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第15章 主人公と兄
激昂する主人公
しおりを挟む出た言葉も、込み上げてくる感情も1度吐き出したらとめどなく溢れた。
「なぜっ、何故娘にそのような惨い仕事をさせるのですか!アミィール様は女です!そうでなくとも人殺しなど…………ッ!
ラフェエル皇帝様はアミィール様のお父様でしょう!?なぜっ、そんな風に冷たい言い方ができるのです!?
アミィール様はッ…………!アミィール様は『自分は穢れている』と何度も何度も言って泣いておられたのですよ!?あんなに深く傷ついて…………それでも………!」
「止めなかったとお思いですかッ!」
「!」
俺の言葉に答えたのは、俺が胸倉を掴んでいる義父ではなく____後ろに控えていた側近のリーブだった。リーブは涙を流して震えながらも言葉を重ねた。
「私達だってそんなことをさせたくなかったのです!何度もお止めしました!不敬な事に閉じ込めたことだってあります!
ラフェエル皇帝様は何度も、何度も止めて、それでも____「リーブ、黙れ」……ッ」
ラフェエルはセオドアに胸倉を掴まれながら、リーブの言葉を制した。リーブが黙った代わりに、いつの間にか居たガロが『無理です』と大きな声で言った。
「ラフェエル皇帝………いえ、ラフェーさん。私にも………ガロにも、言わせてください!
アミィール様の気高き悲しすぎるご覚悟を、私達の、大切な『運命が変わったの証』であるアミィール様への愛を…………もう、セオドア様に黙っているのは無理です!
セオドア様!我々は止めたんです!あらゆる手を使って………止めて………それでもこれはアミィール様が選んだ道なのです………ッ!」
「………ッ、しかし!アミィール様は………ッ、止めて欲しいはずなのです!」
そう言ってガロは赤と金の瞳から涙を零した。何を言われているのか俺には理解ができない。好きで人を殺すわけがない。あんなにお優しい御心を持つアミィール様が自ら人を殺す道を選ぶなんて…………悲しすぎるだろ。
セオドアはそこまで考えて涙を流しながら再びラフェエルを睨んだ。ラフェエルは紅い瞳を細めながら、愛する者の為に怒る息子に静かに言った。
「……………アミィールがこのような仕事をするのは全て私が至らなかったからだ。
アミィールは物心がついた頃から自分の身体のことを、龍神の事を調べて、自分でどういう存在なのか理解してしまった。未だ7歳だと言うのに、アイツはたった1人でこの『任務』を始めた。
私達にも隠して………兵士に紛れ、剣を振るったんだ。気づいた頃にはアイツの手はもう………穢れていた。そして、『この世界の秩序を守る為に』という思考が身についてしまった。
ねじ伏せても、閉じ込めても………アイツは自分の道を歩み続けたんだ」
「…………ッ、ああ…………」
ラフェエルの言葉を聞いたセオドアは、ラフェエルの身体に触れながらズルズルとその場に崩れ落ちて、声を上げて泣いた。
____アミィール様、なんで、なんでいつも貴方はこんな辛くて厳しい道を1人で歩もうとするのですか?
_____何故、それを俺にぶつけてくれないんですか?
_____なぜ貴方は……………そんなに強くて悲しい選択を平然と選んでしまうのですか?
俺は____俺の、できることは。
セオドアは緑の瞳から大粒の涙を流しながらも、それでも上を見上げてラフェエルに言う。
「俺が…………ッ、俺がその道を歩みます、俺がアミィール様の代わりにその仕事をします。いくらでもこの手を血に染めます。
だから、だからどうかアミィール様をお止めください!」
「…………っ!」
ラフェエルはそれを聞いた瞬間目を見開いて手を上げようと____「ストップ、ラフェー」
自分に振り上げられた手を止めたのは、義母であるアルティアだった。ラフェエルは自分の妻を睨む。
「………アル、何故ここにいる?」
「騒がしいからよ。何でもかんでも暴力で何かを収めようとしないで。
____セオドアくん」
「……………アルティア皇妃様」
アルティアは未だに両膝をつき涙を流すセオドアの目線を合わせるようにしゃがんだ。
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