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11.大丈夫です

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 …あれから何分、何時間が経ったのでしょう。…いえ本当はヨルト様達が外に行ってからまだ10分も経っていません。それでも言葉に言い表せない程の緊張感が周囲に漂い、握りしめている手に汗が滲みます。


 頭の中を嫌な想像が駆け抜け、緊張に手が震えます。『あの日』に見た光景が脳裏に蘇り、恐怖に声が漏れそうです。『あの時』とは状況が違うと何度自分に言い聞かせようとも手の震えは一向に収まってくれません。


「……あの奥様」


 後ろからの声にハッと意識を戻します。そして後ろを振り向くと皆さんとても不安そうに私を見ています。


「…はいどうされたんですか?」


「…あの…私達はどうすればいいでしょうか?」


 ……そうです。私は1人で何を考えていたのでしょう…。ここに来たのは皆さんを守るため。そして、安心させるために来たのです。それなのにいつまでも私が不安そうにしていれば皆さんも不安になってしまいます。…しっかりしなければ。私はヨルト様の妻なのだからーー。


「…そうですね。とりあえず万が一のためにも皆さん何か武器になりそうな物を手に持っておきましょう」


「…武器ですか?」


「はい。普段使う物でも何でもいいのです」


「で、ですが…」


「そんなの一体何に…」


「不安なのはわかります。ですがいつまでもそれだと疲れてしまうでしょう?何か手に抵抗できる手段となる武器を持つことでまずその不安に負けない気概を持ちましょう」


「…気概」


「そうです!それに皆さんは知っていますよね?ヨルト様の強さを。そして、ローレンさんやランん達の強さを、この屋敷に仕えて下さっている騎士達の強さを。今彼等は必死に私達を守ろうと戦ってくれています。それなのに私達が彼等を信じずに暗い顔をしていてどうするのですか」


 不安な気持ちを押し殺し、皆さんが安心できるように顔を上げ微笑みます。いつまでも恐怖に支配されていてはダメなのです。今、私達を守るために戦ってくれている人達のためにも前を向いていなければ。


「今は皆さんを信じて待ちましょう。大丈夫です。いざとなればいっぱい投げて皆さんを守りますので!安心して下さい!」


 胸を張り、任せろとばかりに胸を叩きます。


「…奥様。…ふふ、はいそうですね」


「…いっぱいですか…それは頼もしいですね…」


「はは…本当にな」


 私の様子に皆さんのお顔も少し明るくなり、それぞれ武器となりそうな物を手に持ちます。そんな彼らに気づかれないようにホッと息を吐き出します。…後はさっき言った通りヨルト様達を信じて待つだけです。


 ですがそれから数分後…



 ドゴンッッッッ!!!

「「「「「ビクッ‼︎」」」」」


「な、何の音ですか!?」


ドゴンッッ!!ドゴンッッ!!


「い、一体何なんだ!!」


「何が起きたの!?」


 ドゴンッッッッ!!!

「「「きゃー!!」」」


「「「うわぁぁぁあ!!」」


 立て続けに何度も爆発音が響きます。そのせいで先程まで落ち着いていた皆さんがパニックになってしまいました。


「っ皆さん!!!落ち着いて下さい!!!闇雲に騒いではいけません!!」


「で、ですが奥様っ!」


「お、音がっ!!」


「落ち着いて下さい!この音の正体がわからない中でいくら慌てようとも無駄です!もしかしたらヨルト様達が何かしたのかもしれませんし今は様子を見ましょう!」


「は、はい…」


「わ、わかりました…」


 …こんな音、『前回』の時は全くしませんでした。一体何の音なんでしょうか?



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