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♡恥ずかしいこと
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「起きたか~?」
「ぁい…起きましたわ」
「じゃ、顔拭くぞ?熱かったらちゃんと言うんだぞ」
「はい」
わたくしの朝は、初日以外毎朝マクシム様に顔を温かい布で拭いて頂く事から始まります。その後で寝間着代わりにしているマクシム様の衣装入れにある衣類を脱がして頂いて、ワンピースを着せて頂くのです。
ワンピースが乾いていない時は、衣装入れからマクシム様のお召し物を貸して頂きます。ですが不思議なのです。マクシム様はギュっと目を閉じて着替えをさせてくれるのですが、目は開けた方がやりやすいと思うのです。
本日は【お隣さん】に荷馬車を貸して頂き、街に出かけております。
隣で馬の手綱を握ってくださっているマクシム様をはしたなくも横目でチラリと見ます。
わたくしは、感覚がおかしくなってしまったのでしょうか。
お出かけ用に服をお召しになられているのですが、いつもが非常に簡素な腰布のみの装いですので暑苦しく感じるのです。
「そんなに見ないでくれ。恥ずかしい」
「恥ずかしいのですか?ですが粗相はしておりませんよ?」
見られて恥ずかしいと仰るマクシム様が今一つ理解が出来ません。
恥ずかしいと言うのは、他人様の家名や続柄を間違う失態でありますとか、爵位が上位の方とのドレスのデザインが同じであったりだとか、場所に応じた装いではないとかの失態だと思うのです。
いつもの腰布を見慣れているからか違和感は感じますが、他人様と会う時はこの服装で正解だとわたくしは思うのです。マクシム様、恥ずかしがることは御座いませんよ?
「マクシム様は見られると恥ずかしいんですの?」
「恥ずかしいと言うか、照れるな。そう言えばプリエラも毎回困ってるよな?」
「何が?で御座いますの?」
「ほら…木の箱で一応下着?は着ているけど、その…透けて見えるからさ」
マクシム様は何を仰っているのでしょう。衣類を着て湯の中に入れば透けるのは当然です。
濃いお色でしたら、はっきりとは透けないでしょうけども、わたくしの下着は綿で白。透けない方がおかしいのです。透けて困っているのではなく濡れたままなので床や寝台が水浸しになるからです。
「そう言えば、マクシム様は下着を脱がせてくださる時、どうして目を閉じるのです?」
「えぇっ?普通閉じるだろ」
「そうなのですか?ですが着替えをする係だったメイドや湯あみの係だった侍女は目は閉じておりませんでしたよ」
「いや、それは女同士だから」
「あら?確かお兄様がいた時のお兄様の係のメイドや侍女も目は閉じておりませんでしたよ?」
思いだしてみても、お兄様は留学をされる前でしたので16、17歳の頃でしたから今のわたくしと年齢的には同じですわね。ですがメイドも侍女も目を閉じていては着替えも湯あみも出来ないと思うのです。
あら?どうしてそんな驚いた顔をされておられるのでしょう?
国が違えば、対応の仕方も変わると言う事なのでしょうか。
「まさかと思うけど、木の箱湯殿から出た後、俺が下着を脱がせるのって恥ずかしくないとか?」
不思議な事を仰います。自分で脱げないのにどうして、して頂いて恥ずかしがるのでしょう。恥ずかしいというのは、自分の失敗の事をいうのですよ。
「恥ずかしく御座いませんよ?いつもそうしていましたから」
「そうなんだ…じゃ、今度からは目を開けて…いやいやそれは俺の理性が試されるから無理だな」
「変なマクシム様ですわね」
「じゃぁ、俺が着せてって言ったらしてくれるのか?」
「致しませんよ」
「え…」
「だって、された事はあってもした事は御座いませんもの。女性の着替えは自分でしてはいけないと学びました」
「ちょっと待て。プリエラが恥ずかしい事ってここに来てあった?」
「御座いましたわ。ここに来て初めての朝、顔を拭いて頂く前に自分から寝台を降りた行為、下着姿で外に飛び出してしまった事、歌が下手なので歌えなかった事でしょう…それから竈に火を起こせなかった事と‥サヤスナ――」
「待て待て。ちょっと違わないか?」
「何が違うのです?」
突然悩み始めたマクシム様。いったいどうされたのでしょう。ムゥと考えるお顔になったりヘニャっと笑ってみたりで、見ているだけで楽しくなってまいります。
「よし!決めた。俺はプリエラを甘やかしすぎてた」
そうで御座いましょうか?戦力外通告をされた時は悲しゅうございましたのに。
もしや戦力として使って頂ける項目が増えるのでしょうか。
だとすればわたくし嬉しいですわ。
箒でのお掃除を教えて頂いたので出来るようになりましたが、竈は未だに火を起こさせてくださいません。芋類の皮むきも、豆類のスジ取りや種類によって袋から豆を取り出す事もさせて頂けません。薪割もさせて頂けません。
色々とさせて頂けるとなると思わず笑みが零れます。
「いいか?朝は自分で顔を洗う事からさせるからな」
「判りました。では、顔を拭いて頂いたら顔を洗うようにいたしますわ」
「違うだろう?」
「違いません。顔を拭いてもらってからでないと、寝台から出てはいけないと学びました」
どうしてまたそんなに驚いた顔をされていますの?
