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『編み物男子部』?ができるまで。
161 楽しい日曜日 5
しおりを挟む俺が見た光景は隣同士になって向かい合いながら相沢君と坂口君が対峙していて、朔田君はそれを見ながらうすいえんどうの豆を一人で器用に剥いているところだった。豆剥きは半分以上終えていた。
俺が声をかけようとした時、ちょうど神崎川が弟を連れて弟の颯汰の部屋から出てきてリビングに入ってくるところだった。
俺はそっちの方に気がいってしまった。
「あ、神崎川、颯汰と何を話していたの?久々に会えるからって颯汰が昨日から神崎川が来るまでずーっとソワソワしっぱなしだったんだよ!」
俺が颯汰の一連の態度を思い出しながら聞くと、神崎川が相沢君の方を見て軽く睨みながら答えた。
「颯汰は俺に会えて感激のあまり泣き出して……部屋に行っていろいろ話してたんだ。二年ながら部長になったってこの前聞いていたから剣道部の話もいろいろしたかったしさー」
神崎川が颯汰の肩を抱き寄せ、目の縁を真っ赤にしてその中にいる颯汰は嬉しそうに泣き顔を擦りながら照れていた。
本当に弟の颯汰は神崎川のことが大好きなんだから……
大好きって言っても俺とは違う好意だってわかっている。ただの先輩と後輩の仲だってわかってる。それでもあんな風に抱き寄せられてその中にいられる颯汰が羨ましくなって、俺は顔を背けた。そして何てことないような素振りをして半分以上剥けてる豆を見ながら朔田君に声をかけた。
「朔田君、その豆もらってもいいかな?それだけあったら豆ご飯には足りると思うんだ」
「うん、わかった」
結局一人で豆剥きをしている朔田君が手を休めることなく屈託のない笑顔で返事をした。
俺は台所に戻って小さめのボウルを取り出し剥いてくれた豆を朔田君から受け取った。
「じゃあ、俺は台所に戻るね」
逃げるようにリビングを後にしようとしたら、
「俺も台所に行くから。坂口、見張ってろよ」
そう坂口君に訳のわからないことを言い放って、神崎川が俺の後に着いて来てしまった。
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