転移先は薬師が少ない世界でした

饕餮

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本編 2

じいじとばあばがやってきた

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 帰っていくマルクさんを見送り、母と交代する。開店した当時と比べたら冒険者の出入りは落ち着いたけど、他国に行った人たちが広めているのか、時々見知らぬ冒険者が買い物に来る。
 そのまま王都に住み始める人たちもいれば、上級ダンジョンに潜ってから戻る人たちもいるようで、それぞれのスタイルがあるんだなあと感慨深い。
 お昼を挟んで午後も開店すると、今度は本当の祖父母であるオイゲンさんとエレーナさん、ハインツさんが顔を出した。前世のハインツさんは、私の親代わりでもあったからね。そういう意味では祖父で間違ってないと思う。
 母も入れたら、じいじとばあばがそろい踏みだね!

「「じいじがきたぞ~」」
「ばあばもきたわよ~」
「「「じいじ! ばあば!」」」
「じ~、ば~」

 満面の笑みを浮かべた三人に、子どもたちが歓声をあげる。すぐに集まって話を始めたので、子どもたちを彼らに任せて店に戻る。
 もちろん、その中には両親の子どもが三人いて、彼らの面倒を見てくれるのだ。その中でもリョウくんは一番お兄さんだけど、それでもアイデクセの国民になったからなのか、自分の祖父母ではないのにこの国のことを聞いたりしている。
 特にハインツさんとはよく話しているようで、かなり懐いている。
 はっきりとは聞いていないが、どうもリョウくんも前世の記憶を持っているみたいなんだよねぇ。そのうち教えてくれるといいな。
 そんなこんなで今日も買い取りや瓶の交換をしつつ、まったり営業中。途中でにわか雨が降ったけど、客足はあまり途絶えなかった。
 そろそろ雨季の時期だもんね。ライゾウさんがてんやわんやになりそうだ。
 そうこうするうちに閉店時間も迫ってきたんだけど、祖父母の三人はまだ子どもたちと遊んでいるみたい。晩ご飯に誘っても大丈夫なのかと心配になる。
 特に三人は当主を交代したとはいえ、未だに付き合いのある仲のいい貴族がいると聞いているから、夜会やパーティーに出席しなくていいのかと心配になる。
 どうするのか聞いてからだなあ……なんて思っていたら、焦ったようにオイゲンさんとエレーナさんが顔を出した。

「リン、すっかり長居してこめんなさいね。夜会に出ることを忘れていたの」
「慌ただしくてすまんが、明日は休みだろう? 一緒に食事をしよう」
「わかりました。リクエストはありますか?」
「「ハマヤキで!」」
「あはは……わかりました」

 お気をつけてと声をかけると、拠点のほうへ帰るオイゲンさんとエレーナさんを見送る。やっぱり忘れてたのかと呆れつつ、のんびりとこっちに来たハインツさんを見る。

「ハインツさんはお時間ありますか? あるなら、晩ご飯を一緒にどうでしょう」
「おや、いいのかい?」
「ええ。そろそろエアハルトさんたちがダンジョンから戻ってくるはずなので」
「では、ご相伴に与ろう」

 にこにこと嬉しそうに笑みを浮かべると同時に、尻尾がゆらゆらと揺れるハインツさん。そんな様子を見て何が食べたいか聞いていたら、エアハルトさんたちが疲れた顔をして戻ってきた。

「おかえりなさい」
「「「ただいま。疲れた!」」」
「お疲れ様でした」

 疲れたと言いつつも、薬草を買い取りカウンターに置くエアハルトさんとアレクさんとナディさん。それぞれ三袋ずつ出したものだから、つい顔が引きつってしまった。

「た、たくさん採取してきたんですね」
「ああ。スミレの子たちが張り切って見つけてくれてな……」
「僕たちもわからない薬草やキノコがあったので、助かりました」
「大活躍でしたわ」
「そうですか。じゃあ、確認しながら計算しますね」

 いくら自分の夫やパーティーメンバーといえど、プライベートと仕事はきっちり分ける。お土産として持って来たならともかく、依頼して採取してきてもらったからね。
 そこはきちんとしていますとも。
 たくさんあるなあ、いつの間にスミレの子たちは薬草の種類を覚えたんだと思いつつ、大きな麻袋に入っている薬草をひとつひとつ調べていく。丁寧に切り取ってくれたり、根っこが途中で切れたようなものもなかった。
 さすが、一緒に採取してコツを教えただけのことはある。
 三人にそれぞれ買い取り金額を渡し、晩ご飯はハインツさんも一緒だと言うと、話すのが楽しみだと言って拠点に帰った。
 そのころに閉店時間となり、雨が降り始めたことで客足もなかったことから閉店。すぐに閉店作業をして店の鍵を閉める。住居のほうはたまに両親が家族団らんをしたいと言って使ってくれるので、鍵を預けているのだ。

「ママ、家のほうは明日までお願いします」
「わかったわ」

 店舗兼住居は母に任せ、子どもたちを迎えに行ったらエアハルトさんたちが連れて帰ったらしく、誰もいなかった。従魔たちと眷属たちは私を待っていたようで、建物の中で寛いでいた。

「みんな、帰るよ」

 私の言葉にはーい! と元気に返事をすると、すぐ側に寄ってくる。相変わらず可愛いしいい子たちだなあとほっこりしつつ一匹ずつ撫で回し、小屋の鍵を閉めて拠点に向かう。
 さて、ハインツさんのリクエストはなにかな?

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