鈴音は、俺の回答に満足なのかニシッと笑い。

「良かった。もし気遣っていらないなんて嘘を言ったら、私は怒ってた……。それでいいんだよ、康太さん」

 俺を置いて勝手に満足している鈴音に俺は困惑を強める。

「鈴音。お前は本当に何を言ってるんだ? 俺が子供が欲しいからって答えて、お前はそれでいいって……理由を言えよ」

 自分の質問を真剣に答えさせるのに、俺の質問をはぐらかす鈴音だが、観念した様にその理由を話す。

「…………私ね。お母さんや康太さんの幸せの足枷に、なりたくないんだ」

 鈴音は儚く散る紅葉の様に微笑する。
 俺は、は?と鈴音の言葉を最初は困惑したが、徐々に感情が荒ぶり。

「足枷って……どうしてお前がそんな風に思うんだよ!? 俺や、凛が、一度でもそんな事を言ったか!?」

 鈴音の話す理由に驚愕した俺は語気強く言うと、鈴音は首を横に振る。

「康太さんやお母さんが絶対にそんな事は言わないのは分かってる。だけど……不安なんだ。お母さんと康太さんの間に子供が出来たら……。康太さんが今私に向けている愛情が枯れて、その子に向けられるんじゃないかって……」

 鈴音は今にも泣き出しそうな程に瞳を揺らす。これは……演技じゃない。俺の直感がそう告げている。

「お前……そんなことを……」

 鈴音が抱える不安を知って焦燥する俺。そして鈴音は目を擦り。

「康太さんは私のお父さんになってくれるって言ってくれた。本当に……本当に嬉しかった。康太さんみたいな優しい人がお父さんになってくれるなんて、私は幸せ者だって本気で思った……。だけど、お母さんも康太さんも子供が欲しいって言った。私は2人の意志を否定したくない。子供は愛の結晶。30年来の恋が実ったんだから、子供が欲しいって思うのは普通だよ……だけど」

 鈴音は再び目を擦る。何度も、何度も……。
 だけど、最後には押さえる事が出来ないと踏んだのか、鈴音は顔を俯かせる。そしてポタポタと鈴音から涙が落ちる。

「戸籍上親子になっても、私と康太さんは血の繋がりがない赤の他人……。だからもし、2人の間に子供が出来たら、いつか、康太さんの愛情がその子に向けられて、私は蚊帳の外に追いやられるんじゃないかって……怖かった。そうなるんだったら、結婚なんてしないでって思ってしまった……」

 足枷になりたくないってそういう事だったのか。
 鈴音は、実子と連れ子での愛情の格差を不安視しているんだ。

 確かに俺と鈴音は法律上で親子になっても血の繋がりはない。
 だから仮に、俺と凛の間に子供が生まれた時、鈴音と実子に対しての愛情の格差が生じてしまうのではと鈴音はずっと悩んでいたんだ。
 恐らく、俺と凛の結婚が現実味を帯びた時に気づき、その事を不安に思い家を飛び出したんだ。

「来年は恐らく、就活や卒業前で忙しくなるかもしれない。だから、今の内に楽しい思い出を作っておきたいとと思ったんだ。だから、お願いなんて言って今日、康太さんに付き合って貰った。多分、これからは学校生活や就活で時間が無くなると思うから、進級する前なら時間に余裕があると思って……」

 アトラクションに乗る笑顔、動物と戯れる笑顔は本物だった。
 鈴音……お前、あの笑顔の裏でそんな事を考えていたのかよ。

「ずっと考えていた……私が居なくなれば、康太さんは私に気遣う事は無くなるんじゃないかって。だから、高校を卒業した後、私は家を出るよ。だから康太さんはお母さんと幸せになってよ。私は私で自分で幸せを見つけるから……」

 鈴音は震える唇を噛んで止め、グッと涙を飲み込むように空を仰ぐと一回嗚咽を吐く。
 そして見上げていた顔を下ろすと、鈴音は堪えた笑みを浮かべ。

「だけど……だけど、独り立ちその時が来るまでは、私の事を、愛してくれると……嬉しいな」

 鈴音は覚悟は決まっていると笑顔を浮かべている。
 だが分かる。鈴音の笑顔は嘘だ。気丈に振る舞っているに過ぎない。
 
 鈴音は自分が居たら邪魔者になる。そう勝手に決めつけている。
 だから自分が居なくなれば、誰にも気遣う事をせずに俺達は別の子を育めると思っている。
 鈴音は俺達の足枷にはなりたくないって言った。その言葉に嘘はないだろう。
 だから、本当は泣き出したい気持ちを必死に押さえて、気丈の仮面で顔を覆い言っているのだ。

