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連載
258、対を成すもの
「いいのよシェリル。私に責任があるってことは分かっているわ。もし私とお兄様が例の遺物を奪われてなければ、今頃は彼らの研究ももっと進んでいたはずだもの」
リアナが好奇心を刺激されたのだろう。
思わずオリビアに尋ねる。
「例の遺物って?」
エリスはその場の雰囲気を感じて、リアナをたしなめた。
「リアナ、やめましょう。誰だって言いたくないことぐらいあるわ」
こんな時は、相変わらず対照的な二人である。
エリスの言葉に、オリビアは首を横に振ると話し始める。
「別にいいわ、周りは皆知っている話だもの。私や兄が『鍵』と呼ばれるあの遺物を奪われたことを。名門であるロードファエル家の面汚しだってこともね」
それを聞いて、シェリルがシュンとする。
大きな耳もしょんぼりと頭にペッタリとくっついている。
ライアンも思わず項垂れた。
エリクは、少し厳しい顔になるとオリビアを叱る。
「オリビア、自分をそんな風に言うのはやめなさい。少なくとも、ここにいる皆は誰もそんなことを思ってはいない。今の言葉は、死力を尽くして戦った貴方の兄君と、亡くなった騎士たちを軽んじるだけではありません。貴方を友だと思っている、シェリルやライアンへの侮辱ですよ」
「エリク先輩……」
普段は柔和なエリクの厳しい表情にオリビアは、シェリルとライアンを見つめる。
「……ごめんなさい、私が悪かったわ」
オリビアの言葉にライアンは鼻の頭を掻いた。
シェリルは、猫耳をピコピコと遠慮がちに動かしている。
「へへ、いいってことよ! 俺はよ、そんなこと思ったことねえぜ」
「私もだにゃ。そんなこという奴がいたら、私がぶっとばすにゃ!」
(……私は馬鹿ね。エリク先輩やエイジが言う通りだわ、もう私には新しい仲間がこんなに傍にいたのに。いつまでも意地を張って)
誇り高い名家に生まれた少女は、『仲間だろう?』と言って笑った少年の笑顔を思い出した。
昔は兄の同じ言葉に反発をした振りをして、もっと素直にそう思えたのだから。
オリビアは微笑むと、遺物のことを話し始める。
「ルイーナには『封印』と呼ばれる遺物が存在するの。いいえ、正確には存在すると言われているわ」
妙な言い回しにリアナが首を傾げた。
「『封印』? それに、存在すると言われているってどういうこと?」
その問いにオリビアは頷くと続ける。
「『封印』と呼ばれる遺物がどんな形をした物なのか、そして何処にあるのかは、ごく一部の人間しか知らない。ただ伝承によるとその『封印』の力が解き放たれたとき、本当のルイーナの力が蘇ると言われているそうよ。超古代文明、ローゼディアの都がね」
「本当のルイーナの力? ローゼディアの都……」
リアナは呆然とオリビアの台詞を繰り返す。
ローゼディア、ゴンドラの中でフローラからも聞いた古代文明の名だ。
オリビアは頷くと。
「だから、『封印』の在りかを知りたがる者は多い。それが一体どんなものなのかもね。調査団の中でも、知っているのは陛下からの信頼の厚いファルトラース子爵だけだと言われているわ」
エイジは不思議そうにオリビアに尋ねた。
「だけどオリビア。奪われたっていうのは、違う遺物なんだよな。ならその『封印』っていう遺物は無事なんだろう?」
「エイジ、貴方の言っていることは正しい。でも間違ってるとも言えるわ」
美しい女騎士の禅問答のような答えに、エイジは首を捻る。
「正しくて間違ってる。どういうことだよ?」
ロードファエルの血を引く少女は、エイジを見つめながら静かに口を開いた。
「その遺物は、二つあって初めて意味を成すからよ。本来は『封印』と『鍵』は一つのものだったそうよ。それが二つに分けられた。いつかまたその二つが一つになるとき、ローゼディアの都が蘇る。研究者たちの間では、まことしやかにそう言われているわ」
「二つで一つ……か」
(つまりその片方が奪われたっていうことは、文字通り封印を解くカギを奪われたってことか)
とエイジは思った。
そして、一体誰がとも。
オリビアはそこまで話して唇を噛む。
「半年前、私と兄は王国の学術機関と一緒に、新しく発見された遺跡の発掘調査の護衛任務を務めていた。フェロルクではなく、遠く離れた別の場所に作られた古代遺跡よ。その奥に厳重に保管されていた遺物があったの。それは私たちには護衛の騎士には只の箱に見えたけれど、研究者たちはその箱に描かれた文字を調べて言ったわ。『この中にあるものこそ、『封印』と対を成す遺物、『鍵』と呼ばれる存在ではないか』と」
「でもフェロルクとは遠く離れた場所にあったって、元々二つで一つのモノなんだろ? なんでそんな場所に」
エイジの問いにオリビアは答えた。
