謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く 【R18】

弓月

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第二十章

誓い

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「それが私の生きる意味でもありました」


 シアンの真剣な眼差しが、男の胸を叩く。


「…では、外の侍従に渡して参ります」

 けれどそれについて長く話すつもりはないようで、すぐにシアンは寝所の出口へ向かった。

 器の中の湯が、冷たくなり始める。

 器を左腕でかかえるように持ち直した彼は、あいた右手を取手にかけて、重たい扉を押した。

 その後ろ姿をじっと眺めるアシュラフが

「──…」

 健気で痛ましい彼の想いに、たまらず表情を曇らせる。




──




「やはりお前は……

 誰よりも不自由だ。シアン・ベイオルク」






....




「───!?」


 シアンが扉を押した瞬間

 ちょうど同じタイミングで外から入ろうとした別の男と、正面からぶつかった。



「…っ…何事ですか」

 その拍子に落とした器が床で跳ね返り、中身を周囲にぶちまける。

「合図もせず勝手に戸を開けるなど…」

「シアン・ベイオルク殿!!そうも言っていられぬ事態だ!」

 こぼれた湯のいくらかを浴びた男は侍従のひとりで、濡れた衣を気にとめず大声で喚いた。



「帝国が挙兵し、我が領内に侵攻した!!」


「は…………!?」


「夜のうちに国境を超えたらしい…っ。たった今、伝令が……!」


「帝国が……侵攻……?」



 まさか


 瞠目するシアンが、すぐに言葉を返せず立ち尽くす。


 侍従はなおも叫んだ。



「帝国に引き渡されたタラン様がっ……尋問のすえ、我が国が大量の兵器を隠し持っていると自白したらしいのだ!地下用水路カナートの破壊も火槍シャルク・パトの密造もすべて!陛下の命令によるものと言ったらしい」


「……!」


「帝国は大義名分をかかげて王都に攻め入るつもりだっ……これでは周辺諸国も手が出せない、どうすれば……」


 いまや王宮全体が大混乱なのだろう。騒ぎはここまで響いてくる。


「と、とにかく陛下にはこちらに留まって頂いてっ……議会の決定を待たれよ」


 侍従の男は慌ただしくそう言い残し、緊急招集されている大神殿へと走って行った。


 シアンは、そこへ置き去られた。





 何が……起こっている



 そんな馬鹿なコトが、何故、このタイミングで





「──…何故ですか、ヤン」


 シアンが吐息のような声で呟いた。

 呆然としたまま、背後に振りむくことができなかった。

 帝国の侵攻──。

 現実味があるようで無いようなこの事態に対して、自身がとるべき行動が浮かばない。

 ……違う。本当は

 とるべき行動が明らかだから、思考を放棄するのだろうか。

 巡り、もつれ、矛盾する

 そんな底なしの流砂に沈められたシアンを引き留めたのは

 コツンと、石床を叩いた靴の音──。



「──…お前は知っているか?」


「………!?」



 恐る恐る振り返ると、長い上衣の裾を引きづり、アシュラフが一歩ずつ此方へ進む。






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