 そんな鈴音に、俺が出した回答は……。
 俺は鈴音の許に歩み寄り―――――――本気の拳骨を鈴音に食らわした。

「痛ぁああッ!」

 中々に全力だったからか、鈴音は痛みで涙目になる。そして鈴音は俺の顔を見て怯えた様に。

「えっと……康太さん、怒ってらっしゃる?」

「———————当たり前だ、馬鹿がッ!」

 人目を憚らずに怒鳴る俺に鈴音はビクッと身を縮ませる。そう言えば鈴音にこうやって怒鳴ったのは初めてだったかもな。俺は体内の空気を吐き出さんばかりに陰鬱にため息を吐き。

「正直ガッカリだぜ。お前が俺の事を全然信用してくれてないみたいだしな」

「信用していないって……そんなことはない! 私は康太さんの事を信用しているよ!」

「信用してないだろ! 俺と凛の間に子供が出来たら、お前への愛情が枯れる? 馬鹿を言うなよ! もし俺達の間に子供が出来ても、俺はお前のことを全力で愛するに決まってるだろ!」

 俺の言葉に鈴音は驚いた様に言葉を失う。
 俺は怒りで体を震わす。
 信頼しているが脳裏の片隅に僅かな疑心を抱く鈴音に対しては勿論だが……俺自身にも向けられていた。
 
 俺は昔から本当に鈍感野郎だ。親子二代に渡って悩みに気づいてやれなかったなんてな。

「なあ、鈴音。俺は凛だけを幸せにしたいんじゃない。家族を幸せにしたいって思っている。その家族の中にお前も入ってるんだよ。なのに……自分で幸せを見つけると言って、勝手に自分を邪魔者だと決めつけているお前を、俺が見送る事が出来ると思っているのか!?」

 俺は鈴音の手を掴み、自分の許へと鈴音を引き寄せる。

「お前は今日のお出かけは楽しいと思ってるようだが、俺だってそうだ! 今日お前と一緒に遊んで滅茶苦茶楽しかった! 今日は俺とお前の2人だが、凛も含めて……いや、もしかしたら家族が増えるかもしれない、家族皆で沢山の思い出を作ろうと思ってるんだ! その中にお前もいるべきなんだよ!」

 これまで鈴音が積み上げてきたアルバムに俺はいない。
 だけど、それでいい。時間は戻らないし、過去は変わらない。
 しかし、築けなかった時間は多くあるが、先の時間も多くある。これから先撮る写真の中に、俺や凛、まだ見ぬ子供が居ても、その中にお前が居ないと駄目だ。じゃないと、俺は笑えない!

 俺の言葉を聞いた鈴音は、咽び泣こうとする唇を歯噛みして堪え、震えた声で言う。

「だけど……私の中には、あの宮下って人の血が流れてる……。康太さんはあの人の事を嫌っていた……。こんな私を、康太さんはずっと娘だって、想ってくれるの……?」

「当たり前だ! お前が誰の血を引いてようが、お前はお前だ! 意地っ張りで、我儘で、悩みを一人で抱えて家出をする不良娘だが、自分が茨の道を通ろうと誰かの幸せを願える心優しい、俺にとって掛け替えのない大切な娘、古坂鈴音だ!」

 俺が凛との結婚を仄めかしてからずっと鈴音は溜め込んでいたのだろう。
 だが、その塞ぎ込んで不安で一杯だった心の壁が徐々に亀裂が入る。
 俺は鈴音を強く抱きしめる。

「鈴音。俺は自分の言葉に責任を持つ。俺はお前の父親になるって言ったんだ。だから俺は生涯お前の父親としてあり続ける。お前の気持ちに気づいてやれなかった駄目な奴だが、その言葉に嘘はない。俺の事、信じてくれるか?」

