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最終章 Heroine Becomes a Hero !
最後の1本
しおりを挟むお母様は手を上げた。わたくしはぎゅ、と目を瞑る。叩かれる、と思ったから。
けれど、大きな衝撃は来ず、代わりに軽く頭を叩かれた。恐る恐る目を開けると…………子供達が、お母様の足にくっついていた。
「おかあさまを、おかあさまを怒らないでくださいまし、おばあ様!」
「女の醜い争いは、だめだぞ!」
「セラ、アド…………」
「…………ふん。可愛い子供たちに感謝する事ね。
この子達が止めなかったらアンタの顔面の形を変えてたわ。
それより、入りなさい」
アルティアはそれだけ言ってさっさと入口の黒渦に入っていった。ちら、とエンダーを見ると、『いってらっしゃいませ』と淡々と言った。
わたくしは、子供達と手を繋ぎ、中に入った。
* * *
「うわーっ!」
「キャーッ!」
「ッ、セラ、アド!」
アミィールは落ちてきた双子をキャッチした。幻の島・ワールドエンド。足を踏み入れたのは初めてだ。
けど、妙だった。__話では、入口に人柱が乱列しているしていると聞いていた。なのに、ひとつもそれらしきものはないのだ。
「人柱、というのはどこですか?」
「…………」
お母様は答えずに、歩き出す。
わたくしは子供達を連れて、追いかけた。
* * *
「______これが、最後の柱か」
セオドアはぽつり、そう言って血の滴っていない方の手で柱を撫でた。
人柱___最初こそ、嘔吐をしそうになるほど怖いと思っていたけれど、今はそう思っていない。
黒い光に包まれると、柱に埋まっている人のたくさんの感情が溢れ出すんだ。
_____ゼグス様を救いたい。
_____龍神を作り出したのは自分たち。
____だから自分達が止めなければいけない。
_____生きることよりも、龍神がいない世界へ。
こんなたくさんの思いを持ち命をかけて龍神に呪いをかけた人達は本当にすごい人達なのだ。尊敬の念さえ抱いている。
『とうとう、1本だな』
『ここまでよく、やった』
後ろでチャイナ姿の黒髪、糸目の死神・ハデスとスーツにサングラスの闇の精霊・ケルベロスが俺を称えてくれた。
セオドアは首を振る。
「いいえ。____これは、私一人ではできなかったです。ハデス様とケルベロス様がいらっしゃったから、できたのです。
それと____貴方のおかげです、ラフェエル皇帝様」
セオドアの目線の先には___紅銀の短髪、紅い瞳の美丈夫、サクリファイス大帝国現皇帝で義父のラフェエル・リヴ・レドルド・サクリファイスの姿があった。
ラフェエルは素っ気なく言う。
「勘違いするな、セオ。私はアルとアミィの為に動いた。お前のためではない」
「そうだとしても。………お礼は、言いたいのです。
私が愛する人達を守れる手段を、守れる手助けをしてくれた全ての人に___感謝をしたいのです」
そう。これは感謝だ。
俺は、やっと___守られるだけの存在じゃなくなった。
守る力を手に入れた。
俺の武器___それは、やり遂げる力があること。きっとそうだ。
現に俺は10000本の柱を少しずつ、消した。
もどかしくて苛立ったこともある。熱を出したこともある。沢山鉄分の取れるお菓子を、料理を学んだ。全部はこれを行うための下準備だった。
それも____今日で終わる。
でも、不満が無いわけじゃない。
この瞬間に、アミィールや子供達がいないこと。俺が選んだとはいえ、目の前でやって見せて、そして呪いから開放される瞬間を見たかったのだ。
けど、それは仕方がな___「セオ様!」___!
鼓膜が、揺れた。
大好きな、心地いい、愛おしい声。
「おとうさま!」
「父ちゃん!」
可愛らしい、癒されるふたつの声も聞こえた。
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