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カレンダー巻き
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おはようございます。あっという間に十二月です。
忘年会シーズン突入で先月末から微妙に忙しかったのが、十二月に入った途端に物量が増えて一気に忙しくなった。私としては忙しいぶんには構わないんだけど、物量が増えるとミスや怪我といったことも増えるので、そこだけは所長や良裕さん、奥澤さんたち役職者から全従業員に釘をさされた。まあ、当然だよね。
なので、読み上げ洩れや抜き忘れがないように、読み上げた商品は商品名にチェックを入れることも通達された。所謂レ点ってやつをつけて確認をするんだとか。毎年のことらしいけど今年は私が入社したのと、中には忘れている人もいるから、念のため通達したと良裕さんに言われた。
「師匠、レ点の色は黒のボールペンでいいですか?」
「いや。赤のボールペンを持ってくるから、先に準備してて」
「はい」
レ点をつけるからとバインダーと一緒にチェックリストを渡されたので、リストをバインダーに挟むと事務所から出る。リストの枚数の多さから判断し、台車にはいつもよりも多めにプラコンを乗せ、二つほど組み立てたところで良裕さんが来たのでそのまま移動を始めた。
あの日……良裕さんの誕生日の夜。朝のアレコレはともかく、夜はお互いの絆が深まったような抱かれ方だった。は、初めて愛してるって言った気がするし。……あれ? 『好き』とは言うけど『愛してる』は初めてだよね?
いつもなら『性急に求める』とか、『がっつく』って言葉がしっくりくるくらい激しく何度も抱くのに、あの日はそんなことはなかった。ゆっくりと、何かを確かめるような感じの愛撫やセックスで、いつも以上に感じてしまった。もちろん、求められていたのはわかってるよ? 私も求めてたし。
なんていうか、こう……魂が繋がったというか、歯車が噛み合ったというか……そんな感じだった。時間をかけて愛撫を重ねながら抱かれていたから、余計にそう感じたのかもしれない。次の日の夜もそんな感じで、良裕さんはゆっくりじっくり私を抱いたんだもの。
……ま、まあ、いつもの如く、何回もイかされまくって最後は気絶したんだけどさ。ちくせう。
「雀、あの日のことを思い出してたのか? 顔が赤いぞ?」
移動しながらそんなことを考えていたら、良裕さんは私の思考を読み取ったのか、耳元でそんなことを言われてからかわれた。
「な……っ!」
「いつも以上に、気持ちよさそうにアンアン啼いてたもんな、雀は。……帰ったら同じように抱いてやろうか?」
「ば……っ! 仕事中……っ」
「仕事中にエッチなことを考えてた雀は悪くないのかよ?」
「う……っ!」
良裕さんの言うことはごもっともだよ。
「すみません、私が悪うございました……」
「よろしい。考え事をしながら仕事すると怪我するから、気を引き締めて仕事しような」
「はい」
そんなやり取りをして、良裕さんから渡された赤いボールペンでチェックを入れながら、商品を抜いていく。やはり物量が普段の倍近くあるようで、台車に乗せきれなくて途中で商品をトラックの前に置きに行った。それを二回ほど繰り返し、商品を抜き終えた。
夏場の暑い時ならともかく、いつもなら冷凍物も一緒に出して分配するんだけど、十二月は物量が多いので乾物と一緒にトラックの後ろに並べることができない。なので、乾物・冷蔵と冷凍に分けて分配するそうだ。生産業者や企業が休みになり始めるクリスマスの前後――特に二十七、二十八、二十九日は最も忙しいらしく、今分配している商品のさらに倍近くになるんだとか。ひえぇぇっ!
