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♡マウントは気持ちいい
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バキッ!!ドスン!
「きゃぁっ!」
「失敗だったか…大丈夫か?ケガはなかったか?」
「見ているだけで怪我をする事は御座いません」
「なら良かった。プリエラがケガでもしたら狂うところだった」
さらりと怖い事を仰るマクシム様でございますが、時期的に夜も気温が高くなる日がこれからは多くなるとの事で唯一の寝台を改造して、2段にしようと言う事になったのです。
元々の寝台を囲うような感じで、背の高い木の枝で大きなものを柱に数本。
薪割の薪をまた長めのものを板にしたのですが、マクシム様がよじ登り、片足をかけた瞬間支柱にしていた木の枝が折れてしまい壊れてしまったのです。
「おとなりさんに荷馬車を借りて広めの寝台を買うか。ダブルサイズなんてどうだ?広くて転がれるぞ?あぁそうするとシーツも新しいのを買わないといけないな」
――どこに置くのです?それ以前に扉を壊しても入りませんよ?――
「マクシム様、ダブルサイズの寝台が仮にここに設置できたとしたら竈の火で燃えてしまいます。テーブルは何処に置くのです?」
「テーブルか…寝台の上?」
「どこで眠るのです。よろしいですか?このお家はマクシム様が部屋の端から端に歩いても5歩でございます。居候のわたくしが言うのもなんですが、この寝台ですら大きいのですよ」
「そうか…ものが多いからな」
――竈、テーブル、シングルサイズの半分の寝台の3つしか御座いませんが?――
「ま、いいか。プリエラが毎晩マウント取ってる感じがいいだろ」
決して良くは御座いませんが、大きい寝台は物理的に燃えてしまいます。街で今のサイズの寝台の2段になっているものを買う事に決定を致しました。
そんなやり取りが御座いましたが、マクシム様は労働と交換をした【お金】で、わたくしの服を買ってくださるそうなのです。服を売っているお店の近くには品物とお金を交換してくださるお店もあるようです。
わたくしは、髪飾りはもうありませんので残っているブローチを交換して頂けたら、そのお金でマクシム様の髪の毛と御髭をなんとかしてくださる方を探したいと考えております。
「マクシム様、今度行く街にはお医者様は居られるのでしょうか」
「医者?どこか具合が悪いのか?」
「いえ、わたくしでは御座いません。その…マクシム様の…」
「俺?俺は病気なんかしていないぞ?虫歯もない。何処も悪くないぞ」
「そうではなく、御髭を剃って頂いて…お時間があれば髪も少し…」
「髭…まぁそうだよなぁ…。(ぼりぼり)」
遠くの空を見ても宜しいでしょうか。いえ、判るのです。わたくしは雨が降らない限り木の箱で湯あみをさせて頂いていて、マクシム様はわたくしの髪も洗ってくださいます。
叔父様が持ってきてくださったと言う洗髪剤を使うのはわたくしのみ。
なので、お医者様にマクシム様の御髭を剃って頂くのです。お医者様は瀉血などもしてくださいますが、抜歯もしてくださいますし、御髭も剃ってくださるのです。
「マクシム様、髪から汚れが落ちておりますよ」
「あ、掃除しとく。で?髭ないほうが良い?」
「ない方が…清潔かなとは思います。スープも御髭につく事が御座いますでしょう?」
「そうか。判った」
少し、シュンとして外に出ていかれました。もしかして御髭はステイタスだったのかしら。だとすれば強制する事では御座いません。アルメイテ国では髭を剃る事は禁忌ではなかったと思いますが、流行というものも御座います。挿絵で見た獅子の雄々しい鬣のような御髭が流行で、マクシム様がそうしているのであれば!!
「マクシム様っ!!」
わたくしは、外に出たマクシム様を追いました。しかし扉を開けた瞬間!
「キャァァ!!」
な、なんて事でしょう!直ぐにやめさせなくては!
わたくし、マクシム様の矜持を踏みにじってしまったのです!
