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第15章 主人公と兄
不憫主人公
しおりを挟む「…………ということもありましたね」
「ハッハッハッハッ………で?それは……」
「ひっぐ…………」
セフィアが高らかに笑い、レイが今までの事を婚約中のことも含めペラペラと話している中、セフィアの腕から抜け出したセオドアはベッドに引き篭って枕を濡らしていた。勿論羞恥故である。
酷すぎる……………俺の味方はアミィール様しかいない………………アミィール様にも言えないことを全部喋りやがって………これ、アミィール様に聞かれたら俺は死ねる……………子を残すことなく俺は公開処刑され死ぬんだ…………
そう絶望しながら布団に籠るセオドアを見ていたセフィアは笑いすぎ故の咳き込みをしながら言う。
「ヒッ、ヒッ…………お前本当に面白すぎるだろ…………特にうさぎ野郎なところ…………」
「~ッ、うさぎじゃありません!放っておいてください!」
「お?いいのか?俺の妹でもあるアミィール様に告げ口しても」
「俺が悪かったです!ごめんなさい!なので出てってください!」
泣きながらもそれはもう必死に土下座し謝罪するセオドアを見て、セフィアはまた笑う。
「サクリファイス大帝国の人間は簡単に頭を下げないと聞いたが、皇配様はまだまだそれが馴染んでないようだ」
「そ、それとこれとは別です!」
「あー、笑った。なんでもいいけど、楽しんでるじゃん。幸せそうで安心したぞ、セアちゃん」
「せ、セアじゃなくてセオドアです!俺は女じゃありません!」
「どうだかな、レイ、お前はどう思う?」
「男の尊厳がデカい女ですね。どちらかというとアミィール様の方が男らしく凛々しいです」
「うう………ッ!」
それに関しては何も言えないセオドアは黙る。顔はもう目も当てられないくらい赤々としていて、涙と鼻水でグチャグチャである。
「本当に父上に似て泣き虫だなあ。少しは強くなれよセオ」
「ぐずっ…………泣かせようとする兄上なんて………………」
そこまで言っても『嫌い』という言葉を使いたくなくてまた吃るセオドア。それを知ってるふたりはまた笑う。そんな中、レイが笑いながら聞いた。
「で、セフィア兄はこの部屋にセオドアをいじめに来ただけではないですよね?どうしたんですか?」
「ああ、話が脱線したな。何が言いたいかと言うと、俺が滞在中はここに泊まりたいなと思って」
「はあ!?」
セオドアは思わず布団から飛び出す。いやいやいやそれは嫌だ!ここは愛しのアミィール様との愛の巣だ。それをここまで踏み荒らされた上ここに泊まられたら「うさぎが出来ないから嫌か?」…………ッ!
「そ、そそそ、そういうことではなくっ…………ほ、ほかの騎士たちに悪いというかッ…………」
セオドアはあからさまに狼狽える。
ここまでわかりやすい人間がいるか?嘘をつくことまで覚えてないとは………それだけ、セオドアは此処でも大事に育てられたということか。
そう結論づくセフィアだが、譲る気は毛頭ない。
「騎士団長だからな、いい部屋に滞在しなきゃ示しがつかないだろう?皇配様の兄弟に生まれたことを感謝して使わせてもらうぜ」
「それは…………うう………ですが、ここは……」
「兄弟仲良く部屋を分け合おうぜ」
「わ、私は………ッ」
「…………セオドア、諦めろ。セフィア兄がこう言い始めたらてこでも動かないぞ」
レイはにやにやと笑いながらそう言う。それをよく知っている弟のセオドアはやっぱり泣くしかなかった。
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