上 下
407 / 469
第28章 不安要素と新たなる決意

主人公、始動

しおりを挟む







 「…………ほんとうに、よろしいのでしょうか」


 アミィールはそう言って眉を下げる。セオドアは優しく笑って頷く。


 「ああ。セラとアドは私に任せて。今日はラフェエル皇帝様にお願いして1日何もしなくていいと言われたんだ。

 アミィは執務があるだろう?重要な事柄だってある」


 「…………娘が倒れているのに、仕事など………」


 「アミィ」


 セオドアはアミィールを抱き締める。
 そして、優しい声で言った。


 「子供達は勿論大事だ。………けれど、国民を、国政を蔑ろにしてはいけない。

 私に頼っていいんだ。………私だって、父親なんだよ?」


 「……………セオ様、わかりました。

 早く終わらせ、すぐに帰ってまいります」


 「ああ。待っている」



 セオドアとアミィールはお互いの頬にキスをしていってらっしゃいをする。アミィールを見送ってから、セオドアは自分のベッドを見た。


 セラフィールとアドラオテルが眠っている。アドラオテルはさっきまで起きてたんだ。『セラが起きるまで俺が起きてなきゃいけないんだ!』と可愛く言っていたが、まだまだ2歳。育ち盛りだ。眠いに決まっている。


 セラフィールの事もあるけれど、1日休みはありがたい。………存分に、調べることができる。


 セオドアはオレンジ色の手の甲と腕に張り付いた紫色を見た。
 そして、呟く。



 「____太陽神様、星の妖精神様、お知恵をお貸しください」



 そう言うとふたつの光が煌々と輝きだし___小さな太陽神・ドゥルグレと、小さな星の妖精神・ゼグスが現れた。2人は基本呼び出す時はこのサイズなのだ。妖精のようで可愛い。


『なんだよ、セオドア』


『やあ、セオドア』 


『げっ、なんで元人間が居るんだよ』


『禁忌の神まで居るとは聞いてなかったなあ』


 2人は呑気に話し始める。2人の掛け合いを見ている気分にはなれなかった。


 「2人とも、来ていただき感謝です。

 ___お聞きしたいことが、あります」


『?』

『?』

 セオドアは静かに問いかける。


 「復活の『代償』を完全に消すことは可能ですか?」


『それは前にも言ったろう。無理だ。
 お前の力は"器"がありきの力だ。肉体という"器"を治して、そして器に魂を戻す』


 ドゥルグレはそう言って耳をほじった。次に答えたのはゼグスだった。


『その"器"自体にヒビが入っているんだ。そして、その器は人間や草木のようなものでは無い。"最上の神"の器。初代龍神の血を脈々と受け継いできた__歴史ある器だよ。"器を入れ替える"秘術があれば、救いようがあるが、それは残念ながら、ない。

 そもそも、アルティアが"器"を取り戻したのでさえ奇跡。それ以上は…………今の時点では、何も変わらない』


『そうだ。時代が変わればまだ打開策はあるかもしれねえ。けど、今はない。どんなに探しても"無"だ』


 「ッ…………」


 無理だと断言されると、凹む。
 そもそも復活なんて方法自体が奇跡なのは知っている。それ以上を望むのが間違いだとも知っている。


 けれど。諦められない。


 「___では、質問を変えます。

『代償』を確実に抑圧できる方法は、ないのですか?」


 そう聞くと、2人は顔を合わせた。
 何かを目配りしているようにさえ思えるそれは、長くは続かなかった。



『確実なものは___ない』


『けれど、可能性は___ある、といえばある』


 「………!」







しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

冷酷な少年に成り代わってしまった俺の話

BL / 連載中 24h.ポイント:13,214pt お気に入り:2,420

泉界のアリア【昔語り】~御子は冥王に淫らに愛される~

BL / 完結 24h.ポイント:78pt お気に入り:257

【完結】引きこもり陰キャの僕が美形に転生したら

BL / 完結 24h.ポイント:804pt お気に入り:2,167

私の可愛い悪役令嬢様

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:56pt お気に入り:3,551

僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:364

不遇ショタ勇者は魔王様の過保護に今日も幸せ!!

BL / 完結 24h.ポイント:78pt お気に入り:1,277

兄たちが溺愛するのは当たり前だと思ってました

BL / 連載中 24h.ポイント:255pt お気に入り:2,268

処理中です...