「プリエラはキスすると恥ずかしいって言うだろう?」
「それはそうです。夜の寝所も恥ずかしいのですよ?男性の裸に触れるのは妻の務めと学びましたが、最初は身代わりだからと気持ちが追いつきませんでしたし。ですが、今は十分に妻の務めを果たし、慣れましたので恥ずかしく御座いません。最初は痛みを感じるものが多いと聞きました。けれど夫に全てを任せていれば次第に慣れると学んだのです。マクシム様は寝台から落ちないように抱いていてくださいますから寝台から落ちる痛みも感じた事は御座いませんでしたし、今は上になって寝るのにも慣れてバランスを上手くとれるようになりましたでしょう?キスは‥‥その…夜にするものだと学びましたから朝や昼はまだ恥ずかしいですわ。だって夫婦の営みは夜でございましょう?」
「営んでないんだが…ただのラッコだし」
「何か仰いました?」
「プリエラは可愛いなって言っただけだ(ちゅっ♡)」
やっと街が見えて参りました。
交換するブローチはもうありませんが少しワクワク致します。
「ぁい…起きましたわ」
「じゃ、顔拭くぞ?熱かったらちゃんと言うんだぞ」
「はい」
わたくしの朝は、初日以外毎朝マクシム様に顔を温かい布で拭いて頂く事から始まります。その後で寝間着代わりにしているマクシム様の衣装入れにある衣類を脱がして頂いて、ワンピースを着せて頂くのです。
ワンピースが乾いていない時は、衣装入れからマクシム様のお召し物を貸して頂きます。ですが不思議なのです。マクシム様はギュっと目を閉じて着替えをさせてくれるのですが、目は開けた方がやりやすいと思うのです。
本日は【お隣さん】に荷馬車を貸して頂き、街に出かけております。
隣で馬の手綱を握ってくださっているマクシム様をはしたなくも横目でチラリと見ます。
わたくしは、感覚がおかしくなってしまったのでしょうか。
お出かけ用に服をお召しになられているのですが、いつもが非常に簡素な腰布のみの装いですので暑苦しく感じるのです。
「そんなに見ないでくれ。恥ずかしい」
「恥ずかしいのですか?ですが粗相はしておりませんよ?」
見られて恥ずかしいと仰るマクシム様が今一つ理解が出来ません。
恥ずかしいと言うのは、他人様の家名や続柄を間違う失態でありますとか、爵位が上位の方とのドレスのデザインが同じであったりだとか、場所に応じた装いではないとかの失態だと思うのです。
いつもの腰布を見慣れているからか違和感は感じますが、他人様と会う時はこの服装で正解だとわたくしは思うのです。マクシム様、恥ずかしがることは御座いませんよ?
