164 / 178
本編 2
じいじとばあばがやってきた
しおりを挟む
帰っていくマルクさんを見送り、母と交代する。開店した当時と比べたら冒険者の出入りは落ち着いたけど、他国に行った人たちが広めているのか、時々見知らぬ冒険者が買い物に来る。
そのまま王都に住み始める人たちもいれば、上級ダンジョンに潜ってから戻る人たちもいるようで、それぞれのスタイルがあるんだなあと感慨深い。
お昼を挟んで午後も開店すると、今度は本当の祖父母であるオイゲンさんとエレーナさん、ハインツさんが顔を出した。前世のハインツさんは、私の親代わりでもあったからね。そういう意味では祖父で間違ってないと思う。
母も入れたら、じいじとばあばがそろい踏みだね!
「「じいじがきたぞ~」」
「ばあばもきたわよ~」
「「「じいじ! ばあば!」」」
「じ~、ば~」
満面の笑みを浮かべた三人に、子どもたちが歓声をあげる。すぐに集まって話を始めたので、子どもたちを彼らに任せて店に戻る。
もちろん、その中には両親の子どもが三人いて、彼らの面倒を見てくれるのだ。その中でもリョウくんは一番お兄さんだけど、それでもアイデクセの国民になったからなのか、自分の祖父母ではないのにこの国のことを聞いたりしている。
特にハインツさんとはよく話しているようで、かなり懐いている。
はっきりとは聞いていないが、どうもリョウくんも前世の記憶を持っているみたいなんだよねぇ。そのうち教えてくれるといいな。
そんなこんなで今日も買い取りや瓶の交換をしつつ、まったり営業中。途中でにわか雨が降ったけど、客足はあまり途絶えなかった。
そろそろ雨季の時期だもんね。ライゾウさんがてんやわんやになりそうだ。
そうこうするうちに閉店時間も迫ってきたんだけど、祖父母の三人はまだ子どもたちと遊んでいるみたい。晩ご飯に誘っても大丈夫なのかと心配になる。
特に三人は当主を交代したとはいえ、未だに付き合いのある仲のいい貴族がいると聞いているから、夜会やパーティーに出席しなくていいのかと心配になる。
どうするのか聞いてからだなあ……なんて思っていたら、焦ったようにオイゲンさんとエレーナさんが顔を出した。
「リン、すっかり長居してこめんなさいね。夜会に出ることを忘れていたの」
「慌ただしくてすまんが、明日は休みだろう? 一緒に食事をしよう」
「わかりました。リクエストはありますか?」
「「ハマヤキで!」」
「あはは……わかりました」
お気をつけてと声をかけると、拠点のほうへ帰るオイゲンさんとエレーナさんを見送る。やっぱり忘れてたのかと呆れつつ、のんびりとこっちに来たハインツさんを見る。
「ハインツさんはお時間ありますか? あるなら、晩ご飯を一緒にどうでしょう」
「おや、いいのかい?」
「ええ。そろそろエアハルトさんたちがダンジョンから戻ってくるはずなので」
「では、ご相伴に与ろう」
にこにこと嬉しそうに笑みを浮かべると同時に、尻尾がゆらゆらと揺れるハインツさん。そんな様子を見て何が食べたいか聞いていたら、エアハルトさんたちが疲れた顔をして戻ってきた。
「おかえりなさい」
「「「ただいま。疲れた!」」」
「お疲れ様でした」
疲れたと言いつつも、薬草を買い取りカウンターに置くエアハルトさんとアレクさんとナディさん。それぞれ三袋ずつ出したものだから、つい顔が引きつってしまった。
「た、たくさん採取してきたんですね」
「ああ。スミレの子たちが張り切って見つけてくれてな……」
「僕たちもわからない薬草やキノコがあったので、助かりました」
「大活躍でしたわ」
「そうですか。じゃあ、確認しながら計算しますね」
いくら自分の夫やパーティーメンバーといえど、プライベートと仕事はきっちり分ける。お土産として持って来たならともかく、依頼して採取してきてもらったからね。
そこはきちんとしていますとも。
たくさんあるなあ、いつの間にスミレの子たちは薬草の種類を覚えたんだと思いつつ、大きな麻袋に入っている薬草をひとつひとつ調べていく。丁寧に切り取ってくれたり、根っこが途中で切れたようなものもなかった。
さすが、一緒に採取してコツを教えただけのことはある。
三人にそれぞれ買い取り金額を渡し、晩ご飯はハインツさんも一緒だと言うと、話すのが楽しみだと言って拠点に帰った。
そのころに閉店時間となり、雨が降り始めたことで客足もなかったことから閉店。すぐに閉店作業をして店の鍵を閉める。住居のほうはたまに両親が家族団らんをしたいと言って使ってくれるので、鍵を預けているのだ。
「ママ、家のほうは明日までお願いします」
「わかったわ」
店舗兼住居は母に任せ、子どもたちを迎えに行ったらエアハルトさんたちが連れて帰ったらしく、誰もいなかった。従魔たちと眷属たちは私を待っていたようで、建物の中で寛いでいた。
「みんな、帰るよ」
私の言葉にはーい! と元気に返事をすると、すぐ側に寄ってくる。相変わらず可愛いしいい子たちだなあとほっこりしつつ一匹ずつ撫で回し、小屋の鍵を閉めて拠点に向かう。
さて、ハインツさんのリクエストはなにかな?
