成長チートになったので、生産職も極めます!

雪華慧太

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209、五本の柱

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「うぉおおおお! 凄え!!」

 思わず、そう叫んでしまう。
 ミーナが言っていたように、そこにはまるで上空から地上を眺めているような光景が広がっていた。
 窓から下を眺めると、そこには街並みが広がっている。

「あれが遺跡都市ルイーナですわ」

「『ルイーナですわ』ってフローラさん……」
 
 おっとりした口調でそう言われて少し気を取り直したが、俺はまだ呆然としていた。
 エリスやリアナも同様だ。

「噂では聞いたことがあったけど、凄いわね」

「ええ、本当に!」

 俺たちは、ようやく自分たちがすでにゴンドラの中に居ることに気が付いた。
 いや、これはゴンドラというよりは……

(巨大なエレベーターだな)

 俺はそう思った。
 ゴンドラはゆっくりと下に向かって動いている。
 驚いている俺を見て、ミーナは尻尾をフリフリすると。

「お空に来たです!」

「あ、ああ。そうだな、ミーナ」

 ミーナが言っていた通りだ。
 俺たちは、少なくても眼下の都市から数百メートルは上空にいる。
 まるで可動式の展望台から街を眺めている気分だ。
 フローラさんが説明してくれる。

「このゴンドラは、ルイーナから伸びる五本の支柱にそって地上まで下りるようになっているんですよ。ほら見てください」

 俺はフローラさんが指さす方を見た。
 そこには、同じような巨大な柱が見える。
 そして、その柱の表面に敷かれたレールのようなものに沿って、幾つかのゴンドラが下降や上昇をしているのが見えた。
 中にいると分からないが、流線型でレールに沿って動いている様子は小さな列車のようにさえ見える。

「凄え……ああなってるのか!」

 遠目に見ると、自分たちが乗っているゴンドラがどんなものなのか一目瞭然だ。
 眼下の遺跡都市から伸びている巨大な柱は、俺たちが下っている柱も合わせて合計で五本。
 柱ごとに、複数のゴンドラが上昇下降を繰り返しているようである。
 
 あまりのスケールに圧倒される。
 アニメや小説の中に出てくる超古代文明の都市に迷い込んだようだ。
 エリスが俺の隣にやってきて、そっと手を握ると言った。

「凄いわ……見て、エイジ。迷宮の中なのに、まるで昼のように明るいもの」

「ああ、凄いなこれは。こんな都市が迷宮の中に作られてるなんて」

 巨大な都市の天井は淡い光を放っており、辺りを照らしている。
 一体誰が作ったのだろうか?
 フェロルクの水道橋を見た時も凄いと思ったが、これは比較にならない。

「凄い! 凄い!!」

 リアナもミーナと手を繋いで、窓から辺りを見渡して声を上げていた。
 ミーナは、リアナを見上げると胸を張って言う。

「古代文明がルイーナを作ったです。三千年以上も前って言われてるです」

 恐らく、遺跡のガイドをしている母親の真似をしているのだろう。
 ちょっと澄ましてそう説明をしてくれるミーナが可愛くて、一緒に乗っている冒険者たちもほっこりとしていた。
 リアナは、それを見てクスクスと笑いながら。

「ふふ、ミーナったら。小さなガイドさんね」

 そう言われてミーナは嬉しそうだ。
 母親のフローラさんに憧れているのだろう。
 モフモフした尻尾を揺らしながら、リアナと一緒に窓の外を眺めている。
 俺はフローラさんに尋ねた。

「三千年以上も前にこんな凄い物を作ったなんて、一体どんな文明だったんですか?」

 俺の疑問にフローラさんは、優雅に尻尾を揺らしながら答えてくれた。

「研究者によって様々な説はありますが、今の魔法とは少し違う魔法科学と呼ばれる技術を持った超高度文明だったと言われています。研究者たちは、その文明のことをローゼディアと呼んでいますわ」

「ローゼディア……」

 俺はそう呟くと、改めて眼下の都市を眺めていた。
 柱や巨大な都市の天井や壁の淡い光。
 余程高度な文明だったのだろうと思わせる。

(三千年も前のものが、こうやって残ってるんだからな)

 迷宮全体がその文明の遺跡だという説があるとフローラさんは言うが、その中でもルイーナは特別らしい。
 朽ちることがない特別な石材でつくられており、まだその技術すらよく分かっていないそうだ。
 このゴンドラを動かしている動力さえも。
 フローラさんの話に聞き入っていると、ミーナが俺のズボンを引っ張る。
 そして、俺に教えて聞かせるように言う。

「今も沢山の人が研究をしてるです。でも謎は多いです!」

 母親の受け売りではあるだろうが、一生懸命俺に伝えたかったのだろう。

「そうか『謎は多い』かミーナ」

「そうです、エイジお兄ちゃん!」

 そう言って得意げに尻尾を立てるミーナ。
 フローラさんはそれを聞いて顔を真っ赤にした。

「もう、ミーナったら。変な口癖まで真似るんだから」

 どうやら、そのセリフはフローラさんの口癖のようだ。
 それだけ分かっていないことも多いと言うことだろう。
 親子のそんな姿に、俺たちは思わず笑顔になる。
 そんな中、俺はあるものに気が付いた。

「……あれは、一体?」
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