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第九章 戦いの中で……
間章 マンティコアの親子 ???視点
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森の奥にある小屋から少し離れた場所で、人の何倍もの大きさを持つドラゴンが地面に体を横たえていた。
それはまるで眠っているようで……しかし近づいて見るとその体の節々から流れ地面に溜まる血液は、命を無くした死体である事が分かる。
「……ほぉう、これは思ったよりも良い仕上がりになってきたじゃねぇか」
「うん……お父さん」
同じ紅い髪と茶色い瞳を持つ親子はドラゴンの亡骸の隣に座り楽しそうに笑う。
子供の方は背中に蝙蝠のような翼が生えており、臀部から生える蠍の尾からは先端から赤い血のような液体が付着して濡れていた。
「大分体の使い方に慣れたみたいだな?」
「うん、前の身体みたいに何処も痛くないし苦しくない……、それに思うように動くから楽しいよ!」
「はっはっ!そりゃあ良かったなぁルード!」
そう言ってルードと呼ばれた少年の頭を力強く撫でる。
嬉しそうな顔をして頬を染めると……
「もう……ケイスニル父さん、恥ずかしいよ」
「恥ずかしがるなって、おめぇは褒められて当然の事してんだからよ」
「う、うん……」
ケイスニルと呼ばれた父親に当たるであろう男が鋭い牙を見せながら笑う。
「んで?ルード、おめぇはこのドラゴンをどうすんだ?」
「この子も食べたらアンデッドにするよ、僕の友達になってもらうんだ」
「確かに食った方がいいな、俺達マンティコアは強い獲物を喰えば喰う程強くなるからな……俺はこれ以上は強くなれねぇが、おめぇなら何処までも強くなれる筈だ……そういやこの戦いが終わったらよ」
「終わったら?ケイスニル父さんどうしたの?」
「ん?あぁ、終わったらルード、おめぇは俺を殺して喰え」
父親になった男を殺して喰え、その言葉を聞いてドラゴンにかぶりつこうとしていたルードは驚きに眼を見開く。
「……え?おとう、さん?」
「あんまこういう言い方したくねぇけどよ……、飼い主に反旗を翻そうとしたのがバレちまったみてぇでな、多分俺はこの戦いが終わったら間違いなく殺される」
「……シャルネおねえちゃんに?」
「ん?おめぇ……飼い主の名前を言えるようになったんだな、あぁそうか俺の魔力と合わさって存在そのものが変わったからか、まぁそのなんだ?その通りだ」
「じゃあ僕がケイスニル父さんが殺される前に、シャルネおねえちゃんを殺して友達にするね?」
ルードのその瞳は冗談を言っているようには見えず強い意思を感じさせる。
その強さは今はまだ息子よりも遥かに強いケイスニルが思わず数歩後ずさる程で……
「……気持ちは嬉しいがやめておけ、あれは俺達に同行できるようなもんじゃねぇ、俺がまだわけぇ時にこの国でやりあった事があんだけどな?」
「もしかして負けたの?」
「あぁ、たった三人にボロボロにやられちまったよ……しかも俺以外全員皆殺しだ」
「でも今はシャルネおねえちゃんは一人だよ?」
「一人なのが問題なんだよ、飼い主を止めれる奴がもうどこにもいねぇんだ……、当時は隣にゼンっていう将来旦那になる事になるやべぇ剣士がいたんだが、暴走しそうになると力尽くでも止めてたからな」
ブレーキ役のいない限界に至りそこから更に超越するに至った者。
そんな化け物と戦う事になったら本当の実力を隠していたSランク冒険者と同等の実力を持つケイスニルであろうとどうする事も出来ないだろう。
それ程までにSランク冒険者【天魔】シャルネ・ヘイルーンの能力は異常なのだ……、背中から天使と悪魔の翼が生えた時にだけ使える【暴食と施し】と言われる【天魔】と呼ばれるたった一人の種族のみが使える事が出来る力。
悪魔の翼が生えている方の手で触ると、相手の魔力と生命力を際限なく吸い付くし……天使の翼が生えている方で触れると自身の魔力と生命力を相手に許容量を超えても関係なく強引に送る。
