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第15章 主人公と兄
主人公兄の手紙
しおりを挟む「わ」
窓を開けると鳩が胸に飛び込んできた。バタバタと暴れてから、小さな手紙に変わる。『セオへ』と書かれた文字はヴァリアース大国の騎士団兵士長をしている兄のものだ。
セオドアは器用に封を切り、中を見る。
_____
我が弟・セオドアへ
明後日にはそっちにつくから出迎え頼む。
部屋は豪勢なものを頼むぞ。皇配権力でどうにかしてくれ。綺麗な侍女もつけてくれ。
頼んだぞ。
お前の最愛の兄・セフィアより
_______
こう記してある…………って!
「は!?」
文を読んで思わず大声を出した。明後日兄上がサクリファイス大帝国に来る!?そんな話聞いてないぞ!?そしてなんだこの簡素であからさまに要件だけって感じの手紙は!?
1人困惑するセオドアに、アミィールが近づく。
「セオ様、どうなさいました?お顔が優れませんが…………」
「えっと…………兄が、この国に来ると………」
「あ、そのことですか」
「え」
ほ、と安堵の表情を見せるアミィール様。まるで驚いてなくて首を傾げる。
そんなセオドアの様子を見て『お伝えしてませんでしたね』と優しく笑ってセオドアの腰を引き寄せ、ソファに誘う。そして、改めて口を開いた。
「明後日、ヴァリアース大国の騎士団の一部がこの城に来ることになっているのです。
サクリファイス大帝国とヴァリアース大国は浅からぬ縁。有事の際動くのはサクリファイス大帝国ですけれど、大国と呼ばれる国々への鍛錬相手も行おうという初めての試みです。特にヴァリアース大国はより深い縁なので」
「そ、そうなのか?初めて知ったが………そんなにヴァリアース大国とは縁が深いのかい?」
俺がそう聞くと、アミィール様はくすくすと笑った。なぜ笑われているのかわからなくて、やっぱり首を傾げる。
アミィールはそんなセオドアの肩に頭を乗せて、静かに言った。
「ヴァリアース大国は___わたくしの愛する人の故郷ですもの。深い縁でしょう?」
「………ッ!」
そう言われて、顔が熱くなった。そ、そうだった…………俺は元々ヴァリアース生まれヴァリアース育ちだった…………もうすっかり身体にサクリファイス大帝国が馴染んでて忘れてた…………というか、アミィール様サラッと王子みたいな事を言う…………し、心臓が…………
顔を赤らめ胸を抑えるセオドアを、アミィールはやっぱり笑顔で背中を摩った。その優しい手つきに癒されながら、考える。
それは知らなかったけれど、兄上がこの国に来るのか……………お披露目会ぶりだから会うのは久しぶりだな。毎日忙しくて、すっかり帰れていないし……………
そう考えると、懐かしさが溢れてくる。会いたい気持ちも生まれ、会えるという喜びに変わる。
それを見ていたアミィールは頬にそ、と唇を寄せてキスをしてから破顔する。
「…………ふふ、セオ様、嬉しそうですね」
「ああ、兄上に会えるのは嬉しい。
………けれども、この手紙は図々しいと思うんだが」
俺はアミィール様に手紙を見せた。それを読んだアミィール様は口元を抑えて声を漏らして笑った。
「お兄様は本当に面白い御方ですね。
わたくし、明後日までに一番いい部屋を準備しておきますわ」
「そんなことしなくていいさ、兄上のいつもの冗談だから」
「いいえ。わたくしのお兄様でもありますから、しっかりもてなさせて頂きます」
アミィール様はそう言って目を細めて手紙をなぞっている。…………俺は本当に重症なのかもしれない。兄上の手紙を笑顔でなぞっているだけで………胸がムカムカするんだ。
「わ………んっ」
セオドアは未だに手紙をなぞるアミィールを抱き寄せ、唇を重ねた。アミィールは驚いた顔をしていたが、すぐに目を閉じてそれを受けた。
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