いつも以上に分厚い伝票に内心ビビりつつ、焦らないように慎重に読み上げていく。まあ、商品名を噛んだりするのはいつものご愛嬌ってことで。何とか全部読み終え、入荷待ち商品もなかったので、良裕さんをはじめとした社員たちはサンプルと年末年始のお知らせを持って出かけて行った。
午後は二便の商品を抜き(こっちも量が多かった)、入荷して来た商品をある程度片付けたところで時間となり、会社をあとにした。
翌日は奥澤さんのフォローだった。こっちも元々量が多いルートなので、やっぱり品数は倍近くあった。
「うわ……多いですね」
「まあね。でも、忘年会シーズンだけなんだよ、忙しいのは」
「そうなんですか? 新年会シーズンも忙しいんじゃないんですか?」
「ところがどっこい、一年で一番暇なんだよ」
「そうなんですか……それは意外です」
合間にそんな話をしながら商品を抜き、分配を始める。思った通り奥澤さんのところも分厚かった伝票に顔をひきつらせながら、商品名を読み上げていった。そして皆さんが出発し、平塚さんとお昼を食べている時、所長が顔を出した。
「平塚さん、雀さん。二便の商品を抜き終わったら手伝ってほしいことがあるから、終わったら事務所に顔を出してくれるかな」
「は~い」
「いいですよ。何をやるのか、先に聞いてもいいですか?」
「毎年やってる例のクルクルでしょ~?」
「クルクル、ですか?」
「さすが平塚さん。うん、カレンダーを巻くんだ。やり方はあとで教えるから、先に二便の商品を抜いてくれるかな」
所長にお願いされたのは、カレンダーのクルクル。なんだそれはと思いつつも休憩を終え、二便の商品集めをした。平塚さんと同じくらいに集め終わったので一緒に事務所に顔を出すと、別の場所に案内された。ええ、面接やら社長たちやらとやり合った、あの部屋です。
床に厚さ十センチくらいのダンボールが置かれていて、大きさはA2かB2くらい。業者や小売店が配っている月捲りカレンダーのサイズと同じくらいだった。箱数は、全部で十五ケース也~。
「さっきも言ったけど、このカレンダーを丸めてほしいんだ」
所長が話しながらダンボールの封を切って開ける。中には自社カラーに縁取られたカレンダーと、細長いビニール袋が入っていた。カレンダーの下部には本社や支社、傘下の会社名が書かれている。
「巻く時は表紙が見えるように巻いてね。巻いたらこの袋に入れてね。カレンダーの壁掛け部分の固いところを芯代わりにして、できるだけ細く棒状に巻くと袋に入れるのも簡単だよ」
そんな説明をしながら、所長はカレンダーを細くクルクルと巻くと、ビニールに隙間を作ってそこに入れた。完全に入れてからカレンダーを離すと袋とぴったりになった。袋の皺を伸ばしてカレンダーの長さに合わせると見慣れた形になる。おお、酒屋さんとかの小売店でもらうカレンダーの形と一緒だ。
「巻き終わったら、この箱に入れてね。入れるのは一ケース分だけだよ」
「はい、わかりました」
「は~い」
「椅子に座ってやっていいからね」
「ありがとうございます」
説明が終わると、所長は「頼むね」と言って部屋を出ていった。
平塚さんと話しながらカレンダーを巻いて、出来上がった物を指定されたダンボールに入れていく。平塚さん曰く、このカレンダーは取引先に配るもので、トラック一台につき一ケース分、多いと二ケース渡すのだとか。
「そうなんですね。余ったカレンダーは私たちもいただけるんですか?」
「うん、くれるよ~。うちなんか、毎年四つはもらっていくし~」
「四つ?! 多くないですか?!」
「そうかな~? そんなことないと思うけど~」
「いやいやいや、四つは多いですって!」
そんな話をしながら、ひたすらカレンダーを丸めた。
三時になったら所長が顔を出し、残業できるか聞かれたので私はOKを出したけど、平塚さんは用事があるとかで帰っていった。お茶を飲みながらしばらく一人でやっていたら途中から所長が参加し、商品抜きが終わった平賀さんや野田さんもやってきて、四人でお喋りをしながらひたすら丸めた。所長に「お礼だよ」って缶コーヒーをおごってもらっちゃった♪
