成長チートになったので、生産職も極めます!

雪華慧太

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300、エリス

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「ああ、エイジ。俺もお前に話さなければならいないことがある」

 真剣な表情で向き合っているラエサルとエイジを見て、アンジェが少しだけ不安そうに二人を見つめている。

「ラエサル、エイジ、もう戦ったりしないわよね?」

 それを聞いて、エイジもラエサルも苦笑した。

「当たり前だろう? アンジェ」

「ああ、心配するな」

 ラエサルはそう言うと、エイジの傍に立つエリスを見つめる。
 そしてエイジに尋ねた。

「お前はもう知っているんだな?」

 一瞬戸惑ったものの、すぐにエイジはラエサルが言っていることの意味を理解した。

(エリスのことだな、エリスが王女だってことラエサルさんも知っているみたいだった)

「ええ、エリスのことは昨日知ったんだ」

「そうか、ここにいる者達は皆知っているのか?」

 エイジは首を横に振った。

「アンジェとリアナ、それにエリクさんは知ってる。でも他の皆はまだ」

 オリビアは訝し気にエイジに尋ねた。

「どういうこと? エイジ」

 エイジはエリスを見つめる。
 エリスはそっと頷くと。

「構わないわエイジ。ここにいる皆には隠し事はしたくない、お互いに命を預けることが出来る仲間だもの」

 エリスの言葉に、リアナやアンジェも同意した。

「そうね、私も賛成よ」

「ええ、最初はいけ好かない女だと思ったけど、実際に一緒に戦ってみたら信頼できる奴だったし」

 エリクも仕方ないですねと頷いた。

「エイジとエリスが決めたことならば、私が反対することではないですね」

 オリビアはその言葉に肩をすくめると──

「何よ改まって、一体何を隠してるっていうの?」

 皆の決意が固まったのを見て、ラエサルはエリスの前に歩み寄る。
 そして、片膝を付いて騎士が如く礼をする。

「王女殿下、先ほどの非礼をお許しください。これからはこのラエサル・バルーディン、この身に代えても殿下をお守りすると誓いましょう」

「ら、ラエサルさん……困るわそんな風に言われたら」

 その姿を見て、ポカンとした顔をするオリビアたち。

「エイジ、どういうこと? 王女殿下って何のことよ……」

「ああ、そうだぜ。王女様が、どこにいるんだ?」

 そう言ってキョロキョロとするライアン。

「馬鹿だにゃライアン、王女様なんてこの国にはいないにゃ。そもそもレオンリート陛下には子供なんていにゃいからにゃ!」

 三人に見つめられたエイジは、頭を掻いた。

「あ、あのさ。信じられないかもしれないけど、エリスはこの国の王女なんだ」

 エイジがハッキリとそう言っても、まだピンとこない様子で顔を見合わせる三人。
 暫くしてようやく事が飲み込めたのか、驚きの声を上げるオリビアたち。

「……本当なの? エイジ」

「ああ、オリビア。間違いない、公表はされてないけど、エリスは確かにレオンリート陛下の娘なんだよ」

「そんな……」

 オリビアはもちろん、ライアンとシェリルはハッとしたようにエイジの前に駆け寄ると一斉に膝を付く。

「王女殿下! 知らぬ事とは言え今までの無礼、どうかお許しください」

「あ、あのエリス……いやエリス殿下! 俺、その知らなかったからよぉ……」

「馬鹿だにゃ、ライアン! それで謝ってるつもりにゃ? 王女殿下、こ、こいつ馬鹿だけどいい奴にゃ! 許してやって欲しいにゃ」

 エリスは自分の前に膝を突く仲間たちを見て、困り果てた顔をする。
 そして一計を案じたかのように、口を開いた。

「いいえ、許すわけにはいきません!」

「お、おいエリス」

 エイジは突然許さないと言い出したエリスに慌てた。
 オリビアたちは、神妙な面持ちで顔を下げ続けている。
 エリスは命じる。

「皆、顔をあげなさい」

「は、はい殿下!」

「で、でもよ」

「いいからあげるにゃ!」

 自分を見る仲間たちの視線に、エリスは微笑んだ。

「そんなよそよそしい態度許せないわ。ねえ、ライアン、オリビア、シェリル、私たちここまで一緒にやってきた仲間でしょう? 今までと同じようにして頂戴。そうしてくれないと許さないわよ!」

 そう言って皆を睨むエリスを見て、顔を見合わせる三人。
 ラエサルがそれを眺めながら肩をすくめた。

「そうするか。俺もこんな風に、誰かに頭を下げるのは性に合わねえ。さっきのは、この国の平和を願って死んでいった友の代わりにしたまでだ。俺はそいつに約束した。エリス、お前を守り抜くとな」

 首を傾げるエリスを眺めながらラエサルは、聖堂の中で息を引き取った友の顔を思い出していた。

(ロラン、安心しろ。お前が守りたかった薔薇は俺が守り抜く。この命に代えてもな)

 ラエサルの態度に、ライアンやシェリルも頷いた。

「エリスがそう言うんだから、いいよな!」

「そうにゃ! エリス殿下なんて呼ぶのは肩がこるにゃ」

 オリビアは複雑な面持ちだ。
 国王に間近で仕える、ロードファエル家の一員だからだろう。
 だが王女自身が望むのであれば、そうするべきだろうとオリビアは思う。

(そう、だから白王の薔薇を。エイジ程の腕の人間が傍にいたら、娘ならそう願うのは当然よね)

 オリビアは暫く考え込むと、決意した様に口を開いた。

「分かりましたエリス殿下……いいえ、エリス。その代わり貴方に一つ尋ねたいことがあるの」
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