「お願いで御座いますっ!お止めくださいまし!!」
「うわっ。危ないだろう。これは刃物なんだぞ」
「見ればわかりますわ。薪を割る斧で御座います。割る所を何度も見ましたもの」
「急にどうしたんだ」
「どうしたでは御座いません。斧の刃を首に当てて何をなさるおつもりですの!」
「ひげ剃り」
「え・・・」
みれば、伸びていた髪の毛も削いだ?のでしょうか。スッキリされておられます。
マクシム様は、髪を切り、いえ削ぎ、御髭を剃ろうとしているのですが、全てを斧でなんて!危険すぎます。
「お止めくださいませ。肌を切ったらどうしますの」
「大丈夫。何度もやってるから。そこで見てな」
あぅあぅと言葉も出ないわたくしの目の前で、それは器用に。それは上手に斧の刃に肌をあてて御髭を剃っていかれます。あっという間に顎の下がスッキリすると、頬、鼻の下、顎のラインにそって耳たぶの辺りまで。
木の箱の中、わたくしが使用する前のまだ熱い湯で木灰を手に付けると、顔、首回り、そして髪の毛を洗っておられます。かなり熱いと思うのです。
「俺、結構手のひらの皮は厚いんだ。木の皮を毟ったりしてたらこうなった」
――いえ、手は湯をすくいますが、かけるのは頭皮ですわよ?――
木の灰を洗い流すと、あら‥‥
――御髭のあった部分だけが真っ白だわ――
意外と色白さんだった事が判りました…いえいえ。違います。違いますわ。
熱湯に近いので首も真っ赤になっているではありませんか。
「申し訳ございません。わたくしが剃れなどと言ったばかりに」
「また生えてくるから気にすんな」
それはそうですけど、生えてる途中が汚い…ゴホゴホ‥見苦しい‥ゲフンゲフン…ちくちくしますのよ。寝所で上になるわたくしの身にもなってくださいませ。
ですが、ふと首を傾げます。
髪も短くなり、御髭のなくなったマクシム様のお顔をどこかで見た事があるような気がするのです。御髭がある時は気が付きませんでしたが、そんな気がするのです。
「どうした?首を傾げて。剃る前と剃った後で違う人になったとか言うなよ」
「いえ、そうではなくて…わたくし、どこかでマクシム様とお会いしましたでしょうか」
「うーん。1カ月くらい前じゃないか?」
――それ、ここにわたくしが来た頃です――
「久しぶりに涼しくなったな。これからは毎日剃るようにするか」
――毎日斧の刃を首に?こちらの心臓に悪いですわ――
「さて、スッキリしたしスーモモでも食うか?皮をむいてやるぞ」
見た目は暑苦しかったのですが、スッキリしたと言ってもこれは看過できません。
例えそれが、マナーだとしても終着点に問題が御座います。
マクシム様に少々申し上げたい事が御座います。
斧で髭を剃るのもどうかと思いますが、それよりも言っておかねばなりません。
「マクシム様。これは禁止です」
「どうして」
「髪の毛を火にくべるのはお止めください。部屋中が凄い匂いですわ」
そう、斧で削いだと思われる髪の毛、剃り落したあとの御髭を「箒」で集めたのは良いのです。ただそれを竈の中に放り込むのは許せません。
木灰はシーツを洗う際にも使用するのです。ちょっと嫌ではありませんか。
「仕方ないな。プリエラが言うならそうするか」
「是非そうしてくださいませ」
「でも、よく燃え――」
「ダメです」
「はい…」
どうしましょう。少し気分がいいですわ。
マクシム様の言った通りですわ。これがマウントですのね。
「きゃぁっ!」
「失敗だったか…大丈夫か?ケガはなかったか?」
「見ているだけで怪我をする事は御座いません」
「なら良かった。プリエラがケガでもしたら狂うところだった」
さらりと怖い事を仰るマクシム様でございますが、時期的に夜も気温が高くなる日がこれからは多くなるとの事で唯一の寝台を改造して、2段にしようと言う事になったのです。
元々の寝台を囲うような感じで、背の高い木の枝で大きなものを柱に数本。
薪割の薪をまた長めのものを板にしたのですが、マクシム様がよじ登り、片足をかけた瞬間支柱にしていた木の枝が折れてしまい壊れてしまったのです。
「おとなりさんに荷馬車を借りて広めの寝台を買うか。ダブルサイズなんてどうだ?広くて転がれるぞ?あぁそうするとシーツも新しいのを買わないといけないな」
――どこに置くのです?それ以前に扉を壊しても入りませんよ?――
「マクシム様、ダブルサイズの寝台が仮にここに設置できたとしたら竈の火で燃えてしまいます。テーブルは何処に置くのです?」
「テーブルか…寝台の上?」
「どこで眠るのです。よろしいですか?このお家はマクシム様が部屋の端から端に歩いても5歩でございます。居候のわたくしが言うのもなんですが、この寝台ですら大きいのですよ」
「そうか…ものが多いからな」
――竈、テーブル、シングルサイズの半分の寝台の3つしか御座いませんが?――
「ま、いいか。プリエラが毎晩マウント取ってる感じがいいだろ」
決して良くは御座いませんが、大きい寝台は物理的に燃えてしまいます。街で今のサイズの寝台の2段になっているものを買う事に決定を致しました。
そんなやり取りが御座いましたが、マクシム様は労働と交換をした【お金】で、わたくしの服を買ってくださるそうなのです。服を売っているお店の近くには品物とお金を交換してくださるお店もあるようです。
わたくしは、髪飾りはもうありませんので残っているブローチを交換して頂けたら、そのお金でマクシム様の髪の毛と御髭をなんとかしてくださる方を探したいと考えております。
「マクシム様、今度行く街にはお医者様は居られるのでしょうか」
「医者?どこか具合が悪いのか?」
「いえ、わたくしでは御座いません。その…マクシム様の…」
「俺?俺は病気なんかしていないぞ?虫歯もない。何処も悪くないぞ」
「そうではなく、御髭を剃って頂いて…お時間があれば髪も少し…」
「髭…まぁそうだよなぁ…。(ぼりぼり)」
遠くの空を見ても宜しいでしょうか。いえ、判るのです。わたくしは雨が降らない限り木の箱で湯あみをさせて頂いていて、マクシム様はわたくしの髪も洗ってくださいます。
叔父様が持ってきてくださったと言う洗髪剤を使うのはわたくしのみ。
なので、お医者様にマクシム様の御髭を剃って頂くのです。お医者様は瀉血などもしてくださいますが、抜歯もしてくださいますし、御髭も剃ってくださるのです。
「マクシム様、髪から汚れが落ちておりますよ」
「あ、掃除しとく。で?髭ないほうが良い?」
「ない方が…清潔かなとは思います。スープも御髭につく事が御座いますでしょう?」
「そうか。判った」
少し、シュンとして外に出ていかれました。もしかして御髭はステイタスだったのかしら。だとすれば強制する事では御座いません。アルメイテ国では髭を剃る事は禁忌ではなかったと思いますが、流行というものも御座います。挿絵で見た獅子の雄々しい鬣のような御髭が流行で、マクシム様がそうしているのであれば!!
