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第十章
密会の現場
しおりを挟む「おやおや…騎兵師団将官、バヤジット殿ではないですか。この様な夜に如何されましたか?」
「…っ…じ…侍従長殿。貴方こそ…ここで何を…!?」
「私はそこの彼と話していただけですよ」
「……!?」
混乱して立ち尽くすバヤジットへ、タランがわざとらしい敬語で声をかけた。
シアンは無言で目をそらす。
“ シアン…!? ”
そらされたバヤジットがますます動揺する。
「話?と言うのはっ…いったいどのような内容でしょうか」
「ふむ……それは私の口からは申し上げ難いな。彼に聞くのが良いでしょうね」
「くっ…」
タランが話をはぐらかすので、バヤジットはシアンに詰め寄るしかない。
「シアン!お前……」
「……」
「ここで何をしていた……!?」
「──…何も」
「……っ」
「バヤジット様にお伝えする事は何もありません」
「──シアン!」
バヤジットの問いかけを突き放したシアンが、話途中で再び歩き出す。
出口に立つバヤジットの横を素通りして外へ出た。
バヤジットは彼の腕を掴もうと振り返るが、間に合わない。
「待てシアン!」
足早に立ち退くシアンは呼び掛けに応じる気配がない。
彼はいつもバヤジットに対して生意気な態度が目立つが、こうあからさまに無視する事は一度もなかった。
──焦っているのだ
いつも冷静なシアンが
「く、くくく……」
「…ッッ」
階段の下でタランが嘲笑う。
腹立たしげに見下ろしたバヤジットを挑発するように、ゆっくりと顎髭を撫でていた。
「彼はつくづく面白い青年ですね、将官殿」
「……!シアンとはどういうご関係ですか。あいつは、貴方と接点があるような身分では──…」
「おや、将官殿はいったい彼の何をご存知なのか?」
「…っ…なんだと?」
「いえいえ、それより気を付けなさい。顔が可愛らしいからと安易に傍に置いていては…そのうち噛み殺されてしまいますよ?」
「なっ!…違う!俺はそんな理由でシアンを匿っているわけでは…っ」
「冗談。……ただ、あの青年を簡単に信用してはならないという意味です」
「……ッ」
楽しげに話すタランをキッと睨み付けて、バヤジットは声を荒らげる。
「あいつが信用に値するかは俺が決める事です。失礼する!」
そして、シアンの後を追ってしまった。
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