文字の大きさ
大
中
小
143 / 254
連載
298、二つの力
「おぉおおおおおお!!」
「死ねぇええい!!」
凄まじい闘気に、迷宮の中の空気が震えている。
聖堂の中でのデュランとラエサルとの激突。
それさえも超える程の戦いが今、雌雄を決する時を迎えていた。
エリスは、右手の腕輪を握りしめて必死に祈り続ける。
(エイジ! お父様、お母さん、エイジを守って!!)
エリスの腕輪に浮かび上がる獅子の紋章。
そこからは、強い光が放たれている。
それに反応するかのように、エイジの大剣の紋章も輝きを増す。
ぶつかり合う剣と剣。
「うぉおおおおおお!!」
強烈な闘気が大剣を覆っていく。
時魔術の力で加速した大剣が、勢い良く振り抜かれた!
「馬鹿な! 何だこの力は!!」
ラエサルの手から弾き飛ばされた漆黒の剣が宙を舞う。
黒い瘴気がラエサルの体からあふれ出し、その剣を追っていくのをエイジの黄金の瞳は捉えた。
凄まじい悪意の塊。
常人ならばそれを感じただけで、身動きが取れないであろう。
悪魔とも呼ぶべき何かの叫びが、辺りに木霊した。
それは魔剣の中に巣くう何かだ。
黒い瘴気は剣からも溢れ、無数の漆黒の蛇の頭となりてエイジの頭上から襲い掛かあるべく身構える。
ミイムがエイジの肩の上にとまる。
勇気を振り絞ったのだろう、両手をしっかりと握りしめてエイジに言った。
『ミイムも戦うです! エイジとリイムと一緒に戦うです!!』
溶け合うエイジの闘気とミイムの姿。
エイジは振り抜いた大剣を左手一本に預けると、右手でロイが息子の為に鍛えた剣の柄を握った。
極限まで高められた集中力、そして闘気。
『ああ、ミイム、リイム、俺に力を貸してくれ!!』
青く輝く大剣、そして赤く輝く右手の剣。
青と赤の二刀。
少年の左右の手が握る、二刀の剣が振り抜かれるその速さ。
それは、もはや神域と言っていいだろう。
「うぉおおおおお!! バニシングクロス!!!」
それぞれの剣が放った絶技ともいうべき一閃が、襲い掛かる黒い蛇の鎌首を全て刎ね飛ばすと、瘴気の本体に激突し十字を描く。
相反する属性の精霊剣が放つ衝撃波。
それが恐るべき速度で激突し合い、そこにあるものを全てを消滅させていく。
魔剣は砕け散り、そこに巣くう黒い瘴気ですら吸い込まれていくのが見えた。
「あり得ん、この俺をただの人間ごときが! うぉおおおおお!!」
人ならざる者の断末魔が、辺りに響き渡った。
魔剣に巣くうモノは、最後に己の主の名を叫んだ。
「アンリーゼ様ぁあああああ!!」
二人の精霊と、二刀の剣に導かれるようにして放った技。
強烈な光を放つ十字が、その声すらも飲み込んでいく。
その名を聞いて呆然と立ち尽くすエイジ。
(アンリーゼ……アンリーゼ・リア・エルゼスト。ラエサルさんが言っていた『殺せずの聖女』の事か)
いや、今はそれよりも、とエイジは思う。
エイジは、フラフラとよろめくラエサルの体を抱き留めた。
「ラエサルさん!!」
精悍な顔に笑みを浮かべて、エイジに身を預けるSランク最強の冒険者。
「……エイジ、強くなったな。見事だ」
エイジは首を横に振った。
「いつものラエサルさんだったら、きっと俺は勝てなかった」
あの夜のことを思い出す。
まだ脳裏に焼き付いている、ラエサルの鮮やかな身のこなし。
先程戦ったのは、あの時の男でありそうではない。
エイジにはそう思えたのだ。
少年のその言葉を聞いて、ラエサルは思った。
(俺は見誤っていた。こいつは強い、俺が思っていたよりも遥かに……)
エイジは、自分たちの後ろに立っている少女の気配に気が付いて振り返る。
アンジェだ。
普段の少し生意気な様子は影をひそめ、その目には溢れるほどの涙が浮かんでいる。
ラエサルはアンジェの頭を優しく撫でた。
一気に緊張が解けたのか、ラエサルに抱きついてまるで子供のように泣きじゃくるアンジェ。
「お父さん……おかえりなさい」
少女はずっと言いたかった言葉を彼に言った。
ラエサルは、しっかりとその体を抱き締めて答えた。
「ただいま、アンジェ。心配をかけたな」
─────
いつもお読み頂きましてありがとうございます!
