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第八章 戦いの先にある未来

6話 Bランク昇格試験

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 そして朝になり朝食を食べた後、ダートとカエデから――

『上手く行くように遠くで見てるから頑張ってねレース』
『教授の新しい技術についてこの目で見て情報を纏めたいので、私も観戦させて頂きますので、先に行っててくださいね』

と送り出され、冒険者ギルドに向かうと……高ランク冒険者担当職員のエレノアに連れられて、ギルド内にある訓練場に連れて行かれる。

「今から試験の担当者を呼んで来るので待ってて欲しいんよ」
「……うん、ありがとうエレノアさん」
「辺境都市クイストの冒険者ギルドとしては……、この前の開拓で多くの冒険者が犠牲になったから高ランク冒険者が増えてくれるんは助かるんよ、正直この都市の依頼を受けるってなると低ランクの人達だと危なすぎるとうちは思うし、だからレースさん頑張ってね?」

 そう言って教授を呼びに行ったエレノアを見送ると、手に持った心器の武器の確認をする。
一応訓練場に入る前に大剣利き手に長杖を反対の方で持つようにしたけどこれには理由があって、心器を扱う技術を持ってない人ならこうやって予め出しておけば、これが魔力によって顕現させられ事は無いと思っての行動だ。
そう思いながら教授が来るのを待っていると訓練所に、以前冒険者ギルドで殴ろうとして来た元Bランク冒険者で【蛮勇の鋼戦斧】という二つ名を持っていた人が入って来て、何故かこっちを睨みつけて来るけどいったい何がしたいのだろうか……。
更にダートとカエデ、そしてダリアが入って来てこっちに手を振って来る。

「レース頑張ってっ!」
「父さん、情けねぇとこ見せたら今日の夕飯サリッサに言って、苦手な物だけにして貰うからなっ!」
「レースさん、怪我はしないでくださいね」

 それぞれが声を掛けてくれるけど、家族に見られていると思うと緊張してきた。
確かに訓練場には冒険者の資格がある人なら誰でも入る事が出来るけど、それならどうしてダリアもいるんだろうか。
もしかして何時の間にか冒険者の資格を取得したとか?と色々と思う事があるけど、どうやら考えて居る時間は無いようでエレノアに連れられた教授が入って来る。

「ウィリアム教授、レースさんはもう準備出来てますので配置に早くついて欲しいんよ」
「分かっておるとも……、だがね?栄えあるメセリーの紳士たる者如何なる時も余裕を忘れては行けないのだよ」
「うぅ……、何なのこの人」

 何故か手にティーカップを持ち優雅に紅茶を飲みながら話しかけてくる姿は何とも緊張感が無い。
こっちは心器を顕現させている間魔力を消費し続けるから早く始めたいのに……

「さて、レース君待たせたね」
「いえ、そこまで待ってないので大丈夫ですよ教授」
「……おや?そうかい?、君の魔力を減らす為に大分ゆっくり来たはずだったんだけどね、それは残念だよ」
「あの……、取り合えず試験官と昇格試験を受ける冒険者が揃ったので説明を致します、勝敗は問いませんが試験立会人である高ランク冒険者担当職員であるうち、エレノア・ステラ・クラウダが八百長等の不正の有無を監視しながら進行させて頂きます、また試験官一人の判断の場合公平性を失う可能性がある為、試験後の昇格の有無に関しては試験官、試験官立会人、ギルド長三人での協議の元行うので、安心して全力を尽くしてくださいなんよ」
「ふふ、八百長何てありはしないがね……、何故なら私は天才だからそのようなする事無くても結果は分かっているのだよっ!……ではレース君早速始めようでは無いか、あ、あとエレノア君だったかな?ティーカップを預かっておいてくれたまえ」

 教授は飲みかけの紅茶が入ったティーカップをエレノアに渡すと、紳士服のポケットから手の平サイズの筒を取り出すとそれを一回強く握ってから手を開く。
すると一瞬にして治癒術師が使う長杖と同じ大きさになると、更に別のポケットから円形の部品を取り出すと先の部分に取り付ける。

「さぁ、何処からでもかかってきたまえ、既に試験は始まっておるのだよ?レース君」
「……長杖しか出してないと思うけど?」
「ふふ、この長杖は魔導具として改造してあってね……、空間収納の効果が付与されているのだよ、試しに攻撃したまえよ」
「教授、怪我しても文句は言わないでね」

 長杖から魔術を使い雪玉を複数ばら撒くように飛ばすと、そこから尖端が鋭く尖った【スノースパイク】を教授に向かって撃ち出す。
これなら直ぐに決着がつくかと思っていると、教授の周囲から三角の形をした板のような物が飛び出して来たかと思うと、空中で静止して周囲に魔力の光を展開し攻撃を全て受け止めてしまう。

「……え?」
「私が開発した魔力ビットだよ、使用者の魔力に反応して起動し自動で攻撃を防いでくれるしかも、それが魔力量次第では最大で三個も同時に展開出来るのだよ、こういう風にっ!」

 更に二つの魔力ビットが飛び出して来たかと思うと、三つが等間隔で広がり教授の全体を覆うように魔力の光を展開する。

「更にこの魔力の盾は魔力は見て貰ったから既に分かっているとは思うがね?、何と物理的衝撃にもある程度対応しているのだよ……、その為に態々魔力伝導率の良い鉱石をトキ君に加工して貰ったりと、作成コストが大分かかったが良いものだろう?」
「……その物理衝撃はどれ位までなら耐えれるの?」
「ん?理論上であるのなら、君が分かるとは思えんが城や砦の門や壁を壊すのに使う破城槌や、トレーディアスの海軍が使う大砲の一撃位なら余裕で耐えきる筈だがそれがどうしたのかね?」
「……確かに分からないけど凄い硬いって事は分かったかな」

……そう言うとぼくは長杖の能力である【怪力】と治癒術を同時に発動させる。
全身から赤色に染まった魔力が噴き出す……、そして肉体を動かす度に体の何処かの骨が軋み、そして破裂して折れる感覚がするけど、怪力を使いこなす練習が出来るならここしかないだろう。
そう思いながらぼくは利き手に持った大剣を勢いよくウィリアム教授へと叩きつけるのだった。
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