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第二部
07:猫又さまのためにできること
しおりを挟む「こいつ……」
若葉がルイと呼ばれた猫を見て目を見開いた。
「金色の人間。オレに気付いてたんだな。ルナ姉の言った通り、いい目をしてる」
「ルイ、また勝手に……」
「勝手にじゃない。一応、クロの判断には従ってる」
(ルナ姉……。なんにしても、味方ってことかな)
「ねえ、九尾のひと粒……って何?」
わたしはさっきの言葉が気になっていた。『九尾の猫又』、それも神格化した存在なんて滅多にいないとは思っていた。けど、それはもしかしたら、資質よりも外因的要素が強いのかもしれない。
長いしっぽを揺らし、ルイくんは頷いた。
「九尾のひと粒は、九尾の狐が零した涙だ」
「涙?」
「ただの涙じゃない。九尾の狐の妖力を乗せたものだ。――本来、猫又が九尾になること自体あり得ない。それを可能にしたのがそのひと粒の涙だ」
ルイくんは続けた。
そのひと粒は強大な妖力をもって、生物を変質させる。魂にしみ込んだそれがゆっくりと。
たとえひとつの生で妖怪化しなくとも時を巡っていずれ九尾となる。
本来であれば、神格化することも、九尾となることもあり得ない魂が。
「なるほど。九尾の狐」
納得したように若葉が頷く。……確かに。九尾で真っ先にイメージするのは狐だ。まさか本当に存在していたなんて思いもしなかったけど。
「でも、なんで? 厄災だなんて……」
お母さんも疑問を口にする。
九尾といえば、傾国の美女のイメージが強い。国政を乱し、国を滅亡させる。けれど、同時に神獣でもあったはずだ。
「持つもの、接するものによって、価値は変わってくる。過ぎた力は歴史の流れを正す方向に使われても扱いとしては『厄災』になる。あの『猫又食い』はそうなりたいだけだ」
『人間も同族を殺すだろう』とルイくんが続けた言葉を否定することは出来なかった。つまり、その猫又食いがこれから行おうとしているのは領地争いの一貫なのかもしれない。
「あいつがクロかそこの新入りを食ったら、次はオレやルナみたいに霊力持ちの猫が食われるだろうな。『妖力持ち』と『霊力持ち』は美味いらしい」
「ルイ」
窘めるようにルナちゃんが呼ぶけど、ルイくんは続ける。
「それで、次は金のオーラを持つ人間」
「俺か」
「ああ。それと――その女」
不意に、わたしを見る。
「え? わたしにはなんの力もないはず、だけど……」
「残滓が残ってる。微かにだが、九尾の力だ」
「うそ!?」
「今まで生きてきて、本当に何もなかったか? 例えば強く思っていたことが叶ったとかもないか?」
「あ」
確かに、思い当たることはある。
強く願ったのは、ミケと過ごすために家で出来る仕事を。その願いは叶った。
そして、ミケとずっと生きていたいと。――それも、ミケが猫又になったことで叶いそうだ。
「口に出して願っただろう。お前の言霊は『願う力』が異常に強い。少しの雑念もなく口にした願いは『引き寄せる力』になる」
「ルイ、それは本当?」
ルナちゃんがルイくんを見る。もしかすると、ルナちゃんとルイくんはそれぞれ別のことが見えているのかもしれない。
「――確かに。姉さんは運が強いとも思ってたけど」
「だが、願いを叶えるということは、逆もしかり。強く口にしたものはそれが良くも悪くも現実になる可能性が高い」
つまり、宝くじで高額当選とかもいけるってことかな? それで大金を手に入れたことで不幸になるとか、今だと――
「例えば今「今『最悪』をイメージするな。――お前の教育も必要だな」
ルナちゃんの役目はミケを育てること。
そして、ルイくんの役目はわたしが何なのかを教えること?
(そうか。――これがわたしに出来ること。ミケと、強くなることができる)
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