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第31章 『呪い』と戦う主人公
看病イベント発生!?
しおりを挟む「ごめん、心配かけたね。…………改めて、おはよう」
セオドア様はそう言って困ったように笑った。それだけで涙が零れた。
よかった、目覚めてくれた。
生きてる。生きているんだ。
「あ、アミィ、な、泣かないでくれ………!」
「だって、だって、………………セオ様があんまり苦しそうだったので、死んでしまうのではないかと…………」
「死……って、過労だよ、ただの過労。アミィは心配性だな」
「心配性ではありませんっ!」
「………!」
アミィールはポロポロと涙を流しながら、大声を出した。セオドアは思わずびく、と身体を揺らす。アミィールは珍しく怒っていた。
「セオ様、セオ様は何も分かっておりません!わたくし、………子供たちだって、セオ様が居なければ笑えないのです!
倒れて、倒れるまで苦しんで、………それで、それでいなくなってしまっては…………わたくしたちはっ……!」
「…………アミィ」
「そうだぞっ!」
「あたっ!」
セオドアが何か言う前に、アドラオテルは剣でセオドアを殴った。そして、鼻水をぶら下げながら、アミィールよりも大きな声で言う。
「父ちゃんのお馬鹿!どれだけ、どれだけ俺が心配したと思っているんだ!お馬鹿お馬鹿お馬鹿!」
「ッ、アド…………」
「ぱぱ………いいえ、おとうちゃま」
泣き喚くアドラオテルを他所に、涙目のセラフィールはいつもの『パパ』呼びではなくて、お父様、と呼んだ。
そして、涙を流しながらぎゅう、と抱き締めた。
「もう我慢しないでくださいまし、わたくしたちに相談してくださいまし、だから、………倒れないでくださいまし…………ぐずっ」
セラフィールは言い終わる前に泣きじゃくった。全員の声を聞いて………セオドアにも涙が浮かんでいた。
……………俺、馬鹿だ。
ただの過労、じゃないよ。
これだけ心配させているんだよ。
俺の身体は俺だけのものじゃない。
____俺が倒れたら、全員が泣くほど悲しむんだ。
怒られて当然だ。
過労でも、熱でも、…………そんな不安、全部させないようにもっと気を使わねば………
セオドアは倒れたことを酷く後悔し、そしてまたしっかり気を引き締めようと決めた。
* * *
「アミィ、今日は仕事大丈夫なのかい?」
俺がそう聞くと、やっと泣き止んだアミィールは頷いた。
「ええ。今日一日はわたくしにセオ様を看病させてくださいまし」
「そっか………」
セオドアはそれを聞いて顔を緩めた。
看病イベントだぞ俺…………!アミィールが倒れた時、俺は自分の無力さを悔いることしかできなくて、看病イベント感なかったし!しかも看病されるのは俺だぞ!?これはおかゆあーんとか、熱測るよ?とか、体拭くよ、とか……………
全部男が女にする奴だけど!この際あべこべでいい!滅多にない1日看病!満喫しないと損だぞ俺!
「では、まず熱を確認させていただけますか?」
「は、はひ!」
アミィールの顔が近づいてくる。いつもそれ以上のことをしているのに、新鮮でドキドキする……!神様ありがとう………!
「俺がやる!」
「ぶっ!」
「きゃっ」
俺の顔に来たのは優しい額の感触ではなく、顔面に固いものがぶつかった。自分と同じ群青色の髪、…………アドラオテルの頭だ。
「俺がかんびょーするぞっ!」
「………………うん、ありがとう」
甘い看病イベントが一気に恐ろしいイベントに変わったな、とセオドアは悟った。
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