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第19章 父親(仮)、奮闘する
皇女はマタニティブルー
しおりを挟む「うれしくてなみだー!」
「よろこんでるー!」
「わらってるねー!」
「あかちゃんあいたーい!」
子供達は再び笑顔になる。俺は、苦しい胸を抑えて、必死に笑った。けど、涙が枯れることなく。
_____俺は、恵まれている。
つくづく思う。こんなに幸せな事が続くものなのか?
いや。違う。
全部、全部俺が積み上げてきた物なんだ。誠心誠意向き合ってきた結果なんだ。これが嬉しくなくて何が嬉しい?
恵まれているんじゃない。俺が引き寄せた『幸せ』なんだ。
この子達とは血は繋がっていない。
だけど。
心は、気持ちは、繋がっているんだ______。
セオドアは一人一人にお礼を言った。
その間も幸せそうに笑って、子供達は嬉しそうに背伸びしてセオドアを撫でていた。
「…………どっちが子供なんだかわからないわね」
アルティアは呆れながらも、それでも笑みを浮かべていた。
* * *
サクリファイス大帝国皇城・執務室
「………………………」
「…………アミィール様。どうかその険しい顔をおやめください。わたくしは生きた心地がしません」
エンダーは淡々とそう言いながらアミィールを見た。アミィールは___とてもイライラしていた。
____今日は、セオドア様と子供達と遊ぶ予定だった。
やっとの思いで掴んだ1日の休み、身重な身体だから家族で居ようとしていた。
なのに。
あの排泄物皇帝が仕事を押し付けてきたのだ。それだけじゃない。人格破綻皇妃がセオドア様を攫っていったのだ。
もちろん抵抗した、直談判もした。
なのに聞いてもらえず、こうしてこの代わり映えのない部屋で仕事をしている。
お母様は昔言ってたわ。
『仕事ばかりする女は男にモテない』と。…………わたくしは仕事人間であることは自覚している。立場上仕方ないと納得もしている。
けれど、こんなにも腹立たしい。
_____ただでさえ、最近セオドア様との時間が不足しているのに。
子供達と居るのは幸せです。何度も笑わせて貰ったり、幸せを分けてもらっています。けれど、我儘なわたくしは『セオドア様と2人の時間』も欲しいのです。
もっと触れて欲しい。
もっとキスがしたい。
___子供がいると営みはできないの?
____なんで、セオドア様はわたくしを抱いてくださらないの?
…………いけない、そんなことを思っては子供達が悲しんでしまう。この子達の母親はわたくし。愛する御方との間にできた『愛の証』。それを否定するのはよくない。
自分に嫌気がさす。なんと浅はかな女なのだろう。わたくしは。
「……………エンダー、コーヒーを」
「なりません、カフェインは子供達に毒です」
「………………」
大好きなコーヒーも飲めないのですね。妊婦というのはなんと難儀なものか。…………か弱い子供達、それはまるでセオドア様のよう。
可愛さ余って憎さ百倍…………いえ、この言葉の使い方は間違っているわ。この子達は何も悪くないもの。
わたくしが____未熟なだけだ。
「……………わたくしが、本当に母親でいいのでしょうか」
そ、と子供達のいるお腹を摩る。
わたくしなんかの子供に産まれてくる2つの命は、可哀想なのではないか。
セオドア様に___会いたい。
「…………?」
そう思った時、ぽう、とピンクと青の光が下腹部を覆った。
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