そのまま王都に住み始める人たちもいれば、上級ダンジョンに潜ってから戻る人たちもいるようで、それぞれのスタイルがあるんだなあと感慨深い。
お昼を挟んで午後も開店すると、今度は本当の祖父母であるオイゲンさんとエレーナさん、ハインツさんが顔を出した。前世のハインツさんは、私の親代わりでもあったからね。そういう意味では祖父で間違ってないと思う。
母も入れたら、じいじとばあばがそろい踏みだね!
「「じいじがきたぞ~」」
「ばあばもきたわよ~」
「「「じいじ! ばあば!」」」
「じ~、ば~」
満面の笑みを浮かべた三人に、子どもたちが歓声をあげる。すぐに集まって話を始めたので、子どもたちを彼らに任せて店に戻る。
もちろん、その中には両親の子どもが三人いて、彼らの面倒を見てくれるのだ。その中でもリョウくんは一番お兄さんだけど、それでもアイデクセの国民になったからなのか、自分の祖父母ではないのにこの国のことを聞いたりしている。
特にハインツさんとはよく話しているようで、かなり懐いている。
はっきりとは聞いていないが、どうもリョウくんも前世の記憶を持っているみたいなんだよねぇ。そのうち教えてくれるといいな。
そんなこんなで今日も買い取りや瓶の交換をしつつ、まったり営業中。途中でにわか雨が降ったけど、客足はあまり途絶えなかった。
そろそろ雨季の時期だもんね。ライゾウさんがてんやわんやになりそうだ。
そうこうするうちに閉店時間も迫ってきたんだけど、祖父母の三人はまだ子どもたちと遊んでいるみたい。晩ご飯に誘っても大丈夫なのかと心配になる。
特に三人は当主を交代したとはいえ、未だに付き合いのある仲のいい貴族がいると聞いているから、夜会やパーティーに出席しなくていいのかと心配になる。
どうするのか聞いてからだなあ……なんて思っていたら、焦ったようにオイゲンさんとエレーナさんが顔を出した。
「リン、すっかり長居してこめんなさいね。夜会に出ることを忘れていたの」
「慌ただしくてすまんが、明日は休みだろう? 一緒に食事をしよう」
「わかりました。リクエストはありますか?」
「「ハマヤキで!」」
「あはは……わかりました」
お気をつけてと声をかけると、拠点のほうへ帰るオイゲンさんとエレーナさんを見送る。やっぱり忘れてたのかと呆れつつ、のんびりとこっちに来たハインツさんを見る。
「ハインツさんはお時間ありますか? あるなら、晩ご飯を一緒にどうでしょう」
「おや、いいのかい?」
「ええ。そろそろエアハルトさんたちがダンジョンから戻ってくるはずなので」
「では、ご相伴に与ろう」
にこにこと嬉しそうに笑みを浮かべると同時に、尻尾がゆらゆらと揺れるハインツさん。そんな様子を見て何が食べたいか聞いていたら、エアハルトさんたちが疲れた顔をして戻ってきた。
「おかえりなさい」
「「「ただいま。疲れた!」」」
「お疲れ様でした」
疲れたと言いつつも、薬草を買い取りカウンターに置くエアハルトさんとアレクさんとナディさん。それぞれ三袋ずつ出したものだから、つい顔が引きつってしまった。
「た、たくさん採取してきたんですね」
「ああ。スミレの子たちが張り切って見つけてくれてな……」
「僕たちもわからない薬草やキノコがあったので、助かりました」
「大活躍でしたわ」
「そうですか。じゃあ、確認しながら計算しますね」
いくら自分の夫やパーティーメンバーといえど、プライベートと仕事はきっちり分ける。お土産として持って来たならともかく、依頼して採取してきてもらったからね。
そこはきちんとしていますとも。
たくさんあるなあ、いつの間にスミレの子たちは薬草の種類を覚えたんだと思いつつ、大きな麻袋に入っている薬草をひとつひとつ調べていく。丁寧に切り取ってくれたり、根っこが途中で切れたようなものもなかった。
さすが、一緒に採取してコツを教えただけのことはある。
三人にそれぞれ買い取り金額を渡し、晩ご飯はハインツさんも一緒だと言うと、話すのが楽しみだと言って拠点に帰った。
そのころに閉店時間となり、雨が降り始めたことで客足もなかったことから閉店。すぐに閉店作業をして店の鍵を閉める。住居のほうはたまに両親が家族団らんをしたいと言って使ってくれるので、鍵を預けているのだ。
「ママ、家のほうは明日までお願いします」
「わかったわ」
店舗兼住居は母に任せ、子どもたちを迎えに行ったらエアハルトさんたちが連れて帰ったらしく、誰もいなかった。従魔たちと眷属たちは私を待っていたようで、建物の中で寛いでいた。
「みんな、帰るよ」
私の言葉にはーい! と元気に返事をすると、すぐ側に寄ってくる。相変わらず可愛いしいい子たちだなあとほっこりしつつ一匹ずつ撫で回し、小屋の鍵を閉めて拠点に向かう。
さて、ハインツさんのリクエストはなにかな?
710
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?
水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」
「はぁ?」
静かな食堂の間。
主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。
同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。
いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。
「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」
「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」
父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。
「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」
アリスは家から一度出る決心をする。
それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。
アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。
彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。
「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」
アリスはため息をつく。
「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」
後悔したところでもう遅い。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。