65 / 254
連載
220、槍と剣
しおりを挟む
「行くぜ!!」
ライアンが持つ巨大な槍の穂先が、見事というしかない程の速さで振り下ろされていた。
それを見てシェリルが叫ぶ。
「ライアン! やるにゃら、警備隊のメンツにかけても負けるにゃよ!」
渾身の力を込めているのが分かる槍の一撃。
ライアンは勝ち誇る。
目の前の少年が仮に剣を抜いたとしても、今からでは間に合うまい。
例え間に合ったとしても、無理な体勢で大槍の強烈な一撃を受け止めれば、腕を痛めてもう戦えないだろう。
剣を抜くことすら出来なければ、槍を頭上で寸止めしてこちらの勝利だ。
「いずれしても、俺の勝ちだぜ!」
その瞬間、ライアンは目の前の少年の右手がブレるように動くのを見た。
ギィイイインン!
強烈な打撃音と共に、銀色の閃光がライアンの大槍を打ち返した。
シェリルが大きく目を見開いた。
「うそにゃ……なんなのにゃ、あのスピード!」
いつ抜いたのだろうか?
背中に背負っている鞘から抜いた大剣を構える、エイジという名の少年。
シェリルは動揺してジーナの方を振り返る。
(『ゲスト』でないとしても、私たちのサポートのはずにゃ!)
雇うなら精々Bランクの中位だろう。
完全に先手を取ったライアンの大槍を、正面切って打ち返すことなど不可能のはずだ。
だが、目の前の少年が繰り出した剣技は──
「Aランク並みだったにゃ! 何なのにゃあいつ!!」
少なくとも、Bランクならトップクラスの速さだ。
ライアンは思わず距離を取る。
頬に冷たい汗が流れた。
その髪が一房風に乗って飛ばされていく。
「てめえ……」
目の前の少年は、自分の槍を只弾き返しただけではない。
その銀色の閃光はライアンの前髪を僅かに斬り落としていたのだ。
寸止めされたのは自分だ。
もし彼がその気なら、勝負はそこでついていたかもしれない。
(ちっ! そこらへんのお坊ちゃまの軟弱な剣じゃねえ。あの瞳、そして迷いのなさ、死線を超えて来た奴の剣だ……マジで強え)
静かに息を吐く。
そして、視線先に立つ少年を見据えた。
ライアンの目つきが変っていく。
ジーナがそれを見て笑みを浮かべた。
「ようやく本気になったみたいだね。言っただろう? 傷を負うのはどちらになるか分からないってね」
エリクは、楽し気に若者の戦いを眺めている隊長を横目で見ながら、溜め息をつく。
「ライアンの槍の怖さはここからですよ。本当に止めなくてもいいですか? 単純に技量だけじゃない、経験の差がモノをいいますからね」
「ふふ、だからいいんじゃないか。お互いに、いい勉強になるだろうさ」
ライアンの握る槍を薄い闘気が覆っていく。
エイジはそれを見て呟いた。
「闘気纏刃か……」
Bランクでも使える者は稀な技だ。
しかもこの巨大な槍を覆うほどの闘気。
相手にはそれを放つだけの才能があると言うことだ。
ライアンは、野生の獣のように身を低くして構えると答える。
「俺の槍の強さはここからだ。覚悟しな! 迷宮に入る前にその剣、へし折ってやる!!」
ライアンが持つ巨大な槍の穂先が、見事というしかない程の速さで振り下ろされていた。
それを見てシェリルが叫ぶ。
「ライアン! やるにゃら、警備隊のメンツにかけても負けるにゃよ!」
渾身の力を込めているのが分かる槍の一撃。
ライアンは勝ち誇る。
目の前の少年が仮に剣を抜いたとしても、今からでは間に合うまい。
例え間に合ったとしても、無理な体勢で大槍の強烈な一撃を受け止めれば、腕を痛めてもう戦えないだろう。
剣を抜くことすら出来なければ、槍を頭上で寸止めしてこちらの勝利だ。
「いずれしても、俺の勝ちだぜ!」
その瞬間、ライアンは目の前の少年の右手がブレるように動くのを見た。
ギィイイインン!
強烈な打撃音と共に、銀色の閃光がライアンの大槍を打ち返した。
シェリルが大きく目を見開いた。
「うそにゃ……なんなのにゃ、あのスピード!」
いつ抜いたのだろうか?
背中に背負っている鞘から抜いた大剣を構える、エイジという名の少年。
シェリルは動揺してジーナの方を振り返る。
(『ゲスト』でないとしても、私たちのサポートのはずにゃ!)
雇うなら精々Bランクの中位だろう。
完全に先手を取ったライアンの大槍を、正面切って打ち返すことなど不可能のはずだ。
だが、目の前の少年が繰り出した剣技は──
「Aランク並みだったにゃ! 何なのにゃあいつ!!」
少なくとも、Bランクならトップクラスの速さだ。
ライアンは思わず距離を取る。
頬に冷たい汗が流れた。
その髪が一房風に乗って飛ばされていく。
「てめえ……」
目の前の少年は、自分の槍を只弾き返しただけではない。
その銀色の閃光はライアンの前髪を僅かに斬り落としていたのだ。
寸止めされたのは自分だ。
もし彼がその気なら、勝負はそこでついていたかもしれない。
(ちっ! そこらへんのお坊ちゃまの軟弱な剣じゃねえ。あの瞳、そして迷いのなさ、死線を超えて来た奴の剣だ……マジで強え)
静かに息を吐く。
そして、視線先に立つ少年を見据えた。
ライアンの目つきが変っていく。
ジーナがそれを見て笑みを浮かべた。
「ようやく本気になったみたいだね。言っただろう? 傷を負うのはどちらになるか分からないってね」
エリクは、楽し気に若者の戦いを眺めている隊長を横目で見ながら、溜め息をつく。
「ライアンの槍の怖さはここからですよ。本当に止めなくてもいいですか? 単純に技量だけじゃない、経験の差がモノをいいますからね」
「ふふ、だからいいんじゃないか。お互いに、いい勉強になるだろうさ」
ライアンの握る槍を薄い闘気が覆っていく。
エイジはそれを見て呟いた。
「闘気纏刃か……」
Bランクでも使える者は稀な技だ。
しかもこの巨大な槍を覆うほどの闘気。
相手にはそれを放つだけの才能があると言うことだ。
ライアンは、野生の獣のように身を低くして構えると答える。
「俺の槍の強さはここからだ。覚悟しな! 迷宮に入る前にその剣、へし折ってやる!!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。