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愉快な仲間が増えましたわ
しおりを挟むとある日、母と共にショッピングへ出かけていた。私に物欲がないため外で暇を持て余しながら人間観察(という名の鑑定のレベル上げかしら?)をしていたのだけれど、そこで面白そうな人を見つけたのよね。
鑑定では[セクシャリティ:バイセクシャル]との表記、今世では初めてのセクシャリティを見つけ彼をぼんやりと眺めていた。美しい顔立ちに中性的な体つき…女みたいだけど性別は男。そんな私の視線に気付いたのか、あちらからニコリと微笑まれたのでこちらも笑顔で返事。近寄ってきて話かけられたので少しお話をすることにした。
「僕のこと見てたの?」
「えぇ、見てましたわ。」
「何か気になったの?」
「そうねぇ…例えば貴方は恋多き人なのかなぁ?と推察してたり?」
「え?な、なんで?」
「多分貴方、男女共に愛せる人だとか?」
「わーーー!シー!言わないで!」
「何故ですの?」
「何でわかるの?!」
「ふふっ、人間観察が趣味なので」
本当は鑑定ですけどね(笑)
その後は彼、ホープ・ラクベリー男爵子息の恋愛相談に乗ってたのだけど、中々面白そうな子なので後日お茶に誘う約束をしてお暇した。
母にお友達が出来たと言うと嬉しそうに、今度我が家に呼んであげなさいと言ってくれたので遠慮なくホープを我が家へ呼びつける事にした。両親はホープが男の子だと分かると、更に喜んでいたので心のどこかでまだ私の結婚を期待しているんだなぁ~と少し罪悪感が…。
そして2週間後、我が家へ訪れたホープは私が噂?の公爵令嬢だと知り随分と驚いてましたわ。噂とは王家主催のお茶会での一件だと思うのだけど合ってるかしら?
そしてお茶会の席で大切な話をするから暫く護衛・侍女に下がってもらい、ホープへ私の将来の予定を話すと顎が外れるんじゃないかと思う程、口をあんぐりあけて驚いていたわね(笑)
「スキン!あれ君の案だったんだ!」
「あら?購入してくれたの?」
「両親がね、病気が心配だからって」
「そうね、同性異性どちらを相手にするしても必要だものね」
「あれには感謝だよ!」
「でもね、誰にでも身体を開くのは良くないと思うわ(人の事言えない前世だけど)」
「これでもその時は全力で愛してるんだけどな…先がないと思われて捨てられるんだよねぇ」
「まぁ言い方悪いけど、体のいい男娼よね」
「…やっぱりそう思われてるよね」
「えぇ、少し恋愛から離れたら?」
「じゃあ、ユーリティア嬢と遊ぼうかな」
「ふふっ、いいわよ友人になってくれるの?」
「なるよ?というかもう友人だと思ってたよ?」
「ありがとう、ユーリでいいわ」
「ユーリ仲良くしてな?こんなに僕の事、理解してる子初めてなんだ!」
「まぁ!私の友人は理解者しかいないわよ?」
その言葉にホープは目を丸くし「本当に?!」と大声を出していたけど、本当よ(笑)
そしてホープに私が領主として立った時の側近にならないかと話をすると、今から勉強頑張るから是非宜しくと逆にお願いされた。ホープは三男だから、ゆくゆくは文官になろうと思っていたらしくて今も勉強はしっかりしているそうなのだ。
人材GET。
それから幾日か日が流れ、兄が冬季休暇で実家へ帰省しているのだけど父から私にくださる領地を見て回ろうと声を掛けてくれたので家族4人で視察へ出ることに。
王都から馬車で5日の子爵領、時間がある時なら馬車旅でもいいけど今回は転位ゲートで馬車ごと移動です。領地で色々と見回っている時に気付いたのだけど、領民たちの顔色が悪いので馬車を止めてもらい鑑定をかけながら観察…コルラって何だっけ…あ、そうだ。地球にあったコレラに似てる病気だわ。
「父様、この領地の代官はどちらに?」
「ん?これから会うけど…どうしたんだい?」
「領民が流行病に侵されてます」
「それは鑑定で?」
「はい、急ぎ対策をしなければコルラです」
父は馭者に急いで代官の元へ行くよう声をかけてくれ、馬車内で対策を考えているので私も考えうる限りの解決案を出すことに
「父様、清潔な水・塩・砂糖または蜂蜜・レモーニの手配は可能ですか?」
「あぁ、それで何を?」
「経口補水液を作ります」
「それは何だい?」
「汗と同じ成分だと思ってください、きっと沢山の嘔吐と下痢をしているので体内の水分が足りなくなっています」