作業慣れしている三人がいたのでカレンダー巻きも予定より早く終わり、五時過ぎにはタイムカードを打刻して会社を出た。一便しかないルートのトラックが何台かあったけど、二便のルート持ちのトラックは一台も帰って来てなかった。
(いつもなら誰かしら帰って来てるのになあ)
あの物量なら仕方ないか……皆さん、お疲れ様です。なんて内心で考えつつ家路を急いだ。
***
「カレンダー巻き、手伝ってくれたんだって?」
いつもよりも遅い八時半過ぎに帰宅した良裕さんはお風呂に入ったあと、ご飯を食べながらそんなことを聞いて来た。
「うん。最初は平塚さんと二人でやって、平塚さんが帰ったあとは所長と平賀さんと野田さんの四人で巻いたんだ」
「そっか。ありがとな。大変だっただろ?」
「そんなことないよ? 初めての体験でとっても楽しかった!」
「それならいいけど」
二人でそんな話をしながらご飯を食べる。「今日は鍋が食いたい」と良裕さんにメールでリクエストをもらったので、魚介たっぷりの寄せ鍋にした。
醤油ベースの出汁に、野菜は白菜と春菊、椎茸と舞茸、長ネギと花の形に切った人参、焼き豆腐。魚介は小さめの蛤に鱈、鰯のつみれにカニ足、剥きエビに牡蠣、アンコウの切身。アンコウは冷凍物なんだけど、良裕さんが袋をカッターで切っちゃって、取引先に出せないとかで自腹で買ってきたので、急遽鍋に足した。
何やってんの、良裕さん。アンコウは鍋にも唐揚げにもできるからいいけどさ……そこそこ数が多いから、使いきるまでが大変だよ。
「あ、そういえば雀。今度の日曜に、両家で食事会をすることになった」
「ぶ……っ、そ、それはまた急だね」
「だろ? ったく、急に言われたって、忘年会シーズンだから店の予約なんかできないっつうの」
「だよね。そもそも誰が言ってきたの?」
「うちの兄貴。雀んちの兄貴が大学時代の同級生だったらしくてさ……。いろいろ話しているうちに結婚相手が自分たちの弟妹だと発覚して、今同棲してるし近々結婚するだろうから、さっさと食事会をしようってなったらしい」
「おおぅ……聞いてないんだけど……バカ兄貴め」
後日わかったことなんだけど、大学を卒業してからも連絡を取り合うくらいの友人なんだとか。食事会をしようって言い出す前日に会ってたらしく、近況報告で『弟が結婚する、相手はこの人』って感じで写真を見せたら、『俺の弟じゃん!』となったらしい。
それはともかく。
「予約は兄さんたちに任せたら? 言い出しっぺなんだし」
「そうだな。俺には『予約取ってくれ』って言われてないし」
「だよね」
〆の雑炊を食べながらそんな結論を出し、いろいろと雑談をしてご飯は終わり。
そして予定していた食事会なんだけど。
――兄たちはお店の予約が取れなかったらしく、新年に持ち越しとなった。
忘年会シーズン突入で先月末から微妙に忙しかったのが、十二月に入った途端に物量が増えて一気に忙しくなった。私としては忙しいぶんには構わないんだけど、物量が増えるとミスや怪我といったことも増えるので、そこだけは所長や良裕さん、奥澤さんたち役職者から全従業員に釘をさされた。まあ、当然だよね。
なので、読み上げ洩れや抜き忘れがないように、読み上げた商品は商品名にチェックを入れることも通達された。所謂レ点ってやつをつけて確認をするんだとか。毎年のことらしいけど今年は私が入社したのと、中には忘れている人もいるから、念のため通達したと良裕さんに言われた。
「師匠、レ点の色は黒のボールペンでいいですか?」
「いや。赤のボールペンを持ってくるから、先に準備してて」
「はい」
レ点をつけるからとバインダーと一緒にチェックリストを渡されたので、リストをバインダーに挟むと事務所から出る。リストの枚数の多さから判断し、台車にはいつもよりも多めにプラコンを乗せ、二つほど組み立てたところで良裕さんが来たのでそのまま移動を始めた。
あの日……良裕さんの誕生日の夜。朝のアレコレはともかく、夜はお互いの絆が深まったような抱かれ方だった。は、初めて愛してるって言った気がするし。……あれ? 『好き』とは言うけど『愛してる』は初めてだよね?
