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第30章 巡る巡る夏の夜
※採寸でさえラブコメ展開
しおりを挟む「はなびたいかい?」
そう聞き返したのは紅銀の髪、黄金の瞳を持つサクリファイス大帝国皇女でありセオドアを見初めた女、アミィール・リヴ・レドルド・サクリファイスだった。
彼女の手には先日行われたスイカ割りで大量に出てしまったスイカで最愛の夫が手を加えて作ったシャーベットがある。
『すいかわり』もよくわかりませんでしたが、『はなびたいかい』もわかりません。わたくしは知らないことが多いのです。人を殺し執務ばかりをしていたと後悔するほどに無知ですね。
そうほんの少し凹むアミィールを他所に、セオドアは嬉嬉として子供達の採寸をしながらいう。
「そう、花火大会。花火大会というのは花火__空に咲く花のことかな。詳しい説明は私にはできないけど、とても綺麗なんだ。
アミィにぜひ見て欲しくてね」
「空に花、ですか………?しかし、空には大地がありません。ファーマメントの大地を使うのでしょうか?」
「うーん、草木とは違うんだよね………って、アド、暴れないでおくれ」
「ぐるぐるぐるぐる~」
「アド、そんなことをしていたらパパがお身体を測れないわよ?」
「いつも測っているんだからいいじゃん。なんでいっぱいやるのー?」
「そうね、パパ、なんで?」
群青色の短髪、紅と黄金の瞳を持つ息子・アドラオテルとセラフィールが下着姿で首を傾げている。セオドアはそんな愛らしい子供たちに優しい笑みを浮かべながら言葉を紡いだ。
「アドもセラも大きくなるのが早いから、すぐ服が入らなくなるんだよ?だから、こまめに計らないと服を作れないんだ。
それに、浴衣や甚平は普通のサイズよりすこし大きめの方が動きやすいしね」
「ゆかた?じんべい………?」
「ふふ、花火を見る時はダーインスレイヴ様が着ているような服装で見るとよりそれらしくなるんだ。………よし、子供達はいいね。
アミィ、アミィもこっちに来てくれるかい?」
「ええ、それはいいですけれど…………」
アミィールは知らない単語に戸惑いながらセオドアの前に来た。セオドアは前世の知識を活かして作ったメジャーで身体を測る。
なんというか…………アミィールの体って、本当に理想的な体型だよな。胸は大きく、腰は細く、お尻はほどよく肉がついている………性格は男らしいけれど、身体は子供を産んだとは思えないくらい綺麗。微かに浮かびでている妊娠線を見なければ、子供を産んだことないのでは?と思える。
………はっ!
セオドアはぴた、胸の採寸をする所で手が止まる。谷間が、トップとアンダーを測るのに見えている、見えているぞ!………うわぁぁぁ、触れたいとか考えるな!俺!というかいつも触っているだろう俺!なんで谷間だけでこんなに顔が熱くなるんだ!?結婚してもう5年だぞ!?妻の身体に欲情するな俺!
「…………セオ様?どうなさいました?」
「はうっ」
アミィールは顔を赤らめ目線を泳がせるセオドアに声をかける。
アミィールが心配そうに俺を見ている。心の中でアミィールと呼び捨てにできるようになったのに、俺はヘタレだからこんなことだけで戸惑い、惑わされるのだ………!邪念よ鎮まれ、俺の右手、頼むから俺の頬を殴るな!逆に心配されるから!
「……父ちゃん、ぞうさん立ってる」
「な、そ、そんなことは………ッ」
「しーっ、ママは気づいてないんだから、そういうこと言っちゃダメだよ!アド!」
「母ちゃんの身体をいやらしい目で見てるんだから母ちゃんだって気づくだろ~」
「…………ッ」
アドラオテルとセラフィールの言葉に耳まで染め上げるセオドア。
子供達よ、黙ってくれ。おねがいだ、あとでスイカで作った飴玉をあげる、スムージーもつける。だからそれ以上言わないでくれ、俺はこのままでは心不全を起こすぞ、羞恥で父親が死ぬんだぞ………!
「………セオ様」
「…………ッ」
アミィールに呼ばれて、顔を見る。凄く意地悪な御顔をされている。口元に手を置いているが、緩んでいるのが丸わかりだ。
「_____お触りは、子供達が寝てからですよ?……セオ」
「~ッ!」
……………今日もアミィールは俺に甘くて意地悪で、俺は顔に熱を集めながら極力身体を見ずに測った。もちろん、それが上手くいくはずもなく、子供たちより10分も長く採寸していた。
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