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第18話 取り繕わなくていい
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「アーッハッハ。可笑しい。リュー。貴方全然相手にされてないじゃない」
「黙れ!黙れ!」
リオーナさんは目尻の涙を指で拭っているので本気で笑っているのだろう。
ブレン伯爵は立ち上がり、リオーナさんに覆いかぶさるように口を手で塞ごうとしているけれどその姿が私には惨めで滑稽に見えた。
「後のことは2人で話し合ってください。結果を教えて頂く必要もないです」
部屋を出て行こうとした私をブレン伯爵が呼び止めた。
「待ってくれ!ビビアン。私の何が悪い?何が足りない?教えてくれ。君の望むように全部直す。気持ちの年齢が追い付くまで私は待つ。だから!」
「ブレン伯爵様。何も直さなくていいです」
ふっと脳裏をよぎったのはジョシュアさんだった。
身なりに気遣いはゼロ。目の前にいるブレン伯爵の方が見た目は気遣っているのは解る。
でも、違う。
(見えている部分じゃないのよね。見えない、気付かせない所が全然違うわ)
「ブレン伯爵。私、夫と寝台はモフモフしてるほうがいいなって思うんです」
「えぇっと、それは…どういう意味だ?」
キョトンとした表情になっているのを見るとこの人って自分本位なんだなって改めて思える。
「どうしてほしいのかとブレン伯爵様は私に問いますけどそれを言ったところでどうなります?好みにあわせてほしいって傲慢だと思いませんか?その人の持ち味とか素質とか無視して自分の好みになれとか…好みが変わったらどうするんです?繕った外面なんて意味がないです。男性って髭が生えますよね。手入れをしていれば清潔感は感じます。でも…手入れをしたって中身が手入れされてないなら気持ち悪く不潔に思えるだけですし、手入れをしていなくてもその人のポリシーなんかが確立していればカッコよく見えるんです」
ブレン伯爵は髭を例えたからか、顎に手を当てて不思議そうな顔をする。
「私は…外面を取り繕っていると?」
「そうですね。3年も夫婦でいて私の事、何も知らないですよね。それがブレン伯爵様が私をどう扱っていたか、思っていたかの証拠です」
ここまで言ってもまだ判らないかなと呆れてしまうけれど、私の言葉で笑いが止まったリオーナさんがソファから体を起こした。
「バッカばかしい。拗らせた男の気持ち悪さ。私も感じたわ。ハァー。アハハっ。リュー。良いわ。別れましょう。手切れ金代わりに面白い話が聞けたし、なんだかんだで付き合ってる時は良い思いをしたから何にも要らないわ。取り繕っていたら私みたいな馬鹿な女が真実の愛って言葉にコロっと騙されてくれるわ。頑張って」
それだけを言うとリオーナさんは私に向かってソファテーブルを回り込んでくると何故かギュッと抱きしめてきた。
言葉はなかったけれど、背中をポンポンと叩かれそのまま去って行ってしまった。
「良いんですか?行っちゃいましたけど?」
私にとっては他人事なので、ブレン伯爵に教えてあげたけれど目を潤ませて私を見上げて来るだけ。
(ごめんなさい。それも気持ち悪さしか感じないわ)
話をする事もないし、部屋に引き上げたのだけどその夜から異変が起きた。
「何?この花…」
「伯爵様が奥様にって」
今更感は強いし、急いで庭の花を摘んで花束にしたのか傷んだ花びらの花もあるし、バラの花は棘を取り切れていない。
こうやってその場その場で取り繕おうとするのが嫌われるんだって判らないのかなぁ。
翌朝もいつもなら寝ている時間なのに部屋の前で正装をしたブレン伯爵が「朝食、誘いに来た」と待ち構えていた。
(ごめん。ホラーでしかないわ)
無視をしてもいいけれど、私の分も用意をしたと言うので食材は無駄にしたくないしブレン伯爵に合わせて早くから作業に入った使用人の労力も無碍には出来ず付き合うけれど…。
「ビビアン。今日は買い物に行かないか。好きな物を何でも買ってやるよ」
「事業はどうだ?困っているだろう?手を貸すよ」
「昨日も遅くまで出かけていただろう?心配だ。女性は家にいて家の事を切り盛りすれば十分だよ」
逐一私の気持ちを逆撫でしてくれる言葉を掛けてくれる。
「ブレン伯爵様。物を買ってもらわなくてもいいですし、今事業も特に困っていません」
気を使わなくていいと言っているのにどうも解っていない。