前者の方は吸い尽くされた場合体が砂のように崩れてしまい……、後者になると体が風船のように膨らみ内側から破裂してしまう。
以前は加減が出来たらしいけど……、長い歴史の中でこの世界に迷い込んだ異世界の住人達の生命力を吸収して行く内に入力と出力の調整が出来なくなってしまったらしい。
そういう意味でも、ドラゴンにかぶりついて顔を血で染め上げながら食事をしているルードがいくら強くなったとしても、能力を使われた時点で殺されてしまうだろう。
「勝てないのは分かったけど……美味しくない」
「そうか、何なら焼いて食うか?」
「焼いたら強いアンデッドに出来ないから駄目だよ、だってシャルネおねえちゃんを殺すために戦力が必要だし」
「ならこのまま我慢して食うしかねぇな……、俺が死んだ後におめぇが仇を取りてぇのなら止めはしねぇが、その時は後悔すんじゃねぇぞ?」
ケイスニルはそう言葉にすると後ろを振り向いて地面に落ちている小石を拾うと何処かへと向けて投げる。
すると……空中で停止してそのままゆっくりと落ちて行き……。
「ところでこの前からずっと俺達を監視してるみてぇだけどおめぇは誰だ?」
「……あら?あーしの存在に気づいちゃったの?」
「っち、【悪星】か」
「その呼ばれ方きらーい、ただでさえあーしの大事なアナイスちゃんをマスカレイドっていうクソガキに利用されて機嫌悪いのさぁ」
……何もない空間が油断がかと思うとそこから錆浅葱色の髪を持ち、母と同じアクアマリンの瞳を持ったあーし事、ブレーキ役だった父【斬鬼】キリサキ・ゼン、そして母【天魔】シャルネ・ヘイルーンの娘で、この世界の管理をお母さんの変わりにやっている誰よりも可愛くて無敵な【悪星】マリステラちゃんが姿を現す。
そして……二人に近づくと修道服のスカートを両手で持ってカーテシーをして『あーしね?二人に良い話を持って来たんだ……、あーしの願いを聞いてくれるならお母さんから守ってあげるよ?』ととてもかわいらしく清楚な笑顔を浮かべながら、二人に交渉を持ち掛けるのです。
それはまるで眠っているようで……しかし近づいて見るとその体の節々から流れ地面に溜まる血液は、命を無くした死体である事が分かる。
「……ほぉう、これは思ったよりも良い仕上がりになってきたじゃねぇか」
「うん……お父さん」
同じ紅い髪と茶色い瞳を持つ親子はドラゴンの亡骸の隣に座り楽しそうに笑う。
子供の方は背中に蝙蝠のような翼が生えており、臀部から生える蠍の尾からは先端から赤い血のような液体が付着して濡れていた。
「大分体の使い方に慣れたみたいだな?」
「うん、前の身体みたいに何処も痛くないし苦しくない……、それに思うように動くから楽しいよ!」
「はっはっ!そりゃあ良かったなぁルード!」
そう言ってルードと呼ばれた少年の頭を力強く撫でる。
嬉しそうな顔をして頬を染めると……
「もう……ケイスニル父さん、恥ずかしいよ」
「恥ずかしがるなって、おめぇは褒められて当然の事してんだからよ」
「う、うん……」
ケイスニルと呼ばれた父親に当たるであろう男が鋭い牙を見せながら笑う。
「んで?ルード、おめぇはこのドラゴンをどうすんだ?」
「この子も食べたらアンデッドにするよ、僕の友達になってもらうんだ」
「確かに食った方がいいな、俺達マンティコアは強い獲物を喰えば喰う程強くなるからな……俺はこれ以上は強くなれねぇが、おめぇなら何処までも強くなれる筈だ……そういやこの戦いが終わったらよ」
「終わったら?ケイスニル父さんどうしたの?」
「ん?あぁ、終わったらルード、おめぇは俺を殺して喰え」
父親になった男を殺して喰え、その言葉を聞いてドラゴンにかぶりつこうとしていたルードは驚きに眼を見開く。
「……え?おとう、さん?」
「あんまこういう言い方したくねぇけどよ……、飼い主に反旗を翻そうとしたのがバレちまったみてぇでな、多分俺はこの戦いが終わったら間違いなく殺される」
