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雨に濡れた女③
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コレットは、くるりと踵を返すと雨の中駆けだした。
バシャバシャと足を進めるごとに水溜まりとなった地面が雨を飛ばしていく。
「待てったら!」
ディッドはコレットを追いかけ肩を掴むと、体を反転させてコレットを抱きしめた。
通りを傘をさして歩く者がまるで歌劇の一場面を見たかのように立ち止まり注視する。
「俺にはコレットだけなんだよ。解るだろう」
「解りません」
「機嫌直せって。そうだ。飯でもどうだ?あぁワンピースも買ってやろう。濡れてしまって気持ち悪いだろう」
「気持ち悪いのは貴方です。離してっ!」
キスをするつもりなのだろうか。
迫って来る顔にバチンとコレットの手はディッドの頬を打った。
「痛ってぇ…ぶつことはないだろう!」
「なら…こうしてやるわ!」
コレットはしゃがみ込み、履いていたつま先がもう開いてしまった木の靴を脱ぐとディッドに向かって投げつけた。
「汚らしい手で触れないで!顔も見たくないし声も聞きたくないわ」
「コレット。だから言ってるだろう?遊びなんだ。本気じゃない。俺は何時だってコレットだけだと知っているじゃないか。どうしてこんな酷い事をするんだ」
「酷い事をしたのはどっちなの?」
「判った。もうしないから。今日は家に帰るよ。な?だから機嫌直せって」
「勝手に帰ればいいわ。私はもうあの家には帰らない」
「バカな事を言うなよ。帰らないならどこに帰ると言うんだ」
「その辺の草むらを住処にした方がずっとマシ!」
「いい加減にしろッ!」
今度はディッドの手がコレットの頬を打った。ディッドは騎士。コレットはその反動で馬車道に転んでしまった。
ヒヒィィン!!!
御者に手綱を突然引かれた馬の嘶きが雨の音をかき消した。
「コレットォ!!」
ディッドの悲鳴に近い声が聞こえた時、コレットの目に映ったのは馬の蹄だった。
同時に雷がバリバリっと空気を引き裂くような音をさせ乍ら眩い閃光を走らせた。
バシャバシャと足を進めるごとに水溜まりとなった地面が雨を飛ばしていく。
「待てったら!」
ディッドはコレットを追いかけ肩を掴むと、体を反転させてコレットを抱きしめた。
通りを傘をさして歩く者がまるで歌劇の一場面を見たかのように立ち止まり注視する。
「俺にはコレットだけなんだよ。解るだろう」
「解りません」
「機嫌直せって。そうだ。飯でもどうだ?あぁワンピースも買ってやろう。濡れてしまって気持ち悪いだろう」
「気持ち悪いのは貴方です。離してっ!」
キスをするつもりなのだろうか。
迫って来る顔にバチンとコレットの手はディッドの頬を打った。
「痛ってぇ…ぶつことはないだろう!」
「なら…こうしてやるわ!」
コレットはしゃがみ込み、履いていたつま先がもう開いてしまった木の靴を脱ぐとディッドに向かって投げつけた。
「汚らしい手で触れないで!顔も見たくないし声も聞きたくないわ」
「コレット。だから言ってるだろう?遊びなんだ。本気じゃない。俺は何時だってコレットだけだと知っているじゃないか。どうしてこんな酷い事をするんだ」
「酷い事をしたのはどっちなの?」
「判った。もうしないから。今日は家に帰るよ。な?だから機嫌直せって」
「勝手に帰ればいいわ。私はもうあの家には帰らない」
「バカな事を言うなよ。帰らないならどこに帰ると言うんだ」
「その辺の草むらを住処にした方がずっとマシ!」
「いい加減にしろッ!」
今度はディッドの手がコレットの頬を打った。ディッドは騎士。コレットはその反動で馬車道に転んでしまった。
ヒヒィィン!!!
御者に手綱を突然引かれた馬の嘶きが雨の音をかき消した。
「コレットォ!!」
ディッドの悲鳴に近い声が聞こえた時、コレットの目に映ったのは馬の蹄だった。
同時に雷がバリバリっと空気を引き裂くような音をさせ乍ら眩い閃光を走らせた。
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