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第37話 情報共有
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公爵家は広い。屋敷も広いが敷地も当然広い。
門番はグラシアナの乗った馬が駆けてきた時に、その歩みを止めぬよう見張台から駆けてくる馬を確認すると正門を開き、通過すると門を閉じた。
その後は庭の木の枝に渡したロープの端を引き、ロープに取り付けた木の板がカランカランと音を立てて屋敷の中にいる者達に緊急を知らせる。
玄関に駆け込んできたグラシアナを迎えたのは老執事を先頭に数人。
ロペ公爵家にグラシアナと御者が到着した時、御者は気絶し体は馬の尻に頭が乗っていた。
鐙にしっかりと足を引っかけていた御者。御者の腕がグラシアナを掴む手に力が入らず離れても馬からは落ちないよう鐙に引っかけた足の隙間にグラシアナは自分の足を捩じ込んでいた。
従者達が鐙からグラシアナと御者の足を抜き、御者を3人かかりで降ろす。
老執事がまだ騎乗するグラシアナに問いかけた。
「お嬢様!!旦那様は?!パンディトン氏は?!」
門道の先を見ても後から馬が追ってくる様子はない。
必死で御者を落とさないように気遣いながら馬を駆けさせてきたグラシアナもすっかり息が上がり、老執事の問いかけに直ぐに答える事が出来ない。
声よりも息を吐かないと苦しいのだ。
馬を降りようにも手ががっちりと手綱を掴んでいて指を広げることも出来なかった。
★~★
気絶してしまった御者はまだ目覚めない。
グラシアナは老執事たちに何か起こったのかを語った。
「左様で御座いましたか。では旦那様とパンディトン氏はまだ城に?」
「はい。お兄様は帝国の領事館に行くようにと」
「では、そうなさってください」
「だけど!お兄様もクマさんも…放っておいて私だけ安全な所に逃げることは出来ません」
飛んで火にいる夏の虫だと解っていても、議会が欲しているのが自分ならエリアスとパンディトンと引き換えに城にもう一度出向いても構わないとグラシアナは考えたが、使用人達は「旦那様の言葉に従ってくれ」と言う。
思いだすだけで身震いをしてしまう。自分の身が可愛い、逃げられて良かったとは全く思わない。
銃弾はいとも簡単に人を殺める事が出来ると報告書で読んだこともある。
馬車に乗せる時に聞いた事もない鈍い音はきっとパンディトンが銃弾を受けた音。
そして長槍を持った門番たちに囲まれていた兄を思うとクリスティアンの妃になる事を拒否し、それまでの立場でいることも嫌になった自分本位の考えが何と愚かだったのかと自分が嫌になってしまった。
「ご自分を責めてはいけません。話を聞く限り旦那様の想定はほぼ当たっています。旦那様はそれはそれは用意周到に足元を固める方です。大旦那様の血を引くとは思えないほどに」
――私もそう思うわ。ついでにあの母親もだけど――
「低位貴族の半分以上は旦那様が纏めているのですよ。だからご一緒したいのに朝早くから自ら出向き、説得をされていたのです。こんな時に他国の方が理解があるのは情けなくなる。そうおっしゃっておりましたよ」
「半分以上?貴族を纏めて・・・まさかクーデターを?」
「いいえ。そんな事をしたら内乱が勃発するでしょう。王家から離脱をした元王家。こちらは機会を狙っているものもいるのです。皮肉なことに議会が実権を握っているから手出しが出来ないだけですから」
老執事が言うようにこの国は歪。
王家に望まれているのは長く続く直系をと絶やさない事だけで政治に関しては完全に蚊帳の外。国を動かしているのは貴族の一部で構成をさせている議会。
そして長く続く王家のある国を国民も自慢に思っているので大増税など面倒なことが身に降りかからないなら怒りもしない。
議会は本当に国民の顔色を見ながらどこまで税を絞り取れるかを考えて絶妙なバランスを保っている。
ただ、王家にもこれはおかしいと気が付くものが生まれてくる。グラシアナはたとえそれが我が子であっても切り捨てねばならない。議会にとっての異端分子を王家の中から監視し議会に報告をするためだけに育てられてきたのが離れてみた今ならよく判る。
「本来は高位貴族が監視をするのです。愚かであれと監視をするのではなく国のトップ、顔であるか、それに足るか。そんな監視です。旦那様の構想をお聞きになった事は御座いますか?」
「ないわ。だってお兄様はいつも・・・」
行き過ぎた妹愛。それもどんなに幼かろうと守れなかった自分への戒めから来ている思いなのでグラシアナも苦笑いをするしかなかった。