「……シャルネおねえちゃんに?」
「ん?おめぇ……飼い主の名前を言えるようになったんだな、あぁそうか俺の魔力と合わさって存在そのものが変わったからか、まぁそのなんだ?その通りだ」
「じゃあ僕がケイスニル父さんが殺される前に、シャルネおねえちゃんを殺して友達にするね?」
ルードのその瞳は冗談を言っているようには見えず強い意思を感じさせる。
その強さは今はまだ息子よりも遥かに強いケイスニルが思わず数歩後ずさる程で……
「……気持ちは嬉しいがやめておけ、あれは俺達に同行できるようなもんじゃねぇ、俺がまだわけぇ時にこの国でやりあった事があんだけどな?」
「もしかして負けたの?」
「あぁ、たった三人にボロボロにやられちまったよ……しかも俺以外全員皆殺しだ」
「でも今はシャルネおねえちゃんは一人だよ?」
「一人なのが問題なんだよ、飼い主を止めれる奴がもうどこにもいねぇんだ……、当時は隣にゼンっていう将来旦那になる事になるやべぇ剣士がいたんだが、暴走しそうになると力尽くでも止めてたからな」
ブレーキ役のいない限界に至りそこから更に超越するに至った者。
そんな化け物と戦う事になったら本当の実力を隠していたSランク冒険者と同等の実力を持つケイスニルであろうとどうする事も出来ないだろう。
それ程までにSランク冒険者【天魔】シャルネ・ヘイルーンの能力は異常なのだ……、背中から天使と悪魔の翼が生えた時にだけ使える【暴食と施し】と言われる【天魔】と呼ばれるたった一人の種族のみが使える事が出来る力。
悪魔の翼が生えている方の手で触ると、相手の魔力と生命力を際限なく吸い付くし……天使の翼が生えている方で触れると自身の魔力と生命力を相手に許容量を超えても関係なく強引に送る。
前者の方は吸い尽くされた場合体が砂のように崩れてしまい……、後者になると体が風船のように膨らみ内側から破裂してしまう。
以前は加減が出来たらしいけど……、長い歴史の中でこの世界に迷い込んだ異世界の住人達の生命力を吸収して行く内に入力と出力の調整が出来なくなってしまったらしい。
そういう意味でも、ドラゴンにかぶりついて顔を血で染め上げながら食事をしているルードがいくら強くなったとしても、能力を使われた時点で殺されてしまうだろう。
「勝てないのは分かったけど……美味しくない」
「そうか、何なら焼いて食うか?」
「焼いたら強いアンデッドに出来ないから駄目だよ、だってシャルネおねえちゃんを殺すために戦力が必要だし」
「ならこのまま我慢して食うしかねぇな……、俺が死んだ後におめぇが仇を取りてぇのなら止めはしねぇが、その時は後悔すんじゃねぇぞ?」
ケイスニルはそう言葉にすると後ろを振り向いて地面に落ちている小石を拾うと何処かへと向けて投げる。
すると……空中で停止してそのままゆっくりと落ちて行き……。
「ところでこの前からずっと俺達を監視してるみてぇだけどおめぇは誰だ?」
「……あら?あーしの存在に気づいちゃったの?」
「っち、【悪星】か」
「その呼ばれ方きらーい、ただでさえあーしの大事なアナイスちゃんをマスカレイドっていうクソガキに利用されて機嫌悪いのさぁ」
……何もない空間が油断がかと思うとそこから錆浅葱色の髪を持ち、母と同じアクアマリンの瞳を持ったあーし事、ブレーキ役だった父【斬鬼】キリサキ・ゼン、そして母【天魔】シャルネ・ヘイルーンの娘で、この世界の管理をお母さんの変わりにやっている誰よりも可愛くて無敵な【悪星】マリステラちゃんが姿を現す。
そして……二人に近づくと修道服のスカートを両手で持ってカーテシーをして『あーしね?二人に良い話を持って来たんだ……、あーしの願いを聞いてくれるならお母さんから守ってあげるよ?』ととてもかわいらしく清楚な笑顔を浮かべながら、二人に交渉を持ち掛けるのです。
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