122 / 254
連載
277、人を超越する者
しおりを挟む
「ね? エイジ、聞いたでしょ? あの男が、白い竜のことを白王って呼んだのを」
メグのその言葉にエイジは頷いた。
「ああ、聞いた。間違いないな」
「あの男、一体何者なのかしら? ねえ、エイジもしかして……」
エリスの言葉にエイジは、男を観察する。
陛下と呼ばれているところ見ると、恐らくこの時代の王だろう。
映像は先程のシーンで止まっている。
葉に残されたデータが全て再生されたのだろう。
思い当たることがある。
エリスが言いたいことが、エイジにも分かった。
「もしかして、あれがミーナが言っていた悪い王様か!」
エリスは大きく頷いた。
「ええ! 私もそう思ったの!!」
メグが不思議そうに首を傾げる。
「悪い王様?」
メグの問いに、エイジはミーナから聞いた話を伝えた。
コクコクと頷きながらメグはそれを聞いている。
「その話なら私も知っているわ。魔法科学を悪用して、民を苦しめた王。そして、その王を倒した英雄の話。今のルイーナに残る遺跡の伝承ね」
「メグ、その王様については、大いなる記憶に残っているのか?」
エイジの問いに、メグは首を横に振った。
「ううん、太古の記憶は殆ど枯れてしまっているの。特に古代文明であるローゼディアが滅んだときの国王の記憶や情報は、まるで意図的に消されたように消えてるわ。たった一つ残っていたのはこの一枚だけ。枯葉になってる沢山の葉の中に埋もれるように残ってたのを、私が見つけて修復したの」
エリスはそれを聞いて感心した様に言った。
「メグはそんなことも出来るのね!」
「えへへ、ウォータドールフィンの長だけの力なのよ。枯れかけた葉の存在は普通は感じられないんだけど、もし見つけたら修正する。私たちはそう作られてるって、前の長老が」
(へえ、まるでデータの復旧作業だな。やっぱりここは古代文明の中核の一つだったんだな)
巨大なデータベースとそれを管理する生き物の創造。
恐るべき技術力だ。
メグは続けた。
「この枝の葉が完全に消滅して、残った枯れかけた葉を見つけたのは、最近の事なの。それがあの一枚」
「それをメグが修復したって訳だな」
メグは頷いた。
「うん、待っててエイジ。頑張ってもう少し修復してみる! そしたら、もっと何か分かるかもしれないわ。白王のことが分かれば、白王の薔薇を見つけるのに役に立つかもしれないでしょう?」
「本当か? メグ。ありがとう、頼むよ!」
「お願いメグ!」
二人に頼まれて意気込む、メグ。
彼女の虹色の光が強くなっていく。
その時、静止している映像が動いた。
だが先程の画面とは全く違う場面だ。
再生できなかった部分は、恐らくメグの力でも修復が不可能なのだろう。
先程映し出された場面から時間は経過しているが、場所は同じだ。
但し、白く巨大な竜はもういない。
先程、あの男を陛下と呼んでいた白衣の老人が、白王がいなくなった空洞の前に立っている。
その手には剣の鞘のようなものが見える。
そして、その傍には一本の剣を手にしたあの男がいた。
「くくく、ローセバス。これが白王の力か? 感じるぞ、人間を超える存在になりつつある自分をな」
「はっ! 陛下。ですがその剣は鍵に過ぎませぬ。封印を解くために作られたこの鞘にそれをおさめし時、真の力を発揮することとなるでしょう」
ローセバスと呼ばれた白衣の老人は、そう語って恭しく礼をすると手にした鞘を男に手渡した。
男はそれを受け取ると、静かに剣を鞘に治める。
細身の長剣に見えた先程の剣は、鞘と融合して一本の大剣となっていく。
その剣から溢れる光が、男を人ではない何かに変えていく。
老人はそれをみて歓喜の声を上げた。
「おお! 何というすさまじい力……人を、いや精霊共さえも超越した存在」
老人は大きく揺れる研究施設の中で、何かを測定する装置を眺めている。
一瞬、男を包む光が凄まじい勢いで膨張したかと思った瞬間、今度は収縮して一点に集まる。
まるで小さなビッグバンが起き、直後その力を一点に集めた特異点誕生したかのようなその様子。
その中央には一人の男がいた。
男の輪郭は揺れ、肉体を超越した存在へと昇華していった。
ゆっくりと老人に歩み寄る男の口元は、邪悪な笑みが浮かんでいた。
「くくく、ふははは! 感じるぞ、これこそが究極の力……この俺こそが地上の神。全ての生きとし生ける者よ、神である我を崇めよ!!」
