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3.ヨルトside

7.綺麗だ

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「どうかされましたか?」


「い、いや。何でもない」


 流石に君に見惚れていたなどと言うことはできず、咄嗟に顔を逸らすことでその場をやり過ごす。


「…そろそろ私達も帰らなければなりませんね」


「…そうだな」


 もう少しこのまま一緒にいたいが仕方がないな。内心残念に思いながらも立ち上がろうとした時、


「きゃっ」


「っ大丈夫か?」


 少し斜面になっていたためか、彼女が立ち上がろうとした際バランスを崩してしまい咄嗟に手を差し伸べ支える。


「は、はい。ありがとうございますオリオン様」


「ああ。怪我は……ん?オリオン?」


「あっ」


 呼ばれた名前に返事を返してしまったが何故名前を?そう思い彼女の方を見るとしまったと言うように両手で口元を押さえている。


「……もしかしてバレていたか?」


「す、すみません…。お忍びかもしれないと思って知らないふりをしておこうと思っていたんですがつい…」


 な、なんてことだ完璧に変装できたと思っていたんだが…


「……よくわかったな。上手く変装できていると思っていたんだが…」


「初めはわかりませんでしたけど話しているうちになんとなく…。オリオン様は有名な方ですから。よく夜会にもいらしていますよね?その時に、いつも見ていたので」


「そうか……ん?見ていた?」


「え?っあ、いえっ…///え、えーと!オ、オリオン様は皆さんの中心にいらっしゃることが多かったので!そ、それで見かけることが多くてっ」


「そ、そうか///」


 な、なんだ?何故赤くなるのだ?顔を赤くさせながら必死に言葉を紡ぐ彼女の様子に私まで何だか照れてくる。 


 顔が熱い…。こ、こういう時なんと言えばいいのだろう。


「あ、そ、そう言えばまだ私の名前を言っていませんでしたね!すみません。ミーティア男爵家のユユ・ミーティアと言います」


 そう彼女は気を取り直したように言う。…そういえばこの時間まで一緒に話をしていたと言うのにお互い名を名乗っていなかったな。


「…そう言えばそうだったなもう知っているだろうが私も名乗ろう。ヨルト・オリオンだ。私のことはヨルトと呼んでもらって構わない。…その…だから君のこともユユと呼んでもいいだろうか?」


「え?あ、は、はい…」


「っそうか…ありがとうユユ」


「は、はい///えーとヨ、ヨルト様?」


「あ、ああ///」


 お互いの名前呼びに2人して照れてしまう。




「そ、そう言えば少しは元気でましたか?」


「え?」


「お仕事で何かあったんですよね?」


「……あ、ああ!とても元気になったよ!…ここは本当にいい場所だな」


 そう言えばそんな理由で彼女…ユユとここへ来ていたんだった。


「それはよかったです。…この場所は私のお気に入りの場所なんです。この光景を見る度にこの国を守ろうと頑張って下さっている騎士様達にいつも感謝しているんです」


「…え?」


「今、この光景があって私達が平和に過ごすことが出来ているのはヨルト様や騎士様達が魔物の脅威からこの国守って下さっているお陰です。いつも私達を守って下さってありがとうございますヨルト様」


 そう言って頬を少し赤らめたまま私に優しげに微笑む彼女に息を呑む。


 …こんなにも誰かのことを綺麗だと思ったことはあっただろうか?




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