 俺の問いに鈴音は胸の中で静かに頷き。

「うん。信じるよ」

 ありがとよ、俺は鈴音の頭を優しく撫でる。

「凛はお前が幸せになる事を願っているが、俺も今では凛と同じ願いを抱いているよ。俺もお前の幸せを心の底から願っている」

 凛は口癖の様に言っていた。自分の人生は鈴音を幸せにしてやりたい、と。
 俺も凛の夢に近い目標に乗るつもりだ。

「お前にはこれから先、多くの困難が訪れるだろう。その度にお前は挫けそうになるかもしれない。だけどその時、俺を、家族を頼ってくれ。俺は、お前の為なら尽力する。そして、いつの日かお前が心の底から愛せる奴を見つけて、そいつと結婚して、子供を産んで、心の底から笑える家庭を作ってくれ。それが、からお前に対する願いだ」

 勿論、俺が言った事が全てではない。幸せの形は人それぞれで、俺はどんな形でも鈴音が幸せならそれでいい。鈴音が笑って過ごせるならなんだってするさ。俺は、コイツの父親なんだから。
 
 何故か鈴音が無言になった……かと思えば、鈴音はトントンと俺の腕を指で小突く。
 なんだ?と俺は下を向くと、鈴音は先ほどまでの涙は何処にもなく、朱色の夕焼けにも負けない明るい笑顔を浮かばせ。

「ありがとう、お父さん――――――大好き」

 そう言って鈴音は俺の頬に…………キスをした。

「—————————なッ!?」

 突然の鈴音からの頬にキスを食らった俺は、驚きのあまりに鈴音を離して距離を取った。
 顔を真っ赤にして狼狽する俺を、鈴音は悪戯小僧の様にニシシッと笑い。

「あれあれ~もしかしてお父さん、娘からのキスでドギマギしてる?」

「お、おまえッ!?」

「もう。そんなに怒らないでよ。たかが娘からのキスで。前の学校の同級生には高校生になっても挨拶の様にお父さんにキスをしている人もいたから全然可笑しくないよ」

 どんな家庭だよ!? いや、俺が知らないだけでそれが普通……なわけないよな!
 未だに鈴音からのキスに混乱している俺を、鈴音は自身の唇に指を当て。

「これから出来るかもしれない弟、妹に、初めての子からのキスをあげるわけには、いかないからね」
 
 不安で押し殺されそうになっていた辛そうな表情は陰りも無く、鈴音は全開の笑顔を浮かべる。
 その笑顔を見て俺は、鈴音への呆れと愛おしさを混ぜた苦笑を浮かべ。

「この馬鹿娘が。父さんを困らせるものじゃねえぞ」

 俺が笑いながら小言を言うと、鈴音は無邪気に鈴を鳴らす様に笑い。

「ハハハッ。ごめんごめん! それよりもお父さん、私遊び疲れてお腹空いたよ……。お母さんがご馳走作ってるそうだから、早く帰ろう!」

 スマホを見ると、家族で作ったグループに凛から送られた、テーブルに所狭しと並べられるご馳走の写真が貼られていた。
 最後は鈴音の本音の一波乱はあったが、本当に今日は楽しかった。凛も一緒に来ないとな。

「ああ、そうだな。凛にも今日の思い出を話してやらないとな」

「ねえお父さん。お腹も空いたうえに疲れたからおんぶをしてよ、おんぶ!」

「おんぶってお前……子供じゃないんだから……」

「子供だよ子供! 親からすれば子は幾つになっても子供なんでしょ? だからおんぶ!」

「そんな屁理屈を…………はあ、この我儘娘が」

 箍が外れた様に甘えてくる鈴音の押しに敗けて屈む俺の背中に、「ヤッター」と抱き着いて来る。
 そして俺は背中に娘の温もりを感じながら歩き出す。
 結局途中で本当に遊び疲れたのか、それとも心を締め付けていた不安と緊張が解けたのか、おんぶしている間に鈴音は寝てしまった。
 バスに揺られて俺の肩に寄り添う鈴音の寝顔を見て俺は思う。

 鈴音。俺はお前の父親として見守り続けるつもりだ。今みたいにおんぶをして歩いてやる。
 だけど、それは途中までだ。お前はいつか、俺の許を離れて自分の足で歩かないといけない。

 正直、離れて行くのを考えると少し寂しい気もするが、子の成長は親にとって喜ばしい事だ。
 それに、離れて行ったからといって、俺達の絆が無くなるわけじゃない。

 これから先、鈴音がどんな道を歩もうと、どんなに時が経とうと、鈴音が俺の大切な娘に変わりないのだから。
 俺は眠る鈴音の頭を起こさない様に優しく撫で。

「幸せになれよ、鈴音」

 俺の娘に対する切なる願いに、鈴音は、想いが届いたかの様に寝ながら嬉しそうに笑った。
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