「マクシム様っ!!」
わたくしは、外に出たマクシム様を追いました。しかし扉を開けた瞬間!
「キャァァ!!」
な、なんて事でしょう!直ぐにやめさせなくては!
わたくし、マクシム様の矜持を踏みにじってしまったのです!
「お願いで御座いますっ!お止めくださいまし!!」
「うわっ。危ないだろう。これは刃物なんだぞ」
「見ればわかりますわ。薪を割る斧で御座います。割る所を何度も見ましたもの」
「急にどうしたんだ」
「どうしたでは御座いません。斧の刃を首に当てて何をなさるおつもりですの!」
「ひげ剃り」
「え・・・」
みれば、伸びていた髪の毛も削いだ?のでしょうか。スッキリされておられます。
マクシム様は、髪を切り、いえ削ぎ、御髭を剃ろうとしているのですが、全てを斧でなんて!危険すぎます。
「お止めくださいませ。肌を切ったらどうしますの」
「大丈夫。何度もやってるから。そこで見てな」
あぅあぅと言葉も出ないわたくしの目の前で、それは器用に。それは上手に斧の刃に肌をあてて御髭を剃っていかれます。あっという間に顎の下がスッキリすると、頬、鼻の下、顎のラインにそって耳たぶの辺りまで。
木の箱の中、わたくしが使用する前のまだ熱い湯で木灰を手に付けると、顔、首回り、そして髪の毛を洗っておられます。かなり熱いと思うのです。
「俺、結構手のひらの皮は厚いんだ。木の皮を毟ったりしてたらこうなった」
――いえ、手は湯をすくいますが、かけるのは頭皮ですわよ?――
木の灰を洗い流すと、あら‥‥
――御髭のあった部分だけが真っ白だわ――
意外と色白さんだった事が判りました…いえいえ。違います。違いますわ。
熱湯に近いので首も真っ赤になっているではありませんか。
「申し訳ございません。わたくしが剃れなどと言ったばかりに」
「また生えてくるから気にすんな」
それはそうですけど、生えてる途中が汚い…ゴホゴホ‥見苦しい‥ゲフンゲフン…ちくちくしますのよ。寝所で上になるわたくしの身にもなってくださいませ。
ですが、ふと首を傾げます。
髪も短くなり、御髭のなくなったマクシム様のお顔をどこかで見た事があるような気がするのです。御髭がある時は気が付きませんでしたが、そんな気がするのです。
「どうした?首を傾げて。剃る前と剃った後で違う人になったとか言うなよ」
「いえ、そうではなくて…わたくし、どこかでマクシム様とお会いしましたでしょうか」
「うーん。1カ月くらい前じゃないか?」
――それ、ここにわたくしが来た頃です――
「久しぶりに涼しくなったな。これからは毎日剃るようにするか」
――毎日斧の刃を首に?こちらの心臓に悪いですわ――
「さて、スッキリしたしスーモモでも食うか?皮をむいてやるぞ」
見た目は暑苦しかったのですが、スッキリしたと言ってもこれは看過できません。
例えそれが、マナーだとしても終着点に問題が御座います。
マクシム様に少々申し上げたい事が御座います。
斧で髭を剃るのもどうかと思いますが、それよりも言っておかねばなりません。
「マクシム様。これは禁止です」
「どうして」
「髪の毛を火にくべるのはお止めください。部屋中が凄い匂いですわ」
そう、斧で削いだと思われる髪の毛、剃り落したあとの御髭を「箒」で集めたのは良いのです。ただそれを竈の中に放り込むのは許せません。
木灰はシーツを洗う際にも使用するのです。ちょっと嫌ではありませんか。
「仕方ないな。プリエラが言うならそうするか」
「是非そうしてくださいませ」
「でも、よく燃え――」
「ダメです」
「はい…」
どうしましょう。少し気分がいいですわ。
マクシム様の言った通りですわ。これがマウントですのね。
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