いつもなら『性急に求める』とか、『がっつく』って言葉がしっくりくるくらい激しく何度も抱くのに、あの日はそんなことはなかった。ゆっくりと、何かを確かめるような感じの愛撫やセックスで、いつも以上に感じてしまった。もちろん、求められていたのはわかってるよ? 私も求めてたし。
なんていうか、こう……魂が繋がったというか、歯車が噛み合ったというか……そんな感じだった。時間をかけて愛撫を重ねながら抱かれていたから、余計にそう感じたのかもしれない。次の日の夜もそんな感じで、良裕さんはゆっくりじっくり私を抱いたんだもの。
……ま、まあ、いつもの如く、何回もイかされまくって最後は気絶したんだけどさ。ちくせう。
「雀、あの日のことを思い出してたのか? 顔が赤いぞ?」
移動しながらそんなことを考えていたら、良裕さんは私の思考を読み取ったのか、耳元でそんなことを言われてからかわれた。
「な……っ!」
「いつも以上に、気持ちよさそうにアンアン啼いてたもんな、雀は。……帰ったら同じように抱いてやろうか?」
「ば……っ! 仕事中……っ」
「仕事中にエッチなことを考えてた雀は悪くないのかよ?」
「う……っ!」
良裕さんの言うことはごもっともだよ。
「すみません、私が悪うございました……」
「よろしい。考え事をしながら仕事すると怪我するから、気を引き締めて仕事しような」
「はい」
そんなやり取りをして、良裕さんから渡された赤いボールペンでチェックを入れながら、商品を抜いていく。やはり物量が普段の倍近くあるようで、台車に乗せきれなくて途中で商品をトラックの前に置きに行った。それを二回ほど繰り返し、商品を抜き終えた。
夏場の暑い時ならともかく、いつもなら冷凍物も一緒に出して分配するんだけど、十二月は物量が多いので乾物と一緒にトラックの後ろに並べることができない。なので、乾物・冷蔵と冷凍に分けて分配するそうだ。生産業者や企業が休みになり始めるクリスマスの前後――特に二十七、二十八、二十九日は最も忙しいらしく、今分配している商品のさらに倍近くになるんだとか。ひえぇぇっ!
いつも以上に分厚い伝票に内心ビビりつつ、焦らないように慎重に読み上げていく。まあ、商品名を噛んだりするのはいつものご愛嬌ってことで。何とか全部読み終え、入荷待ち商品もなかったので、良裕さんをはじめとした社員たちはサンプルと年末年始のお知らせを持って出かけて行った。
午後は二便の商品を抜き(こっちも量が多かった)、入荷して来た商品をある程度片付けたところで時間となり、会社をあとにした。
翌日は奥澤さんのフォローだった。こっちも元々量が多いルートなので、やっぱり品数は倍近くあった。
「うわ……多いですね」
「まあね。でも、忘年会シーズンだけなんだよ、忙しいのは」
「そうなんですか? 新年会シーズンも忙しいんじゃないんですか?」
「ところがどっこい、一年で一番暇なんだよ」
「そうなんですか……それは意外です」
合間にそんな話をしながら商品を抜き、分配を始める。思った通り奥澤さんのところも分厚かった伝票に顔をひきつらせながら、商品名を読み上げていった。そして皆さんが出発し、平塚さんとお昼を食べている時、所長が顔を出した。
「平塚さん、雀さん。二便の商品を抜き終わったら手伝ってほしいことがあるから、終わったら事務所に顔を出してくれるかな」
「は~い」
「いいですよ。何をやるのか、先に聞いてもいいですか?」
「毎年やってる例のクルクルでしょ~?」
「クルクル、ですか?」
「さすが平塚さん。うん、カレンダーを巻くんだ。やり方はあとで教えるから、先に二便の商品を抜いてくれるかな」
所長にお願いされたのは、カレンダーのクルクル。なんだそれはと思いつつも休憩を終え、二便の商品集めをした。平塚さんと同じくらいに集め終わったので一緒に事務所に顔を出すと、別の場所に案内された。ええ、面接やら社長たちやらとやり合った、あの部屋です。
床に厚さ十センチくらいのダンボールが置かれていて、大きさはA2かB2くらい。業者や小売店が配っている月捲りカレンダーのサイズと同じくらいだった。箱数は、全部で十五ケース也~。
「さっきも言ったけど、このカレンダーを丸めてほしいんだ」
所長が話しながらダンボールの封を切って開ける。中には自社カラーに縁取られたカレンダーと、細長いビニール袋が入っていた。カレンダーの下部には本社や支社、傘下の会社名が書かれている。
「巻く時は表紙が見えるように巻いてね。巻いたらこの袋に入れてね。カレンダーの壁掛け部分の固いところを芯代わりにして、できるだけ細く棒状に巻くと袋に入れるのも簡単だよ」
