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第31章 『呪い』と戦う主人公
甘い雰囲気にスパイス少々
しおりを挟む俺が随分前に作ったウェディングドレスの試作品のドレスを未だに着てくれている。出産を経て胸が大きくなっているからパツパツだ。そんなの、欲情するに決まっているじゃないか。
「っは、……セオ……」
セオドアが唇を離すとアミィールの黄金の瞳は蕩けていた。…………熱に浮かれた気持ちに、歯止めがきかない。
「アミィ、ごめん。熱、移してしまうかもしれない」
「いいです。………セオの熱であれば、わたくしは欲しいのです」
「ッ、アミィ___「ダメだダメだダメだぁ!」………!?」
突然の幼い声。2人は急いで声のした方を見る。子供達がベッドで目を瞑り鼻ちょうちんを作りながら捲し立てる。
「イチャつくのは!身体がよくなってから!」
「ちゅーもだめです!ぎゅーもだめです!」
「裸でイチャイチャもだめなんだ!」
「いとなみはんたーい!」
「……………」
「……………」
セオドアとアミィールは顔を赤らめ、黙る。恐る恐る近づいて本当に寝てるのかさえ確認した。寝ているのである。なのにこんなことを言っているのである。
セオドアは静かに戻ってきて、アミィールを抱き起こす。アミィールもされるがまま起きる。顔を合わせた。
「…………ふふっ」
「はははっ」
そして、笑った。顔を赤くして、笑った。本当に俺たちの子供は変だ。とても変で、面白くて、厳しくて___優しい子供達。
「…………セオ様、この続きは、セオ様が完全復活したら、ですね」
「ああ。そうと決まれば早く治す。早く治さなければアミィに触れられないからな」
「ええ。わたくしの為に、治してくださいませ」
「んっ」
アミィールはそう言って、触れるだけのキスをセオドアにしたのだった。
* * *
「よし、ここは終わりました!次の柱に行きましょう!」
セオドアはワールドエンドにて、満面の笑みで手首から血を流して沢山の柱を処理している。それを見ていたラフェエルははあ、とため息をついた。
「……………先日倒れたばかりだろう、お前は。安静にしろ」
「いいえ!1日寝たら元気になったので、大丈夫です!」
セオドアはきり、と凛々しい顔をして返事をする。それを見ていたハデスとケルベロスは聞いた。
『こりゃーまたぶっ倒れるなあ』
『……………無茶だな』
「大丈夫です!携帯食にブドウのドライフルーツやカシューナッツ、アーモンドをふんだんに使ったパウンドケーキを持参しているので!」
セオドアはそう言って腰にぶら下げていたお菓子を手に持ち、ぐっ、と親指を立てた。熱で倒れたせいか礼儀などの細かいことは忘れてしまったようだ。
『ははっ、頼もしいね、だからそのお菓子をくれ』
『美味な菓子………』
「だめです!御二方にはもうマカロンをお渡ししたではないですか!」
『そんな昔のことは忘れた!』
「5分前のことを忘れるのは認知症ではありませんか!」
『にんちしょう………?ケルベロス、なんだそれは』
『痴呆のことかと』
『ち、ほ、う、だとぉ~!?この人間め!食らってやるぞ!』
「いい歳なんですからお菓子ひとつで吠えないでくださいッ!これは!私のです!」
『うるせえ俺様のものは俺様もの、お前のものは俺様のものだ~!』
「流行っているのですかその言葉は!」
ギャンギャンと作業をしつつ喧嘩をする3人を見て、ラフェエルは深い溜息を着いたのだった。
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