メグのその言葉にエイジは頷いた。
「ああ、聞いた。間違いないな」
「あの男、一体何者なのかしら? ねえ、エイジもしかして……」
エリスの言葉にエイジは、男を観察する。
陛下と呼ばれているところ見ると、恐らくこの時代の王だろう。
映像は先程のシーンで止まっている。
葉に残されたデータが全て再生されたのだろう。
思い当たることがある。
エリスが言いたいことが、エイジにも分かった。
「もしかして、あれがミーナが言っていた悪い王様か!」
エリスは大きく頷いた。
「ええ! 私もそう思ったの!!」
メグが不思議そうに首を傾げる。
「悪い王様?」
メグの問いに、エイジはミーナから聞いた話を伝えた。
コクコクと頷きながらメグはそれを聞いている。
「その話なら私も知っているわ。魔法科学を悪用して、民を苦しめた王。そして、その王を倒した英雄の話。今のルイーナに残る遺跡の伝承ね」
「メグ、その王様については、大いなる記憶に残っているのか?」
エイジの問いに、メグは首を横に振った。
「ううん、太古の記憶は殆ど枯れてしまっているの。特に古代文明であるローゼディアが滅んだときの国王の記憶や情報は、まるで意図的に消されたように消えてるわ。たった一つ残っていたのはこの一枚だけ。枯葉になってる沢山の葉の中に埋もれるように残ってたのを、私が見つけて修復したの」
エリスはそれを聞いて感心した様に言った。
「メグはそんなことも出来るのね!」
「えへへ、ウォータドールフィンの長だけの力なのよ。枯れかけた葉の存在は普通は感じられないんだけど、もし見つけたら修正する。私たちはそう作られてるって、前の長老が」
(へえ、まるでデータの復旧作業だな。やっぱりここは古代文明の中核の一つだったんだな)
巨大なデータベースとそれを管理する生き物の創造。
恐るべき技術力だ。
メグは続けた。
「この枝の葉が完全に消滅して、残った枯れかけた葉を見つけたのは、最近の事なの。それがあの一枚」
「それをメグが修復したって訳だな」
メグは頷いた。
「うん、待っててエイジ。頑張ってもう少し修復してみる! そしたら、もっと何か分かるかもしれないわ。白王のことが分かれば、白王の薔薇を見つけるのに役に立つかもしれないでしょう?」
「本当か? メグ。ありがとう、頼むよ!」
「お願いメグ!」
二人に頼まれて意気込む、メグ。
彼女の虹色の光が強くなっていく。
その時、静止している映像が動いた。
だが先程の画面とは全く違う場面だ。
再生できなかった部分は、恐らくメグの力でも修復が不可能なのだろう。
先程映し出された場面から時間は経過しているが、場所は同じだ。
但し、白く巨大な竜はもういない。
先程、あの男を陛下と呼んでいた白衣の老人が、白王がいなくなった空洞の前に立っている。
その手には剣の鞘のようなものが見える。
そして、その傍には一本の剣を手にしたあの男がいた。
「くくく、ローセバス。これが白王の力か? 感じるぞ、人間を超える存在になりつつある自分をな」
「はっ! 陛下。ですがその剣は鍵に過ぎませぬ。封印を解くために作られたこの鞘にそれをおさめし時、真の力を発揮することとなるでしょう」
ローセバスと呼ばれた白衣の老人は、そう語って恭しく礼をすると手にした鞘を男に手渡した。
男はそれを受け取ると、静かに剣を鞘に治める。
細身の長剣に見えた先程の剣は、鞘と融合して一本の大剣となっていく。
その剣から溢れる光が、男を人ではない何かに変えていく。
老人はそれをみて歓喜の声を上げた。
「おお! 何というすさまじい力……人を、いや精霊共さえも超越した存在」
老人は大きく揺れる研究施設の中で、何かを測定する装置を眺めている。
一瞬、男を包む光が凄まじい勢いで膨張したかと思った瞬間、今度は収縮して一点に集まる。
まるで小さなビッグバンが起き、直後その力を一点に集めた特異点誕生したかのようなその様子。
その中央には一人の男がいた。
男の輪郭は揺れ、肉体を超越した存在へと昇華していった。
ゆっくりと老人に歩み寄る男の口元は、邪悪な笑みが浮かんでいた。
「くくく、ふははは! 感じるぞ、これこそが究極の力……この俺こそが地上の神。全ての生きとし生ける者よ、神である我を崇めよ!!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。