そんな説明をしながら、所長はカレンダーを細くクルクルと巻くと、ビニールに隙間を作ってそこに入れた。完全に入れてからカレンダーを離すと袋とぴったりになった。袋の皺を伸ばしてカレンダーの長さに合わせると見慣れた形になる。おお、酒屋さんとかの小売店でもらうカレンダーの形と一緒だ。
「巻き終わったら、この箱に入れてね。入れるのは一ケース分だけだよ」
「はい、わかりました」
「は~い」
「椅子に座ってやっていいからね」
「ありがとうございます」
説明が終わると、所長は「頼むね」と言って部屋を出ていった。
平塚さんと話しながらカレンダーを巻いて、出来上がった物を指定されたダンボールに入れていく。平塚さん曰く、このカレンダーは取引先に配るもので、トラック一台につき一ケース分、多いと二ケース渡すのだとか。
「そうなんですね。余ったカレンダーは私たちもいただけるんですか?」
「うん、くれるよ~。うちなんか、毎年四つはもらっていくし~」
「四つ?! 多くないですか?!」
「そうかな~? そんなことないと思うけど~」
「いやいやいや、四つは多いですって!」
そんな話をしながら、ひたすらカレンダーを丸めた。
三時になったら所長が顔を出し、残業できるか聞かれたので私はOKを出したけど、平塚さんは用事があるとかで帰っていった。お茶を飲みながらしばらく一人でやっていたら途中から所長が参加し、商品抜きが終わった平賀さんや野田さんもやってきて、四人でお喋りをしながらひたすら丸めた。所長に「お礼だよ」って缶コーヒーをおごってもらっちゃった♪
作業慣れしている三人がいたのでカレンダー巻きも予定より早く終わり、五時過ぎにはタイムカードを打刻して会社を出た。一便しかないルートのトラックが何台かあったけど、二便のルート持ちのトラックは一台も帰って来てなかった。
(いつもなら誰かしら帰って来てるのになあ)
あの物量なら仕方ないか……皆さん、お疲れ様です。なんて内心で考えつつ家路を急いだ。
***
「カレンダー巻き、手伝ってくれたんだって?」
いつもよりも遅い八時半過ぎに帰宅した良裕さんはお風呂に入ったあと、ご飯を食べながらそんなことを聞いて来た。
「うん。最初は平塚さんと二人でやって、平塚さんが帰ったあとは所長と平賀さんと野田さんの四人で巻いたんだ」
「そっか。ありがとな。大変だっただろ?」
「そんなことないよ? 初めての体験でとっても楽しかった!」
「それならいいけど」
二人でそんな話をしながらご飯を食べる。「今日は鍋が食いたい」と良裕さんにメールでリクエストをもらったので、魚介たっぷりの寄せ鍋にした。
醤油ベースの出汁に、野菜は白菜と春菊、椎茸と舞茸、長ネギと花の形に切った人参、焼き豆腐。魚介は小さめの蛤に鱈、鰯のつみれにカニ足、剥きエビに牡蠣、アンコウの切身。アンコウは冷凍物なんだけど、良裕さんが袋をカッターで切っちゃって、取引先に出せないとかで自腹で買ってきたので、急遽鍋に足した。
何やってんの、良裕さん。アンコウは鍋にも唐揚げにもできるからいいけどさ……そこそこ数が多いから、使いきるまでが大変だよ。
「あ、そういえば雀。今度の日曜に、両家で食事会をすることになった」
「ぶ……っ、そ、それはまた急だね」
「だろ? ったく、急に言われたって、忘年会シーズンだから店の予約なんかできないっつうの」
「だよね。そもそも誰が言ってきたの?」
「うちの兄貴。雀んちの兄貴が大学時代の同級生だったらしくてさ……。いろいろ話しているうちに結婚相手が自分たちの弟妹だと発覚して、今同棲してるし近々結婚するだろうから、さっさと食事会をしようってなったらしい」
「おおぅ……聞いてないんだけど……バカ兄貴め」
後日わかったことなんだけど、大学を卒業してからも連絡を取り合うくらいの友人なんだとか。食事会をしようって言い出す前日に会ってたらしく、近況報告で『弟が結婚する、相手はこの人』って感じで写真を見せたら、『俺の弟じゃん!』となったらしい。
それはともかく。
「予約は兄さんたちに任せたら? 言い出しっぺなんだし」
「そうだな。俺には『予約取ってくれ』って言われてないし」
「だよね」
〆の雑炊を食べながらそんな結論を出し、いろいろと雑談をしてご飯は終わり。
そして予定していた食事会なんだけど。
――兄たちはお店の予約が取れなかったらしく、新年に持ち越しとなった。
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