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第27章 冬はイベント盛り沢山!?
『女装大会』 #3
しおりを挟む………って!チャイナ服ってなんだよ!
セオドアは妖艶に足をくねらせ、堂々と歩きながらも考える。
これだけは俺が作った服ではないのだ。本来であれば露出の少ないドレスを用意していた。けれど、土壇場でアルティア皇妃様が『つまんないからこっち着なさい』とチャイナ服に無理やり着替えさせてきたのだ。
最悪である。滅茶苦茶足元がスースーする。寒い。布も薄い。そして歩き方を間違えれば裂け目から息子がこんにちはをしてしまう!
そんな羞恥に苛まれるセオドアを他所に、解説は騒ぐ。
【「さっすが私たち1押しのセオドアちゃん!美男子のチャイナ服は美味しすぎるわー!足が長い!腰が細い!最高!」
「御相手の方には悪いですけれど、セオドアの美しさの前では無力ですね」
「フラン様!エリアス女王陛下!わたくしの旦那をいやらしい目で見ないでくださいまし!」】
アミィールの大声に、セオドアは涙が滲む。は、恥ずかしすぎる…………本当に、いろんな意味で恥ずかしすぎる…………恥ずかしさで人が死ぬことを覚えて欲しい…………
そんな涙目も可愛いセオドアに、勿論、軍杯はあがったのだった。
* * *
【「ではでは、最後ですね~…………おや?6人目が棄権?」
「ええ、自信を喪失したそうで………」
「ええ!?なんでよお!つまらないなあ!」】
解説の言葉にザワザワとした。舞台上にいるセオドアもそれを聞いていた。………棄権か、棄権するなら俺の時にして欲しかった。というか俺の相手絶対女だろ。ズルすぎる。それに勝ててしまった俺の男のプライドはズタズタだ。
それはともかく、これでこんな大会終わり____「きゃー!」………?
突然、会場が盛り上がった。
びっくりして辺りを見ると___その元凶を見つけてしまった。
「アドでーす、あはーん♪」
「なっ……………!」
最後に控えていたアドがとうとう我慢できなくなって飛び出してきたのだ。
そして、今のアドの格好は____猫耳、尻尾でふりふりのピンクのドレス。俺がセラフィールに作ったドレスを勝手に着ているのだ。
「アド!やめなさい!」
「俺の番だもーん」
「あっ、こら!」
アドラオテルはふよふよと浮きながら闘技場内を飛び回る。チャイナ服のセオドアは浮遊魔法・フライで翼を生やして追いかける。追いかけっこになった美女親子を国民達はほっこりとした顔で見守っていた。
* * *
【「えーでは、お騒がせな親子が落ち着いたところで、今大会の結果発表をしましょうねえ。
5対1で圧倒的皇族勝利でーす☆」】
フランの言葉におおお!という歓声が巻き起こる。何故かフラン様が仕切っているのか分からないし、つ、疲れた…………
「はーなーせー!」
バタバタと暴れ足りないと言わんばかりに手足を動かすアドラオテルを抱き抱えながら息を整えるセオドア。とにかく、これで終わりだ。後はもう話すことは___【「では、続きまして、皇族の中から最優秀賞をきめましょう」】………はい?
セオドアはプログラムに無い言葉を聞いて思わずアルティアを見る。アルティアはニコニコしながらフラン、エリアスと共に地に降りてきた。
そして、3人は声を合わせて大声をあげる。
【「私は、ラフェエルちゃん!」
「私はセオドアくんと迷うけどアドくん!」
「わたくしは、えっと、アドくんがいいですわ!」
「国民のみなさんはー?」】
「「「「アドラオテル様です!」」」」
「ッ!」
キィン、と耳を劈くような声に思わず耳を塞ぐ。けれども、聞こえなかった訳ではなく。
つまり……………
【「第1回女装コンテスト優勝はーーーーーアドラオテル・リヴ・レドルド・サクリファイスでーーーーす!」】
「やったー!」
アルティア皇妃様がそう言うと、アドラオテルの声をかき消すように歓声があがる。め、滅茶苦茶盛り上がっているじゃないか………!
セオドアは悟った。
この大会はこれから先も行われる。
きっとこの大会の為に『女装男子』は増えていくのだろうな、と。
悟ると、くらり、目眩がした。
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