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第8章 幸せな新婚生活

それぞれの役割

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 皇族専用の食堂にて。



 「_____アミィ、呼ばれた意味はわかるな」


 「はい、お父様」



 ラフェエルはアミィールを鋭い目付きで見つめる。アミィールはそう返事してから目を閉じる。一門一句聞き逃さない為だ。

 ラフェエルもそれを知っているから言及せず、続ける。




 「今度はグレンズス魔法公国の北東の小さな国だ。そこの領主が兵士を使い国民を苦しめている。

 先に先行しているサクリファイスの兵士が何人かやられている。腕の立つ者が多いようだ。


 _____いけるか?」




 ラフェエルの声が少し暗い。
 …………お父様が行くほどでは無い案件ではあるけれど、リーブだけでは心許ないということね。



 その考えに至り、アミィールは静かに言う。


 「……………わかりました。転移魔法の使用を許可くださいまし」


 転移魔法の許可___本来、転移魔法は勝手に使ってはならないのだ。神々やアルティア、ダーインスレイヴなどはしょっちゅう使うものの、基本的には禁魔法という扱いだ。


 ラフェエルは小さく頷きながら言う。



 「許可しよう。…………ガロを同行させる」


 「ええ、お願い致します。ガロが居ればより早く終わります故」


 そう淡々と答える自分の娘に、眉を顰める。____こう育ててしまったのは間違いだった、とセオドアを見て常々思う自分が居る。


 その思いが過ぎって、ラフェエルは言葉を紡いだ。


 「_____やはり私が行こう」


 「いいえ。お父様は転移魔法を使えません。国を離れるのは宜しくないかと。


 安心してくださいまし。わたくしが必ずや鎮圧しましょう」


 娘は冷静にそう言って退ける。
 …………昔からこうだった。本当は女子らしく育てたかったが、アミィールは賢すぎ、強すぎるが故にそれを良しとしなかった。


 この世界を支配していた龍神の血を受け継ぐ者として。


 この世界を牽引するサクリファイス大帝国の皇族として。


 ………………そのような重責を与えてしまったのは、私とアルティアがこの子を産み落としてしまったからだ。責任感の強い娘は、このユートピアの為に戦うことを選んだのだ。


 その決意を____踏みにじれない。



 そう考えると…………気分が重くなった。
 ラフェエルは静かに言う。


 「_____命令だ、死ぬことはもちろん、怪我をするな」



 「分かっております。___わたくしには、愛する御方がおりますので。


 わたくしの怪我など見たら…………セオドア様が悲しんでしまいます」



 そう言って、アミィールは目を開けた。
 黄金色の瞳を細め、幸せそうに笑う。



 _____いつも冷徹で在ろうとするアミィールがこのような顔をさせている。


 この婚姻は、間違いなく成功だったな。



 ラフェエルはそこまで考えて、ふ、と笑みを浮かべた。








 *  *  *







 「ううん………………………」




 その頃、セオドアは自室でクッションを抱き締めていた。


 孤児院、か……………俺、子供とあまり触れ合ったことないけど、大丈夫かな?教えられることもなければあやすスキルもない。



 「…………なあ、レイ」


 「なんだ?」


 「俺って…………何が出来ると思う?」


 「性処理」
  



 「ッ!」



 レイはセオドアが作った菓子を纏めながらサラッととんでもないことを言う。勿論セオドアは顔を真っ赤にして怒った。




 「ッ、………ふざけてないで教えてくれよ!」


 「お前な、俺は執事だぞ?………仕事を任されたんだったら自分で考えろ」


 「うぐ、…………」



 正論である。先程の決意は何処へやら、という感じだ。これは、俺の仕事なんだから、俺が考えなければ……………



 セオドアはクッションを抱き締めながら厳しい顔を作っている。レイはそれを見てはあ、とまた溜息をついた。



 「……………お前がなんの仕事を任されたまでは知らないけどよ、お前にはお前の武器があるだろ。

 好きなものをやる時のお前はとてつもないぞ。だから、まあ……大丈夫だって。

 ほら、お前の菓子だって職人より美味いじゃないか」





 「菓子…………………それだッ!」



 「うおっ!?」





 セオドアはがば、と立ち上がった。その顔は先程の厳しい顔は何処へやら、目をキラキラさせていた。



 上手くいくかはわからないけど、俺は俺ができることを精一杯やればいいんだ!





 「頑張るぞ!私ならいける!」


 「……………お、おお………とりあえず、ソファで立ち上がるのはやめろ、セオドア」



 急にやる気に満ちたセオドアを見て、これはまた面倒臭いことをやらされるな、と頭を痛めたレイでした。













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