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第23章 愛する息子と娘よ
励まされる主人公
しおりを挟む「ぶーぶ!」
「ぱー!」
「……………ッ」
2人の大事なもの、それらを俺の前に置いて、抱き着いてきた。3ヶ月が経ったというのに未だ小さな、小さな身体。
その小さな存在と温もりに、自然と涙が出てきた。
___俺、凄く情けない。
子供達はこんなに俺を慕ってくれているのに、勝手に凹んで、勝手に悩んで…………この子達が俺を見てくれているのに、『普通』とか『どうあるべきか』とかそんなのばっかり考えていた。
けれど。
この子達が成長していくのと同時に成長していけばいいだけだろ、俺。
最初から後ろ向きになるな、俺。
セオドアは急いで涙を拭いて、自分にしがみついている子供達を纏めて抱きしめた。
「セラ、アド、…………ありがとう。
俺はちゃんとお前達の親になるからな。一緒に____居させてくれな」
いつもと違う鼻声の父親の声、それを聞いて双子は再び顔を合わせた。しばらくきょとん、としていたけれど、すぐに父親を見てにぱ、と笑った。
それを見たセオドアも____笑顔で答えた。
「セラ、アド。絵本でも読もうか」
「ぶー!」
「はは、セラ、昨日難しい本は読んだだろう?今日はアドの好きなものを読む番だ。セラはまた明日。
アドは何が読みたい?」
「あうー!」
セオドアはフグのように膨れるセラフィールを優しく撫でてから、アドラオテルを見る。アドラオテルは待ってました、と言わんばかりに可愛い動物が描かれた絵本を差し出してきた。
セオドアは2人に囲まれながら、終始優しい笑みを浮かべつつ、優しい声色でそれを読んであげたのだった。
* * *
「セオ様、お待たせ致しました」
「ああ、お疲れ、アミィ」
「セオ様も……………あら?どうして此処でセラとアドが寝ているのですか?それにこんなに玩具を…………」
風呂上がりのアミィールはセオドアの自室に来て首を傾げた。子供達はすこすことひと一人分の隙間を開けて、おもちゃに囲まれて寝ていた。
セオドアは満面の笑みで『なんでもないよ』と言う。その目元は少し紅い。それに気づいたアミィールはそ、とその目元に触れた。
「セオ様、___泣きました?」
「え、………っと、その…………」
セオドアはモジモジとする。それが肯定を現しているとわかるのに3年という月日は十分な長さだった。アミィールはとりあえずセオドアの腰を抱いてソファに誘う。
そして、詰め寄った。
「子供達が、何かをしたのですか?」
「ううん、……………励まされたんだ」
「?」
首を傾げるアミィールに、セオドアは天井を見上げながら独り言のように言う。
「俺は、未熟なくせに、一丁前に『普通』とか『親だからできて当然』とか………そういうことばかり考えて、子供達をちゃんと見てなかったんだ。
それで勝手に凹んでいたら、子供達が『こっちみて!元気だして!』ってしてくれているみたいで……気付かされたんだ。
最初から親のなり方がわからないのは当然で、だからこそ頭を抱えるけれど、わからない時は子供達と一緒に成長して行ければいいじゃないか、って。
………格好悪いだろう、すごく」
セオドアはそういって力なく笑う。
そんな愛おしい男を、アミィールは優しく引き寄せ、頭を抱いた。
「____セオ様は、格好悪くありません。仮に間違ったとしても、そうして気づいて反省できるじゃないですか。
素直に言葉にできるじゃないですか。………わたくしは、そんな貴方をお慕いしたのです。わたくしは誇らしいのです。
だから___格好悪くなど、ありません」
「……………アミィ」
セオドアはアミィールの胸の音を聞きながら、心地よい愛おしい女の声を聞いていた。……………俺にはこうやって、受け止めてくれる人が居て、教えてくれる人がいて。
だから、大丈夫。
どんなに悩んだって____大丈夫、なんとかなる、と思えるようになる。
そう思えるのは家族のおかげで。
____最愛の妻と最愛の子供達のおかげなんだ。
そう思うともう溢れかえっているという愛おしさが湧き出てくる。悪い思考を塗りつぶすように、そればかりになる。
「____アミィ、キス、したい」
「ええ。………しましょ………っん」
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