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第26章 ドキドキ?ハラハラ?家族旅行!
初家族旅行は苦い
しおりを挟むアミィール様がアイスバーンに行く理由が悲しいものだとしても、それでも………家族旅行ができる、というのは嬉しいもので。
「なあ、レイ」
「なんだ?」
セオドアはアドラオテルの玩具の剣を防御魔法で防御しながら話しかける。
「この世界にスキーはあるか?」
「すきー?なんだそれは」
「ないのか………じゃあスケボーは?」
「すけぼー?」
……………どうやら、雪で遊べるものはほとんど無いらしい。当然か、21年も生きているのにその存在すら知らないのだから。でも、折角雪があるのなら遊びたい。雪の上にダイブして、ゴロゴロして、ソリで滑って雪だるまを作ってかまくらを作ってチョコホンデュでも食べたい……………………
セオドアの頭はすっかり家族旅行でいっぱいである。こうデレデレしながら息子の怒涛の攻撃を防御しているのを見ると成長したんだなあ、と感心するレイはくつくつ、と笑いながら言う。
「セオドア、そんなにアイスバーンに行くのが楽しみなのか?鎖国国家で恐ろしい国らしいぞ~」
「そっ、そうなのか!?……っいた!」
レイの言葉に防御魔法が解けてしまう。そしてアドラオテルの攻撃が直撃。大きなたんこぶが出来る。けどそんなのお構い無しにレイに聞き返す。
「本当に恐ろしい国なのか!?」
「ああ。専らの噂だぜ?なんだっけかな、20年ほど前、沢山の近隣諸国が攻め入った時、たった5人の兵士達に全員殺されたらしい。10万人が一気に死んだんだぞ?」
「………………ッ!」
セオドアはさーっと浮かれた頭の血が引いていく。レイはまた笑う。………それをやったのがお前のよく知っているシースクウェア大国国王陛下とヴァリアース大国女王陛下とアルティア皇妃の側近ガロとラフェエル皇帝側近リーブとラフェエル皇帝なのは黙っていた方が面白そうだな。
セオドアに言われて俺は旅のことを未だに調べている。旅をしていた理由までは分からないが、大国を渡り歩いていたという情報は得たし、それをセオドアにも伝えた。
しかし。
龍神に対して興味を持っているのはセオドアだけでなく___俺もだ。
"世界最終日"、空を黒く大きな生き物が空を覆ったという。国は燃やされ、街は壊され、沢山の人間が死んだんだ。それなのに、それを文献に残さず、あまつさえ口にも出さずにいるのはどう考えてもきな臭いだろう?
だから、今では自分の為に調べていたりする。エンダーは淡々と少しずつ情報を教えてくれるが___友であるセオドアには辛い現実であるから、言わないことにした。
俺って、すごい良い奴だなあ。
そんなことをしみじみ思うレイを他所に、セオドアは沢山のたんこぶを作って倒れていたとさ。
「レイ………助けろ………」
「パパ、弱い」
「パパは弱いからやめておくれ………アド………」
* * *
アイスバーンに出立当日。
「はいはいはーい☆フランお姉ちゃん、参☆上!」
「…………」
「……………」
「……………」
「うきゃーっ!」
俺達の目の前には____黒と白のごまプリン頭のツインテール、黒瞳のセイレーン皇国の皇女兼聖女のフラン・ダリ・ジュエルズ・セイレーンがピースを作ってウインクをしている。美女好きのアドラオテルは喜んでいるがそれ以外は真顔である。
「…………あの、チェンジで」
「セオドアくんチェンジは出来ないゾ☆」
なんだこのノリは?そして何故この人が玉座の間にいる?そしてなんだこのウザさは。本当に40手前なんだよなこの人?恥ずかしくないのか?
か弱い乙女男子にここまで思われるほど面倒臭い女・フランを他所に、先程まで恒例の注意事項語りをしていたラフェエル皇帝様が言う。
「フラン…………お前は少しだまれ。
セオよ、驚いているようだが、この一件ではこの女の力も必要なのだ。諦めろ」
「え、でも、家族旅行………」
未だに食い下がろうとするセオドアに、黒の長髪、黄金色の瞳の皇妃で義母のアルティア=ワールド=サクリファイスはガハハ、と笑った。
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