愛することはない?教育が必要なようですわね!?

ゆるぽ

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現状把握

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シンシアが追い出された室内でいち早く我に返ったのは年配のメイドだった。



「レイモンド様!なにをなさるのです。彼女はシンシア・ヴィオーラ様ですよ!」



「…あの女にヴィオーラを付けるな!確かにかもしれんが僕はあの女を妻を認めたわけでは無い!」


「いえ、ですから…」


「もういい!貴様も出ていけ!!」




そういってレイモンドは年配のメイドまで追い出してい待った。

シンシアのことを詳しく知っているのはこのメイドだけだったため、残された従者やほかのメイドがレイモンドの間違いの訂正をすることは無かった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「全く何なのかしらあの子は…!」


別邸に用意した自室の椅子に座りながらシンシアはこれからのことを考えていた。


「とりあえず現状を把握することが重要ね…ジン」

「…ここに」



音もなく青年がシンシアの背後に現れる。

黒髪黒目で背は平均ほど、一見するとどこにでもいそうな使用人にしか見えない。



「とりあえずレイモンドについての情報を集めなさい。中心としては婚約関係について…ただ少しでも気になることがあれば報告して」

「御意に」


彼女の命令に答えるとまるで最初からいなかったかのように姿が消えた。


ジンと呼ばれる彼はヴィオーラ家に古くから使える一族で諜報活動などをになっており、その存在はヴィオーラに連なる各家の当主しか知らない。

ちなみにレイモンドが正式に侯爵を継ぐにあたってジンの一族についても今回説明されるはずであった。





「まずは情報の整理をしないと」

そういってシンシアはノートを広げた。

彼女の腕にかかる緩く癖のある金髪、愁いを帯びた表情。何も知らない者が今の彼女を見ればまるで絵画を切り取ったような感動を覚えるだろう。






「…まずはレンシア嬢とレイモンドの関係から…」





ノートにレンシアとレイモンドの名前が書かれる。


まずこの二人はいまだ婚約関係である。


本来ならなのだが、半年前に起こった災害のせいで先延ばしになっていたのだ。





「そういえば顔合わせも先延ばしになちゃったのよね…だからレイモンドはわたくしと彼女を間違えた?」





レンシア・サンフラワー伯爵令嬢のサンフラワー伯爵家が治める領地は大きな川が流れている関係で災害で大きな被害をうけた。

しかもサンフラワー領は小麦の名産地であったため国内における打撃は大きく、ヴィオーラ公爵家をはじめとした多くの家が復興を支援している。


そのためレンシア・サンフラワー伯爵令嬢はレイモンドとの顔合わせもまだの状態になっていたのだった。



「最近ようやく落ち着いたから結婚について進めようって話になってわたくしが指導に来ることになった…」



ノートに自らの名前を記入しレイモンドに向けて矢印を描く。



「でもやっぱりへんね。いくらレンシア嬢の顔を知らないからって名前が似てるだけのわたくしと間違えるなんて」




シンシアが今日侯爵家に到着することは事前に伝えていたはず。



「…しかもさっさと別邸に行けって言ってたわよね?わたくしが別邸に滞在することを把握しているのに間違えたの?」


余りの不可解さに頭をひねるシンシア。

すべてはレイモンドが斜め上の勘違いをしていたせいなのだが、今の彼女にそれを知るすべはない。
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