欠陥品の文殊使いは最強の希少職でした。

登龍乃月

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第八章 ロンシャン撤退戦ー後編ー

三五三話 冒険者の男

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「どうも、初めまして。フィガロ・シルバームーンと申します」

「ご丁寧にありがとよ。俺っちはラインメタルってもんだ。見てわかると思うがドワーフだ」

 ラインメタルはそういうと手を差し出し握手を求めてきた。
 断る理由もないので差し出された手を握り、軽く上下に振った。
 掌の皮は暑く、小柄だががっしりとした身体付きで全体的に色黒だ。
 頭には手ぬぐいを巻いており、うなじに見える髪色は濃い茶色をしている。

「ドワーフの方には初めてお会いしました」

「そうかいそうかい。にしてもニーちゃんは家名持ちかぁ、どうりで品がいいと思ったぜ。対してあの表六玉はダメだな。早死にするタイプだ」

「ひょう、ろくだま?」

「間の抜けたやつとかバカみたいなやつって意味さ。たった一人でこの場所に乗り込んでくるたぁ中々出来ることじゃあねぇ。それも分からんような馬鹿はほっとけほっとけ。冒険者の中には自分は凄いと勘違いしてるやつがゴロゴロいるが……大体は死んじまうか挫折して故郷に帰るかだ」

「あー……そういう意味なんですね。勉強になります」

 掠れたような声で話すラインメタルに肩を力強く叩かれるが、悪い気はしなかった。

「いい家名だな。銀の月、か」

「はい」

「だがロンシャンでは聞かねぇ名だ。どこのモンだ?」

「私はランチア守護王国の人間です。そこで辺境伯の爵位を頂いております」

「っはー……ランチアのか。おまけに辺境伯サマかい……こりゃ失礼致しました。若いのになぁ」

「まぁまぁ、そんな事は置いておきましょう。それより何かご用ですか?」

「うんにゃ、別に用があったわけじゃあないんですよ。興味を惹かれただけの話で」

「なるほど。ならついでに今回の顛末はご存知ですか?」

「革命軍て名乗る奴らから聞いた話だけだが……やばいことになってるみたいですね」

 ラインメタルは頭を乱雑に掻きむしりながら床に腰を下ろした。
 俺もそれに習いあぐらをかいて座る。

「今ロンシャン国内は、あちこちで革命軍と正規軍の戦闘が起きて荒れに荒れています。私達ランチア勢力はアーマライト王陛下に助力している状態なんですよ」

「革命、ねぇ。する必要なんてねーと俺っちは思いますがね。あいつら急にこの迷宮管理塔に押しかけて来たと思ったら、あっという間に占領しちまった。管理塔内部にいた一部の連中が反対勢力として抵抗したらしいが……全滅したと革命軍の奴らは可笑しそうに笑ってた。自由冒険組合の支部長や幹部連中、冒険者達も抵抗したが殺された。モンスター相手に戦ってきた連中さ、人殺しとして訓練されたやつらに勝てるはずもねぇ……おまけに相手はあの赤龍騎士団と黒龍騎士団、逆らう方が無茶ってもんさ」

「ですが助かった人達もいるのでしょう?」

「助かったのは一般人やこの塔の職員達、大人しく投降した冒険者達だけだ。そしてその半分は革命軍に肩入れしてどっかに行っちまった。ここにいるのは抵抗もせず協力もしなかった連中さ。あの表六玉だって最初はブルブル震えてたってのによ、助けがくる可能性が出たらあーやってデカイ顔し始めたんだ。同じ冒険者として情けねぇったらありゃしねぇ……」

「まぁまぁ……過ぎたことですし、私としてもあの人には興味ありませんから大丈夫です。実は私も冒険者なんですよ?」

「何だって!? そいつあ意外だな! 酒はいける口ですかい? よかったら今度どうですクィっと」

「お誘いはありがたいのですがお酒はちょっと……」

「そうかい、残念だ」
 
 肩を落とし見るからにしょげるラインメタルだが、やはりドワーフという種族は酒が好きなのだろう。
 クロムの時もそうだったけど、大人になるとお酒の付き合いも増えるだろうし、いつかは通らなければならない道だ。
 少しずつ鍛えていくしかないだろうなぁ、とぼんやり考えているとランチアには銘酒と呼ばれる物が無い、とクロムが嘆いていたのをふと思い出した。
 だからこそ新しい作物を育て、そこから地酒などの産出していきたいのだと力説していた。
 
「俺っちはよ。この国がどっちに転ぼうと出ていくつもりなんだ」

「なぜですか?」

「他の国を見てみたいと思ったんさ。何となくな」

「そうですか……あの。ラインメタルさんから見てアーマライト王はどのような人物ですか?」

 頭によぎった疑問をそのままぶつけてみる。
 現地の住人から見える王のビジョンというのは身近にいる人間とは異なるものだ。
 この際だから聞いてみるのも悪くないだろう。

「いいお人だと思うぜ? 人柄は悪くないし税率もちょうどいいし、経済も上手く回ってた。まぁ貧困層やスラム街はどうにも出来なかったみたいだがな。この国が広すぎるせいもあるだろうし、まともに働きたくねぇ連中だって少なからずいるがそこは王陛下一人だけで解決出来る問題じゃあねぇしなぁ」

「反対派というか、そういう方々はいなかったのですか?」

「そりゃいたさ。王陛下が打ち出す政策や法案に悉く噛みつくやつらはいた。過激派みたいなのは居なかったが世論がどうだの若者がどうだの高齢者がどうだのと一々突っかかってな。だがそれは内紛が収まったから出来たことだ。武力闘争が無くなれば今度は言論闘争、人ってもんは争わずにはいられねぇのかもな」

「そう、ですか……」

「だが俺っちは王陛下が間違ったことをしてきたとは到底思えねぇ。革命軍がどんな国を目標にしているのかは知らないが、ここまで国を荒らして改革も何も無いもんだ」

 ラインメタルは苦虫を噛み潰したような顔をして窓に群がる人々を見た。
 



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