103 / 469
第7章 主人公と皇女の結婚式前
集う古き英雄たちよ
しおりを挟む突然の出来事に目を丸くしていると、クリスティドが呆れたような声で言った。
「フラン嬢……………私達はもう40近いのだから、そういう登場の仕方はやめて頂けないか?」
「んなっ!クリスティド様!挨拶の前にお説教ってなんですか~!久しぶりなのにッ!………って、あーーーー!」
「へ!?」
女は俺を見るなり指を差して叫んだ。黒い瞳がキラキラとしていて、怯む。女はずずい、と近寄ってきた。
「貴方がアミィールちゃんの旦那様!?イケメンじゃない!なんか乙女ゲームに居そう………って、先輩がギャルゲーって言ってたわね!
ハジメマシテ!」
「は、はははい!?」
全てが突然過ぎる。乙女ゲーム、ギャルゲーという単語、日本語、そしてマシンガントーク。頭が混乱してちゃんとした言葉を話せない。
すっかり混乱状態のセオドアを救ったのは、セオドアに抱きしめられていたアミィールだった。
「フラン様………………わたくしの婚約者に近すぎませんか?いくら"聖女"といえど、許しませんよ?」
「アハッ、アミィールちゃん今日もラフェエル様~☆」
「…………………」
てへ、とおちゃらける美女をゴミを見るような視線を送るアミィール様。誰にでも優しいのに、この美女を見る目は本当にブリザードである。………にしても、聖女って……………
「聖女!?」
セオドアは時間差で驚く。"聖女"___いかにも乙女ゲームや少女漫画のヒロインとして見る設定だが、ユートピアの聖女というのは少し違う。サクリファイス大帝国の北に位置するセイレーン皇国には必ず聖女がいて、このユートピアを"聖なる力"で発展させる重要人物である。
その聖女が…………この人!?
セオドアはそこまで考えて再び膝を地面に着けた。
「お、お初にお目にかかります!聖女様!わ、私はアミィール様の婚約者のセオドア・ライド・オーファンです!
挨拶が遅れてすみません!」
慌てて頭を下げる俺に、聖女は『きゃー!イケメンに頭を下げられたー!』と騒ぐ。そんな聖女に、クリスティド国王は窘めるように言葉を紡いだ。
「はしゃいでないで挨拶をしたらどうですか。セオドア殿が頭を上げられないだろう?」
「あ、そうですね!初めまして、私はフラン・ダリ・ジュエルズ・セイレーンです!この世界の聖女なのに、モブでーす!」
そう言っててへぺろ、と一昔前のネタをするフラン様に、閉口せずにはいられなかった。
どことなくノリがアルティア皇妃様に似ている……絶対この人も異世界転生者だ………
そう確信するセオドアをよそに、アミィールは言う。
「フラン様、珍しいですね。貴方が時間通りに来るのは」
「当たり前でしょ~、アミィールちゃんの結婚式なんて感慨深くて。それに、続編のヒロインのヒーローなんて気になるじゃない!」
「あう……………」
顔を近づけられて、萎縮する。
続編…………………これは続編なのか………?
「フラン様、それ以上近づいたら斬り捨てます」
「うわっ、やばやば、アルティア先輩の娘はやりかねない!」
そう言ってやっと離れた、と安堵した所で___後ろから声がした。
「皆さん、お久しぶりですわ」
「わっ!」
思わず声が跳ね上がる。見ると___俺の出身地であるヴァリアース大国のエリアス女王陛下が立っていらした。そして、その隣に。
『やあやあ、遅れてしまったかなあ』
のんびりと話す男___金色の瞳と、額の切り傷以外、ラフェエル皇帝と瓜二つの顔をした、男。
こ、この人は_____!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
71
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる