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二章 旅立ちの日
40.新種です(圧)
しおりを挟む「お待たせしました」
「ありがとうございます。いやあやっぱりソーセージは外せませんね。毎日食べたいくらいです」
「そういってもらえて何よりですよ。あとこれ、猫用のです」
「無理言ってすみません」
「いえいえ、生肉を茹でるだけですので……ってガイアスさん、いつの間にケージなんて」
マスターが椅子に乗った猫入りケージを見て怪訝な顔をした。
「あぁ、これですか。作りました」
「なるほど、作ったのですね」
「はい」
「……作った?」
「はい。こうやって」
マスターの顔が余計怪訝になったので、懐から金属球を取り出して実際にもう一つ、ケージを作り出して見せた。
「な……! す、すごい……ガイアスさんは魔法の使い手なのですね」
「はい。一応は」
「いやはや、ガイアスさんには驚かされてばかりですよ。随分珍しい魔法ですが……」
「そうみたいですね。僕も初めは驚きました」
スキンヘッドを撫でまわしながら舌を巻くマスターと、ソーセージにかぶりつく僕。
ソーセージを齧りつつ、金属操作でケージを開けて茹で肉を猫に与えた。
「ニャニャ!」
茹で肉を見て目を見開いた猫の行動は、実に早かった。
それなりに大きい茹で肉で、僕はてっきり少しずつ齧りながら食べるのだろうと思っていた。
「ひい!」
「ぅぉ……」
マスターの可愛い悲鳴が店内に響き、僕もソーセージを皿に落としてしまった。
グチャ、ニチャ、と生々しい音が猫から聞こえてくる。
てっきり齧るものと思っていた猫が、猫の口がこう、なんといえばいいのか。
胸元あたりから口にかけて、ガバっと大きく開いたのだ。
口から胸元まで開いた部分には、鋭い牙がびっしりと生えていて、それが大き目の茹で肉を丸ごと取り込んだのだ。
「うわー……」
「が、ががガイアスさん……! これ絶対猫じゃないですよ!?」
喉のあたりがもごもごと蠢いている。
きっとしっかり噛んでいる最中なんだろう。
「そういう、種類です」
猫の種類は数十種類にも及ぶと聞くし、きっとこの猫は汚染された影響で産まれた新種の猫なのだ。
「絶対魔物ですって!」
「……新種、です。僕が見つけた新種です。安心してください」
「絶対そのケージから出さないでくださいね!」
「わかりました」
「絶対ですからね!」
「はい。肝に命じます」
顔面がアンデッドも驚きの青白さになったマスターはふらふらと厨房へ戻って行った。
さすがにこの展開は僕も予想していなかった。
予想出来る人なんているのか?
「お前は変わった猫だな」
「ンモォnyゴァmぉ」
「食べながら鳴くんじゃない。何言ってるか分からないだろう」
治療をして、猫が気が付いた時は普通の口だった。
可愛らしく(?)小さな口を開けてニャアと鳴いていたし、僕の腕を舐めていた時だって小さな口のまま。
助けてしまった手前、ほっぽりだす事も出来ない。
まぁ懐いてくれている(はず)ので、しばらくはケージに入れたまま様子を見よう。
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