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本編 2
カルティス領へ行こう 5
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まずは紙芝居のやり方を覚えてもらい、大人でも子どもでもいいから練習がてら実践。慣れたら木枠の量産体制に入ってもらうつもり。
それもあり、ライゾウさんがわざわざ木材をパーツごとにして渡してくれたの。しかも、木材のサイズと作り方を書いたものまで用意し、それを五組ぶん渡してくれたのだ。
端材で作ったから料金はいいと言われたけど、作った手間暇などのことを考えるとさすがにそれはダメだからと、きっちり計算してもらいましたとも。だってレシピまでついてるんだよ? それをタダでなんて絶対にダメだ。
エアハルトさんや両親、果てはヨシキさんからも言われたからか、「めんどくせぇ……」とぼやきながらも計算してくれたので、きちんと支払ってきた。
それらのことは伏せ、カールさんとレイラさんに渡す。
「これが、その木枠の材料です。サイズなどのレシピはこちらになります」
「お義姉様……」
「はい、どうぞ。まずは慣れてもらって、他にも欲しいと言われたら、木材を扱う工房に頼んで作ってもらってくださいね」
「……はい。はいっ!」
代表でレイラさんにすべて渡したあと、紙芝居の作り方を伝授。絵を描くことになるので厚めの紙がいいのと、裏に書く文字も読み手が読みやすい大きさにするといいなど、基本的なことを話した。
あとは、今回作ってきたものはそのまま絵本にしてもいいことを伝え、うちの子たちを交えて読んでみた。すると、うちの一番下と同じくらいの子たちであるカールさんとレイラさんの子たちが、反応を示した。
なんと、カブを引き抜くときの言葉を覚え、真似し始めたのだ!
もちろんうちの子たちも一緒にうんとこしょーと言っていて、可愛らしい声が室内に響いている。
「まあ……。これは楽しいですわね!」
「そうだね。カブを一緒に引っ張っている気持ちになれるね」
仲間同士の一体感が学べますわね、とレイラさんが微笑ましそうな表情で自分の子どもたちや甥や姪を見ている。そこに私も参入し、一緒にうんとこしょーとカブを引き抜く真似をしてみると、座ったままではあるけどカブを引き抜く真似をし始める。
こ、これは可愛い!
きゃあきゃあと楽しそうにはしゃぐ様子は、きっと孤児院などでも見られるようになるはず。それに、子ども同士で作ったりすれば読み書きの練習にもなる。
他にも、絵に興味を持ってくれて、画家になるかもしれない。
もしかしたら木枠に興味を持って、木工細工の職人になるかもしれない。
カブの育て方や花に興味を持って、農家になるかもしれない。
子どもたちがどんなものに興味を持つかなんて私たち大人にはわからないし、決めつけてもいけないと思う。だから、まずは絵本や紙芝居で文字を覚えてもらい、物語を通じていろんなことに興味を持ち、自分のやりたいことを見つけられたらいいな。
特に弟となったリョウくんは、父と一緒に診療所にいることが多いからか、医師になりたいと言い始めている。その第一歩として私の店の裏にある庭で、薬草の勉強をし始めているのだ。
それを例に出してレイラさんたちに伝えると、「確かに」と頷く。
「親が農家や職人、冒険者だからといって、同じような才能があるとは限りませんもの」
「そうだね。才能があったとしても、親とまったく同じとは限らない。もっと才能があるかもしれないし、ないかもしれないし」
「ええ。可能性は無限にあるのですもの」
そう言って微笑みあう、レイラさんとカールさん。
カールさんも、領主になってガウティーノ家をもっと豊かにしたいと思っていた。だけど、実際は自分にはその能力はなく、逆に自分の両親や兄たちに迷惑をかけてしまった。
最初はなんで僕ばかりこんな目にあうんだとか、兄たちと比べられるのはどうしてなんだと考えていたけど、レイラさんと婚姻して、いざ領地経営を始めてみれば自分にはその才能がないことが露呈しててしまった。
比べられていたのではなく、自分が勉強から逃げていただけだったのだと、この家に来て思い知ったんだとか。
だからなんとか勉強をしたいけど、勉強してこなかったツケが回ってきてしまった。そんな八方ふさがりになっているときにガウティーノ家からバーベキューのお誘いがあり、気分転換に行ってみたら思いの外楽しかったし、まさかの私からの提案があったものだから、今度こそ自分にできることをやろうと決意したんだとか。
エアハルトさん、小さな声で「大人になったんだな」だなんて言わないの!