★~★
次は12時10分。その次は14時10分デーッス(=^・^=)v
門番はグラシアナの乗った馬が駆けてきた時に、その歩みを止めぬよう見張台から駆けてくる馬を確認すると正門を開き、通過すると門を閉じた。
その後は庭の木の枝に渡したロープの端を引き、ロープに取り付けた木の板がカランカランと音を立てて屋敷の中にいる者達に緊急を知らせる。
玄関に駆け込んできたグラシアナを迎えたのは老執事を先頭に数人。
ロペ公爵家にグラシアナと御者が到着した時、御者は気絶し体は馬の尻に頭が乗っていた。
鐙にしっかりと足を引っかけていた御者。御者の腕がグラシアナを掴む手に力が入らず離れても馬からは落ちないよう鐙に引っかけた足の隙間にグラシアナは自分の足を捩じ込んでいた。
従者達が鐙からグラシアナと御者の足を抜き、御者を3人かかりで降ろす。
老執事がまだ騎乗するグラシアナに問いかけた。
「お嬢様!!旦那様は?!パンディトン氏は?!」
門道の先を見ても後から馬が追ってくる様子はない。
必死で御者を落とさないように気遣いながら馬を駆けさせてきたグラシアナもすっかり息が上がり、老執事の問いかけに直ぐに答える事が出来ない。
声よりも息を吐かないと苦しいのだ。
馬を降りようにも手ががっちりと手綱を掴んでいて指を広げることも出来なかった。
★~★
気絶してしまった御者はまだ目覚めない。
グラシアナは老執事たちに何か起こったのかを語った。
「左様で御座いましたか。では旦那様とパンディトン氏はまだ城に?」
「はい。お兄様は帝国の領事館に行くようにと」
「では、そうなさってください」
「だけど!お兄様もクマさんも…放っておいて私だけ安全な所に逃げることは出来ません」
飛んで火にいる夏の虫だと解っていても、議会が欲しているのが自分ならエリアスとパンディトンと引き換えに城にもう一度出向いても構わないとグラシアナは考えたが、使用人達は「旦那様の言葉に従ってくれ」と言う。
思いだすだけで身震いをしてしまう。自分の身が可愛い、逃げられて良かったとは全く思わない。
銃弾はいとも簡単に人を殺める事が出来ると報告書で読んだこともある。
馬車に乗せる時に聞いた事もない鈍い音はきっとパンディトンが銃弾を受けた音。
そして長槍を持った門番たちに囲まれていた兄を思うとクリスティアンの妃になる事を拒否し、それまでの立場でいることも嫌になった自分本位の考えが何と愚かだったのかと自分が嫌になってしまった。
「ご自分を責めてはいけません。話を聞く限り旦那様の想定はほぼ当たっています。旦那様はそれはそれは用意周到に足元を固める方です。大旦那様の血を引くとは思えないほどに」
――私もそう思うわ。ついでにあの母親もだけど――
「低位貴族の半分以上は旦那様が纏めているのですよ。だからご一緒したいのに朝早くから自ら出向き、説得をされていたのです。こんな時に他国の方が理解があるのは情けなくなる。そうおっしゃっておりましたよ」
「半分以上?貴族を纏めて・・・まさかクーデターを?」
「いいえ。そんな事をしたら内乱が勃発するでしょう。王家から離脱をした元王家。こちらは機会を狙っているものもいるのです。皮肉なことに議会が実権を握っているから手出しが出来ないだけですから」
老執事が言うようにこの国は歪。
王家に望まれているのは長く続く直系をと絶やさない事だけで政治に関しては完全に蚊帳の外。国を動かしているのは貴族の一部で構成をさせている議会。
そして長く続く王家のある国を国民も自慢に思っているので大増税など面倒なことが身に降りかからないなら怒りもしない。
議会は本当に国民の顔色を見ながらどこまで税を絞り取れるかを考えて絶妙なバランスを保っている。
ただ、王家にもこれはおかしいと気が付くものが生まれてくる。グラシアナはたとえそれが我が子であっても切り捨てねばならない。議会にとっての異端分子を王家の中から監視し議会に報告をするためだけに育てられてきたのが離れてみた今ならよく判る。
「本来は高位貴族が監視をするのです。愚かであれと監視をするのではなく国のトップ、顔であるか、それに足るか。そんな監視です。旦那様の構想をお聞きになった事は御座いますか?」
「ないわ。だってお兄様はいつも・・・」
行き過ぎた妹愛。それもどんなに幼かろうと守れなかった自分への戒めから来ている思いなのでグラシアナも苦笑いをするしかなかった。
★~★
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