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第八章 戦いの先にある未来

5話 明日に備えて

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 あの後何故か三人で寝てしまったらしく、夕食が出来た事を知らせに来たサリッサに起こされてしまった。
その際にまだ目が覚め切っていない朧げな状態で――

「これは……カエデ様のお荷物も運んでおきますね」

 と言いう声が聞こえたけど……、夕食を食べている間に眼が覚めて来て改めてその言葉の意味を考えると二人では広く感じる部屋に三人を詰め込むのは正直どうかと思う。

「えっとサリッサ、さっきのってどういう?」
「どういうってそのままの意味ですよ?」
「そのままってレース?、サリッサさんがどうしたの?」
「あぁそれは……」
「それはも何も、サリッサのいつもの気遣いだろ?母さんは気にしない方がいいと思うぜ?」

 ダリアがそう言いながら夕食を美味しそうに食べる。
そういう気遣いをしてくれるなら予め言って欲しいなぁと思いながら夕食を食べ終えた後、うとうとし始めたルミィを背中に背負ったリサリッサが三階に行ったかと思うと、何故か空間収納の魔術が付与された手提げバックを持って降りて来ると……

「サリッサ?」
「レース様、ダート様しばしの間お部屋にお邪魔させて頂きますね」

 サリッサが部屋に入って行くと……中から何か重い物が動くような音がして何をしているのかと急いで向かうと、そこにはカエデの部屋にあった物が規則正しく並んでいる。
顔を真っ赤にして言葉にならない声を出しているカエデと、サリッサならそういう事をするだろうなと、何だかこの二週間の間で慣れて来てしまったぼく達は苦笑いをする事しか出来ないのだった。

「サリッサさん?こういうのはちゃんと私達に相談してからお願いします」
「……はい」

 この二週間の間で分かった事なんだけどサリッサは、まじめで大人っぽい人なんだけど少しだけズレている所がある。
一般的に変わっているぼくが言うのもどうかと思うけど、ぼく達に取って良い事だろうと思った事を勝手にやってしまう所があるから、たまにこういうトラブルが起きるのは慣れたが、最近この家に住むようになったカエデが驚くのも無理はない。

「ストラフィリアに居た時は、自分の判断でそうやって動くのは正しかったかもしれないけど……、ここはメセリーで違う国だから気を付けてね?」
「はい、次からは気を付けますレース様、そしてカエデ様、この度は勝手な事をしてしまい大変申し訳ございませんでした」
「あ、あの私は、驚きはしたけど……、別にそこまで気にしてないっていうか」
「……カエデ様?」
「将来正式な夫婦になる以上いつかは同じ部屋で寝食を共になるのは当然ですし、それが多少早くなったと思えば……特に問題は無いですけど、出来れば私の覚悟が決まるまでは色々と夜はお控え頂けたらなぁって」

 顔を赤めてぼくとダートを見るカエデを見ていったい何を言ってるのか分からないけど……、サリッサとダリアは何やら思い当たる事があったようで

「あぁ、カエデ様たまに夜覗いてましたものね」
「夜たまにうるせぇと思って見に行ったら興味津々に見てたもんなお前……」
「待っ、待ってそれは違くてっ!お二人共これは違うんですっ!えっと――」

 何やら必死に早口で言い訳のような事を言っているけど正直何を言ってるの分からないから反応に困ってしまう。
ただダートは何となく分かるようで、小さな声でぼくに『私は気付いてたけど……、止めさせた方が良かった?』というけど、確かに部屋の中を勝手に覗かれていい気持ちはしないから、気付いてたのなら止めて欲しかった。

「まぁ……、カエデが嫌じゃないなら良いんじゃないかな」
「だから私はやましい気持ちがあるわけじゃなくて……あ、あれ?」
「だってカエデが言うように、遅かれ早かれ夫婦になるなら同じ部屋で過ごす事になるだろうし、こうなった以上はしょうがないかなぁって、まぁ取り合えず部屋のベッドは二人で使っていいから、ぼくは暫く床に寝具を敷いて寝るよ」
「んー、それならカエデちゃんが使ってた部屋にベッドが残ってると思うしそれを繋げて三人で寝れるようにするとかどうかな」
「とりあえず今はそれでいいとして……、今度コルクの雑貨屋で良いのが無いか探してみるよ」

 取り合えず今日はそれでいいけどダートの寝相が結構悪いから、カエデの事を考えたら明日のBランク昇格試験が終わったら直ぐに買いに行こう。

「えっと……、これは私どうしたらいいのでしょうか」
「サリッサ、俺達は多分この状況だと邪魔だと思うから上に行ってさっさと休もうぜ?」
「えぇ、はい分かりましたダリア様……、今日こそはしっかりとしったお淑やかな服装でおやすみして貰いますよ?」
「やだよ、俺はこの服装の方が好きなんだって事で父さん、母さん……、俺達は上行くから後は三人で存分に話し合ってくれよな」
「レース様と奥様方、明日はお早いと思うので出来る限り早めに休んでくださいね、ダリア様っ!その服装が好きなのは構いませんがお腹周りと脚を露出した破廉恥な姿は、出来ればお控え下さいってお待ちくださいダリア様っ!……、もうっ!では私も失礼致しますね、おやすみなさいませ」

……ダリアが走って三階へ行くと、ぼく達に向かって頭を下げたサリッサが追うように上がって行く。
そして残されたぼく達はと言うと、ダートが三階のカエデが使ってた部屋にベッドを取りに行くから先に部屋で休んでて欲しいという事で……、言われた通りにすると暫くして空間収納にベッドを入れて部屋に入って来た。
そして何故か元からあるベッドの隣に置くと『これでレースとカエデちゃん、私と三人並んで寝れるね……、あ、レースは真ん中ね』と言って横になると、カエデが顔を赤らめて真ん中を空けるようにしてベッドに横たわる。
何だか気恥ずかしい気がするけど、明日の昇格試験に備えて眠る事にするのだった。
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