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第8章 幸せな新婚生活
主人公は心優しい
しおりを挟む先日、正式に皇族なった小僧…………セオドア。食事中に泣こうとしたから少し注意したら泣き始めた。
けれど、悲しみではこのように幸せそうに笑いながら泣かない。
セオドアは涙を流しながらも、たどたどしく言葉を紡ぐ。
「私は、…………とても、とても幸せです………他国の公爵家の子供が、このサクリファイス大帝国で様々なことを学び、こうして愛する人と、愛する新しい家族に囲まれ食事をする……………私は恵まれすぎてます…………ありがとうございます」
「……………セオ様」
そうポロポロ泣きながら言う男は____女々しい。我が娘・アミィールなどは男勝りでこんなことを言わないし、新鮮である。アミィールよりも女らしいではないか。
そう思うラフェエルは、戸惑う。
アミィールのように男勝りなら叱ればいいが、こういう時はどうすればいいのだ…………?
そんなことを考えるラフェエルの顔を見て、隣に座るアルティアはくすくすと笑う。
ラフェエルが戸惑うなんてよっぽどね。………まあ、気持ちはわからんでもないけれど。この子すごくいい子過ぎない?私、アミィールの育て方確実に間違えているよね?こんな可愛らしい事を言うこの子を育てたガーネットさん、凄すぎるわ………………
アルティアはそんなことを思いながら、未だにグズグズと泣くセオドアに優しく笑いかける。
「本当に、セオドアくんはいい子。私達こそ、アミィを選んでくれてありがとう、って言いたいほどよ?
だからつまり、えっと、お互い様!だね!」
「お母様……………貴方はどうしてそういい雰囲気を壊すのですか。
セオ様、泣かないでくださいまし。悪い涙でないと分かっていても、貴方には笑っていて欲しいのです」
「____ッ」
アミィールは軽く母親の言葉をいなしてから、親の前だと言うのにぺろ、とセオドアの涙を舐める。
それだけでセオドアは顔を真っ赤にした。
___本当にこの家族、このユートピアで一番凄い皇族なのか…………?ぜ、全員優しくて厳しくて、甘すぎる………!
セオドアはすっかり引っ込んでしまった涙を放って、口をぱくぱくと動かしながら固まった。
そんなセオドアを他所に、アルティアはラフェエルに話しかけた。
「ね、ラフェー、あの件、やっぱりこの子に任せない?」
「…………あれか。しかし…………」
「私達じゃ無理よ、それに、こんなにいい子ならみんな喜ぶわ」
「……………?」
なんの話をしているのだろう?
赤い顔のまま、セオドアはキョトンとする。そんな可愛らしい娘婿をラフェエルは見てから少し考える。
確かに、…………この男ならやれそうだな。
そう思ったラフェエルは持っていたフォークを置いて、住まいを質した。
「……………セオドア」
「は、はい!」
ラフェエル皇帝様がいつになく真剣な顔をしていらっしゃる。思わず背筋が伸びてしまう。怯えている気持ちを正して、ラフェエル皇帝様のお言葉を聞いた。
「………………お前に任せたい仕事がある」
「………?仕事?」
「…………お父様、セオドア様に危ない事をさせるのはわたくしが許しません」
「わっ」
アミィールは立ち上がってセオドアを抱き締め睨む。しかし、ラフェエルは『そうではない』と言ってから続けた。
「セオドアは、サクリファイス皇族の一員だ。仕事は請け負ってもらう。………それは当然だろう?
だが、この女々しい男に頼みたいのは戦場ではない。
_____孤児院の件だ」
「…………?孤児院?」
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