雪華慧太です。
この度、本作の第三巻が発売されることになりました。
いつも応援して下さる皆さんのお蔭です!
書籍版は三巻で完結という形になります。
エイジたちにこんな未来があったのかもと思いながら書いた一冊になります。
WEB版とは大きく違う内容になっていますが、自信をもってお届けできる内容に出来たと思います!
書籍版ならではのストーリーをぜひご覧くださいませ。
書籍の出荷日は6月21日となります。
早い所では出荷日の翌日には書店に並ぶと思いますが、地域によっては数日お時間がかかることもあるそうですのでご容赦ください。
書籍の発売に伴いまして『134、激突』~『203、額の宝玉』までが非公開になり、書籍版の三巻が代わりにレンタルとして掲載されるようになりますのでご注意ください。
もちろんWEB版はこのまま連載を続けていく予定ですので、エイジたち共々これからもどうぞよろしくお願いします!
「死ねぇええい!!」
凄まじい闘気に、迷宮の中の空気が震えている。
聖堂の中でのデュランとラエサルとの激突。
それさえも超える程の戦いが今、雌雄を決する時を迎えていた。
エリスは、右手の腕輪を握りしめて必死に祈り続ける。
(エイジ! お父様、お母さん、エイジを守って!!)
エリスの腕輪に浮かび上がる獅子の紋章。
そこからは、強い光が放たれている。
それに反応するかのように、エイジの大剣の紋章も輝きを増す。
ぶつかり合う剣と剣。
「うぉおおおおおお!!」
強烈な闘気が大剣を覆っていく。
時魔術の力で加速した大剣が、勢い良く振り抜かれた!
「馬鹿な! 何だこの力は!!」
ラエサルの手から弾き飛ばされた漆黒の剣が宙を舞う。
黒い瘴気がラエサルの体からあふれ出し、その剣を追っていくのをエイジの黄金の瞳は捉えた。
凄まじい悪意の塊。
常人ならばそれを感じただけで、身動きが取れないであろう。
悪魔とも呼ぶべき何かの叫びが、辺りに木霊した。
それは魔剣の中に巣くう何かだ。
黒い瘴気は剣からも溢れ、無数の漆黒の蛇の頭となりてエイジの頭上から襲い掛かあるべく身構える。
ミイムがエイジの肩の上にとまる。
勇気を振り絞ったのだろう、両手をしっかりと握りしめてエイジに言った。
『ミイムも戦うです! エイジとリイムと一緒に戦うです!!』
溶け合うエイジの闘気とミイムの姿。
エイジは振り抜いた大剣を左手一本に預けると、右手でロイが息子の為に鍛えた剣の柄を握った。
極限まで高められた集中力、そして闘気。
『ああ、ミイム、リイム、俺に力を貸してくれ!!』
青く輝く大剣、そして赤く輝く右手の剣。
青と赤の二刀。
少年の左右の手が握る、二刀の剣が振り抜かれるその速さ。
それは、もはや神域と言っていいだろう。
「うぉおおおおお!! バニシングクロス!!!」
それぞれの剣が放った絶技ともいうべき一閃が、襲い掛かる黒い蛇の鎌首を全て刎ね飛ばすと、瘴気の本体に激突し十字を描く。
相反する属性の精霊剣が放つ衝撃波。
それが恐るべき速度で激突し合い、そこにあるものを全てを消滅させていく。
魔剣は砕け散り、そこに巣くう黒い瘴気ですら吸い込まれていくのが見えた。
「あり得ん、この俺をただの人間ごときが! うぉおおおおお!!」
人ならざる者の断末魔が、辺りに響き渡った。
魔剣に巣くうモノは、最後に己の主の名を叫んだ。
「アンリーゼ様ぁあああああ!!」
二人の精霊と、二刀の剣に導かれるようにして放った技。
強烈な光を放つ十字が、その声すらも飲み込んでいく。
その名を聞いて呆然と立ち尽くすエイジ。
(アンリーゼ……アンリーゼ・リア・エルゼスト。ラエサルさんが言っていた『殺せずの聖女』の事か)
いや、今はそれよりも、とエイジは思う。
エイジは、フラフラとよろめくラエサルの体を抱き留めた。
「ラエサルさん!!」
精悍な顔に笑みを浮かべて、エイジに身を預けるSランク最強の冒険者。
「……エイジ、強くなったな。見事だ」
エイジは首を横に振った。
「いつものラエサルさんだったら、きっと俺は勝てなかった」
あの夜のことを思い出す。
まだ脳裏に焼き付いている、ラエサルの鮮やかな身のこなし。
先程戦ったのは、あの時の男でありそうではない。
エイジにはそう思えたのだ。
少年のその言葉を聞いて、ラエサルは思った。
(俺は見誤っていた。こいつは強い、俺が思っていたよりも遥かに……)
エイジは、自分たちの後ろに立っている少女の気配に気が付いて振り返る。
アンジェだ。
普段の少し生意気な様子は影をひそめ、その目には溢れるほどの涙が浮かんでいる。
ラエサルはアンジェの頭を優しく撫でた。
一気に緊張が解けたのか、ラエサルに抱きついてまるで子供のように泣きじゃくるアンジェ。
「お父さん……おかえりなさい」
少女はずっと言いたかった言葉を彼に言った。
ラエサルは、しっかりとその体を抱き締めて答えた。
「ただいま、アンジェ。心配をかけたな」
─────
いつもお読み頂きましてありがとうございます!
雪華慧太です。
この度、本作の第三巻が発売されることになりました。
いつも応援して下さる皆さんのお蔭です!
書籍版は三巻で完結という形になります。
エイジたちにこんな未来があったのかもと思いながら書いた一冊になります。
WEB版とは大きく違う内容になっていますが、自信をもってお届けできる内容に出来たと思います!
書籍版ならではのストーリーをぜひご覧くださいませ。
書籍の出荷日は6月21日となります。
早い所では出荷日の翌日には書店に並ぶと思いますが、地域によっては数日お時間がかかることもあるそうですのでご容赦ください。
書籍の発売に伴いまして『134、激突』~『203、額の宝玉』までが非公開になり、書籍版の三巻が代わりにレンタルとして掲載されるようになりますのでご注意ください。
もちろんWEB版はこのまま連載を続けていく予定ですので、エイジたち共々これからもどうぞよろしくお願いします!
感想 665
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜
昼寝部 2XXX年、X月。
俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。
そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。
その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。
俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。
これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisanバーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
異世界にクラス転移したので俺はスローライフを満喫する事にしようかな
美鈴ホットランキング一位本当にありがとうございます!
【※毎日18時更新中】
タイトル通り異世界に行った主人公が異世界でスローライフを満喫…。出来たらいいなというお話です!
間が空いてしまったので書き直しました。もう一度この物語を少しでも楽しんでいただければと思います。
※カクヨム様にも投稿しております
※イラストはAIアートイラストを使用
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!