でも、それも今日でお終い。
最後の朝食になる朝、扉を開けた先にブレン伯爵は居なかった。
「黙れ!黙れ!」
リオーナさんは目尻の涙を指で拭っているので本気で笑っているのだろう。
ブレン伯爵は立ち上がり、リオーナさんに覆いかぶさるように口を手で塞ごうとしているけれどその姿が私には惨めで滑稽に見えた。
「後のことは2人で話し合ってください。結果を教えて頂く必要もないです」
部屋を出て行こうとした私をブレン伯爵が呼び止めた。
「待ってくれ!ビビアン。私の何が悪い?何が足りない?教えてくれ。君の望むように全部直す。気持ちの年齢が追い付くまで私は待つ。だから!」
「ブレン伯爵様。何も直さなくていいです」
ふっと脳裏をよぎったのはジョシュアさんだった。
身なりに気遣いはゼロ。目の前にいるブレン伯爵の方が見た目は気遣っているのは解る。
でも、違う。
(見えている部分じゃないのよね。見えない、気付かせない所が全然違うわ)
「ブレン伯爵。私、夫と寝台はモフモフしてるほうがいいなって思うんです」
「えぇっと、それは…どういう意味だ?」
キョトンとした表情になっているのを見るとこの人って自分本位なんだなって改めて思える。
「どうしてほしいのかとブレン伯爵様は私に問いますけどそれを言ったところでどうなります?好みにあわせてほしいって傲慢だと思いませんか?その人の持ち味とか素質とか無視して自分の好みになれとか…好みが変わったらどうするんです?繕った外面なんて意味がないです。男性って髭が生えますよね。手入れをしていれば清潔感は感じます。でも…手入れをしたって中身が手入れされてないなら気持ち悪く不潔に思えるだけですし、手入れをしていなくてもその人のポリシーなんかが確立していればカッコよく見えるんです」
ブレン伯爵は髭を例えたからか、顎に手を当てて不思議そうな顔をする。
「私は…外面を取り繕っていると?」
「そうですね。3年も夫婦でいて私の事、何も知らないですよね。それがブレン伯爵様が私をどう扱っていたか、思っていたかの証拠です」
ここまで言ってもまだ判らないかなと呆れてしまうけれど、私の言葉で笑いが止まったリオーナさんがソファから体を起こした。
「バッカばかしい。拗らせた男の気持ち悪さ。私も感じたわ。ハァー。アハハっ。リュー。良いわ。別れましょう。手切れ金代わりに面白い話が聞けたし、なんだかんだで付き合ってる時は良い思いをしたから何にも要らないわ。取り繕っていたら私みたいな馬鹿な女が真実の愛って言葉にコロっと騙されてくれるわ。頑張って」
それだけを言うとリオーナさんは私に向かってソファテーブルを回り込んでくると何故かギュッと抱きしめてきた。
言葉はなかったけれど、背中をポンポンと叩かれそのまま去って行ってしまった。
「良いんですか?行っちゃいましたけど?」
私にとっては他人事なので、ブレン伯爵に教えてあげたけれど目を潤ませて私を見上げて来るだけ。
(ごめんなさい。それも気持ち悪さしか感じないわ)
話をする事もないし、部屋に引き上げたのだけどその夜から異変が起きた。
「何?この花…」
「伯爵様が奥様にって」
今更感は強いし、急いで庭の花を摘んで花束にしたのか傷んだ花びらの花もあるし、バラの花は棘を取り切れていない。
こうやってその場その場で取り繕おうとするのが嫌われるんだって判らないのかなぁ。
翌朝もいつもなら寝ている時間なのに部屋の前で正装をしたブレン伯爵が「朝食、誘いに来た」と待ち構えていた。
(ごめん。ホラーでしかないわ)
無視をしてもいいけれど、私の分も用意をしたと言うので食材は無駄にしたくないしブレン伯爵に合わせて早くから作業に入った使用人の労力も無碍には出来ず付き合うけれど…。
「ビビアン。今日は買い物に行かないか。好きな物を何でも買ってやるよ」
「事業はどうだ?困っているだろう?手を貸すよ」
「昨日も遅くまで出かけていただろう?心配だ。女性は家にいて家の事を切り盛りすれば十分だよ」
逐一私の気持ちを逆撫でしてくれる言葉を掛けてくれる。
「ブレン伯爵様。物を買ってもらわなくてもいいですし、今事業も特に困っていません」
気を使わなくていいと言っているのにどうも解っていない。
でも、それも今日でお終い。
最後の朝食になる朝、扉を開けた先にブレン伯爵は居なかった。
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