「分からないわ。でも、結局それを収めた箱を空けられる研究者はいなかった。兄はまずは都に持って帰り、陛下の指示を仰ぐことにしたわ。そして、その道中に私たちは襲われてその箱を奪われたの」
リアナが好奇心を刺激されたのだろう。
思わずオリビアに尋ねる。
「例の遺物って?」
エリスはその場の雰囲気を感じて、リアナをたしなめた。
「リアナ、やめましょう。誰だって言いたくないことぐらいあるわ」
こんな時は、相変わらず対照的な二人である。
エリスの言葉に、オリビアは首を横に振ると話し始める。
「別にいいわ、周りは皆知っている話だもの。私や兄が『鍵』と呼ばれるあの遺物を奪われたことを。名門であるロードファエル家の面汚しだってこともね」
それを聞いて、シェリルがシュンとする。
大きな耳もしょんぼりと頭にペッタリとくっついている。
ライアンも思わず項垂れた。
エリクは、少し厳しい顔になるとオリビアを叱る。
「オリビア、自分をそんな風に言うのはやめなさい。少なくとも、ここにいる皆は誰もそんなことを思ってはいない。今の言葉は、死力を尽くして戦った貴方の兄君と、亡くなった騎士たちを軽んじるだけではありません。貴方を友だと思っている、シェリルやライアンへの侮辱ですよ」
「エリク先輩……」
普段は柔和なエリクの厳しい表情にオリビアは、シェリルとライアンを見つめる。
「……ごめんなさい、私が悪かったわ」
オリビアの言葉にライアンは鼻の頭を掻いた。
シェリルは、猫耳をピコピコと遠慮がちに動かしている。
「へへ、いいってことよ! 俺はよ、そんなこと思ったことねえぜ」
「私もだにゃ。そんなこという奴がいたら、私がぶっとばすにゃ!」
(……私は馬鹿ね。エリク先輩やエイジが言う通りだわ、もう私には新しい仲間がこんなに傍にいたのに。いつまでも意地を張って)
誇り高い名家に生まれた少女は、『仲間だろう?』と言って笑った少年の笑顔を思い出した。
昔は兄の同じ言葉に反発をした振りをして、もっと素直にそう思えたのだから。
オリビアは微笑むと、遺物のことを話し始める。
「ルイーナには『封印』と呼ばれる遺物が存在するの。いいえ、正確には存在すると言われているわ」
妙な言い回しにリアナが首を傾げた。
「『封印』? それに、存在すると言われているってどういうこと?」
その問いにオリビアは頷くと続ける。
「『封印』と呼ばれる遺物がどんな形をした物なのか、そして何処にあるのかは、ごく一部の人間しか知らない。ただ伝承によるとその『封印』の力が解き放たれたとき、本当のルイーナの力が蘇ると言われているそうよ。超古代文明、ローゼディアの都がね」
「本当のルイーナの力? ローゼディアの都……」
リアナは呆然とオリビアの台詞を繰り返す。
ローゼディア、ゴンドラの中でフローラからも聞いた古代文明の名だ。
オリビアは頷くと。
「だから、『封印』の在りかを知りたがる者は多い。それが一体どんなものなのかもね。調査団の中でも、知っているのは陛下からの信頼の厚いファルトラース子爵だけだと言われているわ」
エイジは不思議そうにオリビアに尋ねた。
「だけどオリビア。奪われたっていうのは、違う遺物なんだよな。ならその『封印』っていう遺物は無事なんだろう?」
「エイジ、貴方の言っていることは正しい。でも間違ってるとも言えるわ」
美しい女騎士の禅問答のような答えに、エイジは首を捻る。
「正しくて間違ってる。どういうことだよ?」
ロードファエルの血を引く少女は、エイジを見つめながら静かに口を開いた。
「その遺物は、二つあって初めて意味を成すからよ。本来は『封印』と『鍵』は一つのものだったそうよ。それが二つに分けられた。いつかまたその二つが一つになるとき、ローゼディアの都が蘇る。研究者たちの間では、まことしやかにそう言われているわ」
「二つで一つ……か」
(つまりその片方が奪われたっていうことは、文字通り封印を解くカギを奪われたってことか)
とエイジは思った。
そして、一体誰がとも。
オリビアはそこまで話して唇を噛む。
「半年前、私と兄は王国の学術機関と一緒に、新しく発見された遺跡の発掘調査の護衛任務を務めていた。フェロルクではなく、遠く離れた別の場所に作られた古代遺跡よ。その奥に厳重に保管されていた遺物があったの。それは私たちには護衛の騎士には只の箱に見えたけれど、研究者たちはその箱に描かれた文字を調べて言ったわ。『この中にあるものこそ、『封印』と対を成す遺物、『鍵』と呼ばれる存在ではないか』と」
「でもフェロルクとは遠く離れた場所にあったって、元々二つで一つのモノなんだろ? なんでそんな場所に」
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