「それと母様、我が家に清潔なリネンの在庫はありますか?」
「え?!えぇ、侍女長から廃棄の報告はないから在庫はあるはずよ」
「では、できるだけ沢山こちらへ持ってこさせてくださいまし」
「わかったわ、すぐ文を送りましょう」
「兄様はゴム手袋の手配を大量に!」
「あぁ!わかった!」
もうそれからは家族全員でバタバタと動き回り、代官も私に言われるまで気付いてなかったらしく顔を青ざめさせ医師の手配や一時的な隔離棟を作って下さった。
感染経路は共通井戸、こちらは代官が呼んだ鑑定士が探してくれたので封鎖させて、浄化石を使用し数ヶ月は使用不可とさせた。また近くの川に浄化スライムを見つけて来てもらい放つ事で周辺への感染対策。
私は大量の経口補水液を作り、代官へレシピも渡すと父がすかさず「このレシピは内密にな」と口止めをしていた。あ、それもそうね…ありがとう父よ。看護にあたる人達にはゴム手袋とマスク(個人的に作ってたの私用でね)を渡し、ゴム手袋とリネンは使用後すぐに使い捨てまとめて焼却を頼みやっと一息つく。
もう疲れましたわ。
これ…下水道作った方がいいのでは?
浄化石と浄化スライムの2段構えでやるべきだと思うのだけど、そんな知識が私にある訳もないので父に聞いてみましょう。
こうしてドタバタな一日を過ごした後は子爵領にある我が家の別邸へ向い、湯浴みで清潔にした後ようやく夕食へ。食堂で家族からよく気付けたねと褒められたので本題を話しましょう。
「その前に、これに目を通してくださいまし」
「これは?…これも写生したのかい?」
「はい、それはもう沢山の本を読み、書き出した流行病の一覧です」
そうなのよ、これは本当に偶然。
地球にあるのと同じものや、この世界の特有のものこれは絶対に必要だ!と思って書き出して対処法も含め本に纏めておいたもの。
「これを図書館でひたすら写生してたのか…」
「領地を預かるなら一番気にすることだと思って纏めてたのです、今回は本当に役に立ちましたわ」
「驚いた、そんな事をしてたんだね」
「えぇ、人は忘れる生き物ですから。いざと言う時に楽に調べれるようにと思って」
父は歓喜し私に良い領主になれると太鼓判を押してくれました。そして下水道の話を…
「それで今回の事で思ったのですが、水場を纏めて管理出来ないかと思ってまして」
「うん?何か案があるのかい?」
「そうですね、地下に道を作って2箇所に汚水を貯めるようにして第1段階で浄化スライムによる浄化、第2段階で浄化石による浄化で河川へ戻すようにしてはどうかと思ってるのですが考えるのと作るのでは別だと思っていてどうすればいいのか分からないのです」
「それは…すごい発想だ!」
「いえ、考えるだけなら簡単ですが、いざ作ってそれが機能するのかも分かりませんし…」
「ならばユーリの考えをスケッチにしてみたら?」
「兄様…簡単に言いますね」
「ユーリは言葉に出来ないといつもスケッチに認めるだろ?」
「それを誰に見せるの?」
「そうだなぁ、浄化石を作っている人・大工・石工職人などかなぁ?」
「そうなると沢山の人の手と資金が必要ですね…先は長そうです」
途中から黙って聞いていた両親は2人でなにか話しており、唐突に父が「ではユーリ私が資金と人手を準備しよう」と言い出し、母も「私はモデルタウンの申請をしてくるわ」…え?モデルタウン?何それ?
目を丸くした私に兄が「多分、父様も母様もどのくらい清潔な街を作れるのか維持出来るのかを知りたいんじゃないかな?」と説明してくれた。あ、そうなのね?ならば「では、お受け致します」ということになった。
ただ、王家には流行病後の対策として試したいからという申請理由にしてもらうことにした。
公爵家には目を向けて欲しいが、私には目を向けるなという意思でもある。
近年、公爵領では人口増加傾向にあり汚水処理をしなければ臭いが酷いのだとか。そこにきて雇用問題も挙がっているので、両親の悩みの種になっているらしく、子爵領で下水道ができ臭い問題が解決すれば公爵領でも取り入れ雇用も生まれるのかも知れないという考えらしい。
そんなに上手くいくのかしら?
臭い問題は早期解決が必要だけど…
ちょっと考えて他の案を提案してみましょう。
応援ありがとうございます!
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