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雪華慧太

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224、王宮の騎士

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「エイジ、気を付けて。この女の剣は訓練を受けた騎士の剣だわ。それも王宮に仕える程の腕前を持つ者のね」

「王宮に仕える騎士……」

 アンジェは頷く。

「私もラエサルに騎士の剣を少し教わったの。剣を学ぶなら知っておいて損は無いって。この女の剣は、そのお手本みたいなものだわ」

(確かに、ラエサルさんに剣を教えたのは元々レオンさんだ。騎士の戦い方を知っているのは当然だろうな)

 そうエイジは思った。
 そして自分の前に立っている美しい女騎士を見る。
 確かに、寸分の無駄もない美しい構えだ。
 オリビアは静かにエイジを眺めている。

「ライアンもだらしないわね。力任せの戦い方には、限界があるっていつも言っているというのに」

 ジーナは、対峙するエイジとオリビアを眺めながら腰に手を当てた。

「こと対人戦にかけてはオリビアはAランクと言ってもいいからね。何しろあの名門のロードファエル家の血筋だ。騎士としては一流だよ」

 エリクもそれに同意する。

「確かに。オリビアの剣は本来、その為の剣ですからね」

 それを聞いてリアナが驚いた顔をする。

「ロードファエルって、王宮騎士団長のロードファエル伯の!?」

 ジーナは頷いた。

「ああ、オリビアはロードファエル伯の姪さ。元々は王宮に仕える騎士だったんだけどね、まあ色々と事情があるのさ」

 言葉を濁すジーナに、エリスとリアナは首を傾げた。
 貴族の血族が騎士になることは多い。
 だが名門ロードファエル家の出身者ならば、国王に仕える騎士になる道は約束されているようなものだ。

(陛下にお仕えしていた騎士がどうして?)

 リアナは思わずエリスと顔を見合わせる。
 そして、向かい合っているエイジとオリビアを眺めた。
 父親の傍に仕えていた騎士。
 エリスは思わず右手の腕輪を握りしめた。

「エイジ……」

 エイジは大剣を背中の鞘にしまって、いつもの剣を構えている。
 パワー型のライアンではなく、オリビアにはこちらの剣が有利だと考えたからだろう。

(MMOでも、敵によって武器を変えるのは良くあることだからな)
 
 エイジはそう考えながら剣をしっかりと持ち直す。
 先程は咄嗟の二刀が功を奏したが、付け焼刃で使い続けるには危険な相手だ。
 一定の距離を保って対峙する二人。
 言いしれぬ、緊張感が辺りを包んでいく。
 美しい女騎士は、髪を同じ鮮やかなエメラルドグリーンの瞳でエイジを見つめる。

「こないのなら、こちらから行くわよ」

 その瞬間、エイジの頬を銀色の光が掠める。
 アンジェの瞳が辛うじてそれを捉えた。

(速い!!)

 それがオリビアが放った突きだとアンジェが気が付いた時には、エイジはもう目の前には居なかった。
 アンジェを守るが如くオリビアの剣を弾き返して、そのまま間合いを詰めている。
 シェリルが叫んだ。

「やるにゃあいつ! 強いにゃ!!」

 ライアンが槍を肩に担いでニヤリと笑う。

「当たり前だろうが、あいつは俺に勝った男だぜ。オリビアだってそう簡単に勝てる相手じゃねえ」

「ふにゃあ! ライアン、お前どっちの味方にゃ!!」

 凄まじい剣戟が、オリビアとエイジの間に繰り広げられている。
 エイジの剣を弾き返すオリビア。
 その姿は美しい。

「確かに、ライアンとやりあうだけのことはあるわね。でもこれで終わりよ」

(何だ?)

 エイジはオリビアの剣が、次第に強い魔力を帯びて輝いていくを感じた。
 鮮やかに剣を振るう姿。
 その全身は、まるで剣から放たれる白い光に覆われているかのようだ。
 それを見てシェリルが、勝ち誇ったようにライアンに宣言する。

「オリビア、あれを使うつもりにゃ! ライアン、やっぱりオリビアの勝ちだったにゃ!!」
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