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第13章 主人公と擬似育児

赤ん坊パワー

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 勿論、皇帝夫婦と側近達だけが愛を注いでいる訳ではなく。いやむしろ、愛を1番注いでいるのは俺ではなく、この御方である。



 「セオ様!見てくださいまし!わたくしの手から、ヨウ様がミルクを飲んでいらっしゃいます!」



 そう言って目をキラキラさせて、興奮しているのが____俺の1番愛している御方、アミィール様だ。最初こそ何かをする度に怯え、酷い時は泣いていたが………それでも向き合うのをやめず、一歩一歩距離を縮めた結果、1人でミルクまで飲ませられるようになった優秀な俺の奥さんだ。


 可愛いだろう?ヨウが何かをしたり、させてくれたりするとこうして 無邪気に凛々しい顔を綻ばせるんだ。俺の自慢だ。




 そう得意になっているセオドアはふ、と小さく笑ってヨウとアミィールを撫でる。



 「アミィは凄いね。もうすっかりお母さんみたいだ。

 ヨウもちゃんと飲めるようになって偉いね」



 「あう!」


 「ふふふ、セオ様の御教授のおかげですわ。

 ……………」



 「?」



 不意に、アミィール様の顔から笑みがなくなり、真顔になる。じっ、と胸の中でミルクを飲んでいるヨウを見ていて……つい、声をかけてみた。



 「どうしたんだい?アミィ」



 「セオ様、……………女の身体と言うのは子供を抱いていれば母乳が出るものなのでしょうか」


 「え」



 突然の言葉に流石のセオドアも目を丸くする。それはもう厳しい顔つきで、大真面目だ。もちろんそんなことはできるわけが無い。子供を産まなければ母乳は出ないのだから。


 俺でも知っている常識をまるで知らないと言わんばかりに、アミィール様は言う。



 「ヨウ様を見ていると、胸が熱くなるのです。この小さな命がいじらしく、何かをしてあげたくて………プレゼントはお父様がしていらっしゃいますし、遊びはお母様の方が詳しいですし、お風呂等はセオ様が行っておりますし…………わたくしができるのは、母乳を与えることだけではないでしょうか……………?」



 「…………アミィ………」



 信じられるかい?これを本気でマジで大真面目に言っているんだ、アミィール様は。いつも凛々しくかっこよく、文武両道、頭脳明晰、容姿端麗、才色兼備なサクリファイス大帝国の皇女様がこれを言っているんだ。



 2年以上共に居るけれど、偶にアミィール様は一周まわっておかしなことを言う。ハイスペックチート持ちは全員ズレているのではないか……………?




 「セオ様、少しヨウ様を抱いていてくださいまし。母乳を絞り出して見ます」


 「な、アミィ、それは、無理だ、………って、脱ごうとしないでくれ…………!」


 「?ですが、脱がなければ母乳をあげれませんよ?」



 「ッ、ですから、それは………!」



 「安心してくださいまし。

 母乳が出た暁には、セオ様にも味見してもらいますゆえ」


 「~ッ!」




 母乳が出ないのは勿論だが、こんな明るい部屋の中でアミィール様のお身体なんて見たら俺の息子がまた元気になってしまう…………ただでさえヨウが夜泣きをするから愛し合えていないのだ。夫婦の時間が『ヨウを愛でる時間』になっていて。


 正直に言います。
 とても欲求不満だ。最近ではアミィール様とキスをするだけでも息子が元気になる。もう四日もキス以上のことをしていません。…………そんな中胸なんて見たら、ヨウのことを忘れてその場で襲う可能性さえある。



 セオドアは整った顔を赤らめながら、必死にアミィールに『母乳は子供が出来ないと出ないよ』と教えたのだった。





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