成長チートになったので、生産職も極めます!

雪華慧太

文字の大きさ
150 / 254
連載

305、秘められた力

しおりを挟む
『ねえエイジ。オリビアの事だけど何とかなるかもしれないわよ?』

 リイムの言葉に、エイジは思わず身を乗り出す。

『リイム、何か方法があるのか?』

 しょげかえるオリビアの姿を見ると、エイジもライアンたちと同じ気持になる。

(強くなりたいって言う気持ちは、俺にもよく分かるからな)

 思わず顔を寄せるエイジに、リイムは腰に手を当てて胸を張る。

『ふふ~ん、知りたい?』

 悪戯っぽく笑う小さな精霊。
 リイムらしい姿だが、ミイムはぷぅっと膨れて跳びはねる。

『リイム意地悪です、早く教えてです!』

 エイジは苦笑した。
 それはエイジの為というよりは、ミイム自身が知りたいからなのだろう。
 無邪気なミイムに、少し和むエイジ。

『仕方ないわね。ねえ、エイジ考えてみてよ。エイジはもう上級剣士になってるじゃない、それはどうして?』

 改めてリイムに問われて、エイジは少し考えると答えた。

『ああ、それは俺が時の女神の加護を持ってるからさ。リイムたちにも話ただろ?』

『ええ、この世界の神の許しがなくても転職できる程の神の加護。第一こんな場所で転職できるなんて、普通の聖職者だってそこまでの力は持ってないもの』

 リイムの言葉にエイジは首を傾げる。

『リイム、つまりどういうことだ?』

『もう! エイジったら鈍いんだから。つまりね、それ程の女神の加護の持ち主なら、オリビアたちを転職させるなんて簡単に出来るはすじゃない? ってこと。普通の神官よりも遥かに力がありそうだもの』

 リイムの言葉を聞いてエイジは暫く、呆然と立ちすくむ。

『お、俺がってことか? いや、どう考えても俺は聖職者なんていうがらじゃないから!』

(リアナならピッタリって気がするけどさ。俺じゃあな)

 煮え切らないエイジに業を煮やしたのか、リイムはプリプリと怒りながら言った。

『やってみなければ分からないでしょ?』

『いや、やってみなければって言われてもさ。やり方も分からないし』

 その時、ミイムが嬉しそうに飛び跳ねる。

『ミイム知ってるです! 精霊使いと一緒に旅をしてる精霊たちから聞いたです』

 リイムも胸を張ってエイジに答える。

『簡単よ! 私たちが教えてあげる』

 どうやら、二人とも仲間から聞いたことがあるようだ。
 人間の世界のことが興味津々だって言ってたからな、とエイジは思う。
 どこかの精霊使いが、教会でクラスチェンジした時のことを仲間から聞いたのだろう。

(本当に大丈夫なのか? 何だか心配だな)

 リイムが神官役、ミイムがクラスチェンジの儀式を受ける相手役になって身振り手振りでエイジに伝える精霊たち。
 まるでそれは小学生が学芸会をやっているようである。
 パーティの一同も、思わずその可愛らしい姿に目がいくようで──

「ねえ、エイジ。リイムとミイムは何をしてるの?」

「あら、これって……」

 エリスとリアナが首を捻りながらも、二人の様子を見て手をポンと叩く。

「これってもしかして、教会でクラスチェンジしているところじゃない?」

「ええ、そうね。中級クラスになるときにこんな儀式をしたもの」

(ああ、そうか。エリスとリアナはついこの間、教会でクラスチェンジしたんだよな)

 エイジは未体験だが、二人は経験者だ。
 リイムとミイムの身振り手振りを込めた説明が終わった後、エイジは二人の頭を撫でてお礼を言うと、皆を見つめる。
 そして照れ臭そうに頭を掻きながら言った。

「あ、あのさ。おかしなことを言ってるって笑わないでくれよ。今から、俺がオリビアをクラスチェンジさせてみようかなって思うんだ」

 それを聞いて絶句する一同。
 オリビアは、少し怒ったようにエイジを睨む。

「私は本気なのよ、エイジ。こんな時に変な冗談言わないで! そもそも、教会でもないこんな場所でそんなことが出来るはずもないわ」
 
 だが、エリクは顎に手を当てると考え込んだ。

「いや……確かにありえるかもしれませんね。それは盲点でした。言われてみれば、エイジは実際に教会に行かずとも上級クラスになっている。それ程の加護の持ち主ならばもしかすると」

 それを聞いて、オリビアはエイジを見つめる。

「……本当なの? 本当に出来るの? エイジ」

 強い期待が込められたオリビアの瞳。
 エメラルドグリーンの髪が揺れている。
 美しい女騎士にジッと見つめられて、エイジは少し照れたように笑うと。

「あ、あんまり期待しないでくれよ。もしかしたらって話だからさ」

 そう言ってエイジは咳ばらいをする。

「オリビア、そこにひざまずいてくれるか?」

 その言葉にオリビアは、エイジの前にひざまずいた。
 リイムやミイムに聞いたように、儀式を進めるエイジ。
 そして、最後にオリビアの額に手を当てて尋ねた。

「汝、オリビアは己の中に秘められた力の解放を望むか?」

「はい、エイジ様、心から望みます」

 エイジ様と呼ばれて、思わず顔を赤くするエイジ。

(リイムたちの演技でも、聖職者はそう呼ばれていたからな)

 気を取り直すとエイジはオリビアに言った。

「それでは、我が女神メルティの名において、そなたの力を開放しよう!」

 オリビアはその時、額に置かれたエイジの手が淡く輝くのを見た。
 そして、体が燃え上がるように熱くなる。

「ああ……」

 オリビアの唇から思わず声が漏れる。

(体が熱い、内側から力が目覚める)

 美しい聖騎士の体を淡い光が包み込む。
 オリビアはその時、自分の体が今までにない程の力に満ち溢れていくのを感じていた。
しおりを挟む
感想 665

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。