それもあり、ライゾウさんがわざわざ木材をパーツごとにして渡してくれたの。しかも、木材のサイズと作り方を書いたものまで用意し、それを五組ぶん渡してくれたのだ。
端材で作ったから料金はいいと言われたけど、作った手間暇などのことを考えるとさすがにそれはダメだからと、きっちり計算してもらいましたとも。だってレシピまでついてるんだよ? それをタダでなんて絶対にダメだ。
エアハルトさんや両親、果てはヨシキさんからも言われたからか、「めんどくせぇ……」とぼやきながらも計算してくれたので、きちんと支払ってきた。
それらのことは伏せ、カールさんとレイラさんに渡す。
「これが、その木枠の材料です。サイズなどのレシピはこちらになります」
「お義姉様……」
「はい、どうぞ。まずは慣れてもらって、他にも欲しいと言われたら、木材を扱う工房に頼んで作ってもらってくださいね」
「……はい。はいっ!」
代表でレイラさんにすべて渡したあと、紙芝居の作り方を伝授。絵を描くことになるので厚めの紙がいいのと、裏に書く文字も読み手が読みやすい大きさにするといいなど、基本的なことを話した。
あとは、今回作ってきたものはそのまま絵本にしてもいいことを伝え、うちの子たちを交えて読んでみた。すると、うちの一番下と同じくらいの子たちであるカールさんとレイラさんの子たちが、反応を示した。
なんと、カブを引き抜くときの言葉を覚え、真似し始めたのだ!
もちろんうちの子たちも一緒にうんとこしょーと言っていて、可愛らしい声が室内に響いている。
「まあ……。これは楽しいですわね!」
「そうだね。カブを一緒に引っ張っている気持ちになれるね」
仲間同士の一体感が学べますわね、とレイラさんが微笑ましそうな表情で自分の子どもたちや甥や姪を見ている。そこに私も参入し、一緒にうんとこしょーとカブを引き抜く真似をしてみると、座ったままではあるけどカブを引き抜く真似をし始める。
こ、これは可愛い!
きゃあきゃあと楽しそうにはしゃぐ様子は、きっと孤児院などでも見られるようになるはず。それに、子ども同士で作ったりすれば読み書きの練習にもなる。
他にも、絵に興味を持ってくれて、画家になるかもしれない。
もしかしたら木枠に興味を持って、木工細工の職人になるかもしれない。
カブの育て方や花に興味を持って、農家になるかもしれない。
子どもたちがどんなものに興味を持つかなんて私たち大人にはわからないし、決めつけてもいけないと思う。だから、まずは絵本や紙芝居で文字を覚えてもらい、物語を通じていろんなことに興味を持ち、自分のやりたいことを見つけられたらいいな。
特に弟となったリョウくんは、父と一緒に診療所にいることが多いからか、医師になりたいと言い始めている。その第一歩として私の店の裏にある庭で、薬草の勉強をし始めているのだ。
それを例に出してレイラさんたちに伝えると、「確かに」と頷く。
「親が農家や職人、冒険者だからといって、同じような才能があるとは限りませんもの」
「そうだね。才能があったとしても、親とまったく同じとは限らない。もっと才能があるかもしれないし、ないかもしれないし」
「ええ。可能性は無限にあるのですもの」
そう言って微笑みあう、レイラさんとカールさん。
カールさんも、領主になってガウティーノ家をもっと豊かにしたいと思っていた。だけど、実際は自分にはその能力はなく、逆に自分の両親や兄たちに迷惑をかけてしまった。
最初はなんで僕ばかりこんな目にあうんだとか、兄たちと比べられるのはどうしてなんだと考えていたけど、レイラさんと婚姻して、いざ領地経営を始めてみれば自分にはその才能がないことが露呈しててしまった。
比べられていたのではなく、自分が勉強から逃げていただけだったのだと、この家に来て思い知ったんだとか。
だからなんとか勉強をしたいけど、勉強してこなかったツケが回ってきてしまった。そんな八方ふさがりになっているときにガウティーノ家からバーベキューのお誘いがあり、気分転換に行ってみたら思いの外楽しかったし、まさかの私からの提案があったものだから、今度こそ自分にできることをやろうと決意したんだとか。
エアハルトさん、小さな声で「大人になったんだな」だなんて言わないの!
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