「マクシム様は見られると恥ずかしいんですの?」
「恥ずかしいと言うか、照れるな。そう言えばプリエラも毎回困ってるよな?」
「何が?で御座いますの?」
「ほら…木の箱で一応下着?は着ているけど、その…透けて見えるからさ」
マクシム様は何を仰っているのでしょう。衣類を着て湯の中に入れば透けるのは当然です。
濃いお色でしたら、はっきりとは透けないでしょうけども、わたくしの下着は綿で白。透けない方がおかしいのです。透けて困っているのではなく濡れたままなので床や寝台が水浸しになるからです。
「そう言えば、マクシム様は下着を脱がせてくださる時、どうして目を閉じるのです?」
「えぇっ?普通閉じるだろ」
「そうなのですか?ですが着替えをする係だったメイドや湯あみの係だった侍女は目は閉じておりませんでしたよ」
「いや、それは女同士だから」
「あら?確かお兄様がいた時のお兄様の係のメイドや侍女も目は閉じておりませんでしたよ?」
思いだしてみても、お兄様は留学をされる前でしたので16、17歳の頃でしたから今のわたくしと年齢的には同じですわね。ですがメイドも侍女も目を閉じていては着替えも湯あみも出来ないと思うのです。
あら?どうしてそんな驚いた顔をされておられるのでしょう?
国が違えば、対応の仕方も変わると言う事なのでしょうか。
「まさかと思うけど、木の箱湯殿から出た後、俺が下着を脱がせるのって恥ずかしくないとか?」
不思議な事を仰います。自分で脱げないのにどうして、して頂いて恥ずかしがるのでしょう。恥ずかしいというのは、自分の失敗の事をいうのですよ。
「恥ずかしく御座いませんよ?いつもそうしていましたから」
「そうなんだ…じゃ、今度からは目を開けて…いやいやそれは俺の理性が試されるから無理だな」
「変なマクシム様ですわね」
「じゃぁ、俺が着せてって言ったらしてくれるのか?」
「致しませんよ」
「え…」
「だって、された事はあってもした事は御座いませんもの。女性の着替えは自分でしてはいけないと学びました」
「ちょっと待て。プリエラが恥ずかしい事ってここに来てあった?」
「御座いましたわ。ここに来て初めての朝、顔を拭いて頂く前に自分から寝台を降りた行為、下着姿で外に飛び出してしまった事、歌が下手なので歌えなかった事でしょう…それから竈に火を起こせなかった事と‥サヤスナ――」
「待て待て。ちょっと違わないか?」
「何が違うのです?」
突然悩み始めたマクシム様。いったいどうされたのでしょう。ムゥと考えるお顔になったりヘニャっと笑ってみたりで、見ているだけで楽しくなってまいります。
「よし!決めた。俺はプリエラを甘やかしすぎてた」
そうで御座いましょうか?戦力外通告をされた時は悲しゅうございましたのに。
もしや戦力として使って頂ける項目が増えるのでしょうか。
だとすればわたくし嬉しいですわ。
箒でのお掃除を教えて頂いたので出来るようになりましたが、竈は未だに火を起こさせてくださいません。芋類の皮むきも、豆類のスジ取りや種類によって袋から豆を取り出す事もさせて頂けません。薪割もさせて頂けません。
色々とさせて頂けるとなると思わず笑みが零れます。
「いいか?朝は自分で顔を洗う事からさせるからな」
「判りました。では、顔を拭いて頂いたら顔を洗うようにいたしますわ」
「違うだろう?」
「違いません。顔を拭いてもらってからでないと、寝台から出てはいけないと学びました」
どうしてまたそんなに驚いた顔をされていますの?
「プリエラはキスすると恥ずかしいって言うだろう?」
「それはそうです。夜の寝所も恥ずかしいのですよ?男性の裸に触れるのは妻の務めと学びましたが、最初は身代わりだからと気持ちが追いつきませんでしたし。ですが、今は十分に妻の務めを果たし、慣れましたので恥ずかしく御座いません。最初は痛みを感じるものが多いと聞きました。けれど夫に全てを任せていれば次第に慣れると学んだのです。マクシム様は寝台から落ちないように抱いていてくださいますから寝台から落ちる痛みも感じた事は御座いませんでしたし、今は上になって寝るのにも慣れてバランスを上手くとれるようになりましたでしょう?キスは‥‥その…夜にするものだと学びましたから朝や昼はまだ恥ずかしいですわ。だって夫婦の営みは夜でございましょう?」
「営んでないんだが…ただのラッコだし」
「何か仰いました?」
「プリエラは可愛いなって言っただけだ(ちゅっ♡)」
やっと街が見えて参りました。
交換するブローチはもうありませんが少しワクワク致します。
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