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第10章 新婚旅行は海がいい

2人でいればどこでも楽園

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 「やあ、アミィール嬢、セオドア殿。よく来たね」


 「この度は滞在をお許し頂き、誠にありがとうございます」


 「ありがとうございます、クリスティド国王様」



 俺達は結界壁を暫く見てから、再びアミィール様の転移魔法であっという間にシースクウェア王城・玉座の間に来た。これはいいのか………?と疑問に思ったが、シースクウェア大国の国王陛下であるクリスティド・スフレ・アド・シースクウェア様は驚くことなく歓迎してくれた。



 本当は俺も挨拶をしなければならないのだが、礼を尽くすのでいっぱいいっぱいだった。


 ………………この新婚旅行は、所謂"お忍び"なのである。だから俺達がこの城に居ることを知るのは少数で、部屋への移動も転移魔法を使って、だ。


 俺も使えればアミィール様に頼りきりにならなくてもいいのに…………これじゃアミィール様ばかり魔力を使わせてしまう………




 凹むセオドアをよそに、アミィールとクリスティドは話す。




 「しんこんりょこうなんて、面白い発想だね。初めて聞いたよ」



 「わたくしもです。お母様とセオドア様の博識のおかげでこのような素敵な時間を得られました」


 「ふふ、いいお母様といい皇配様だね」
   

 「ええ。お母様は置いといて、セオドア様はわたくしの尊敬する愛おしい我が君なので」


 「な、…………」



 さらりと言われた褒め言葉に思わず頬を染めてしまう。相手は一国の王でイケメンなのに………そんな人に俺の自慢なんて……………



 あっという間に顔を赤く染め、照れるセオドアを見てクリスティドは声を上げて笑う。


 「はははっ、とても素敵な夫婦だな。君達の愛はラフェエルとアルティア様のようで微笑ましい」   



 「あんな排泄物皇帝と人格破綻皇妃と一緒にしないでくださいませ、国王陛下」
   

 「あ、アミィール様、お口が過ぎます………」


 「いいえ、大事な事なので。わたくし達とあの夫婦を一緒にされるのは甚だ心外ですわ」



 にこやかに毒を吐くアミィール様にはやっぱり慣れる気がしない。なんというか、嫌味とは違う、当たり前って言い方だから妙な説得感が…………いや、家族の悪口はよくないよな………



 いい笑顔で躊躇なく親を貶す女とそれを止めようとする男の有様が面白くて国王陛下はやはりほっこりするのでした。





 *  *  *




 「セオ様、疲れていませんか?」



 「ああ、大丈夫だよ」




 国王陛下との謁見を終わらせ、俺達は滞在する部屋に来た。サクリファイス大帝国の自室には劣るものの水色と藍色を基調としたシンプルな部屋で落ち着く。


 …………というか。



 「私よりもアミィの方が疲れたんじゃないか?転移魔法、連続で使っているから………」


 「ふふ、セオ様はお優しいですね。大丈夫ですよ。わたくしはこれでも逞しいのです」


 そう言ってアミィール様はさらけ出している腕を見せ力こぶを見せるように曲げた。しかし生憎アミィール様の腕は細い。俺を姫抱きしてるようには見えない細さである。 


 そんなことを思っていると、アミィール様は不意に目を伏せた。ほんの少し悲しげ………というか、悔しげな顔をしている。



 それに気づいたセオドアはアミィールを優しく引き寄せ、自分の膝に乗せて頭を撫でる。




 「…………アミィ、どうしたの?やっぱり疲れたのかい?」


 「いいえ。…………せっかく2日も休みがあるのに、この部屋と海、定められた場所しか動けないのは寂しいな、と思いまして。


 セオ様と婚約する前のデートの方が自由だった気がして…………」



 「それは…………」




 その通りだと思った。あの時の俺達は、もっと自由だった。学園では毎日一緒に居たし、1度だけだけどデートもしたし…………愛が深まる度に、会える頻度が少なくなっている気がする。



 それはすごく寂しい。



 けれど。



 「…………アミィ」


 「んっ」



 セオドアは優しくアミィールにキスをする。何度も重ねるだけのキス。

 いつも食らいつくようなキスをするセオドア様には珍しい、触れるだけのキス。でも、何度も何度も重ねてくれる温かくて少し硬い唇も心地いい。


 暫くそうしてから、キスをやめてアミィールを優しく撫でる。



 「確かにそうだけど____私は、アミィとこうしてキスをして、抱き締めているだけで幸せだよ?」




 「…………セオ様………」


 とても優しい言葉。少し寂しそうなのに、それでも優しく微笑んでくれるこの人はそれだけでも幸せを感じられる人なんだ。


 そう思うと、___また、足を絡め取られる。この人の愛に浸かって行く。………この御方を好きになれたわたくしは、本当に恵まれていると思う。


 けれど、………もっと愛に溺れたいから。


 「ねえ、セオ様」


 「なんだい?」


 「………………………せっかくですし、夕食まで愛し合いませんか?」


 「なっ…………、そ、それは………でも、昼間だよ………?」


 「昼間だから、です。………セオ様の裸をよく見えるじゃないですか」


 「___ッ、アミィは恥ずかしさというものがないのか…………?」



 「恥ずかしくありません。


 ………………わたくしの裸を見るのは貴方だけですもの」


 「~ッ!」


 セオ様は顔を赤くしながら、それでもわたくしの後頭部を抑えて唇を奪った。先程とは違う意味で甘いキスをして、二人の時間を楽しんだ。









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