3 / 7
"パラテの木"の正体は…
しおりを挟む少し肌寒くなってきた季節
直ぐに寒くなるのかしらね?
あーヤダヤダ。
そんな思考の中、兄と護衛2人を共に森の中を進んでいく。簡易転位ゲートを使えば直ぐにポイント地点まで着くけれど、それでは鑑定の成長を妨げるので歩きます。これもいいダイエットだと思えばなんて事ないの、ただね…靴が重い。
靴底が木に魔獣の皮をなめしたものを貼り付けたものだからとにかく重い。本当にこの世界は無いものが多くて困るのよ、魔法と外交にしか頭使ってないから進化が遅いんだろうと推察はしているが、きっと間違っていない。
あぁ、こんなこと考えてたらまた思考の渦に呑まれてしまいそうだから止めておこう。
「兄様はまだ婚約者は見つけないの?」
「今は研究が楽しいんだよね」
「そうなのね、気になる方も居ないの?」
「気になる子かぁー…」
「居ますのね(笑)」
「居るけど彼女には婚約者が居る」
「まぁ、でも先のことはわかりませんし」
「そうだね、気長に探してみるかな」
兄は一途なんだと思うの、だから気になる方に何か(破棄とか解消とかね)あれば即行動しそうだわ。きっと学園を卒業して会えなくなるまで諦めないでしょうね(笑)
時々、見つける知らない草花を鑑定しては兄と情報共有して歩いていると樹液のある場所へ到着。
あらら?バケツ一つでは足りてなかったみたいね、溢れてる…勿体ないわね。
「想像以上の量…」
「うん…凄いね」
「次は樽に貯めるようにしましょう」
「その方がいいと思う(笑)」
護衛1人に簡易転位ゲートで家に戻ってもらい樽を持ってきてもらう事に、すると兄は興味深けに樹液を手に取ったり粘度を確かめていたりしている。加熱するといいんだよね?何か混ぜる…えっと何だっけ……?
石油?いえ、違うわね
仮に石油だとしても、そんなものこの世界にはないから代わりになるものを混ぜて作るしかないわよね。魔獣由来の物で代用してみようかしら。
何が出来るのか分かりました?
このパラテの木から取れる樹液から作られるのはゴムです。
ゴムはあると便利なのよ?
どのくらいの硬度になるかやってみない事にはわからないけれど、上手くいけばタイヤもできるしそれにこの重たい靴の靴底も作れる…それに"コンドーム"もね?
そう、コンドームが欲しかったのよ(笑)
避妊具は大切よ?望まない妊娠を避けるための必需品。ジョシュみたいな男性同性愛者のためには病気予防にもなるんだし安心できるじゃない?
それにアフターピルも作りたいのよね。
薬師…あ、ヘンリーがいるじゃない!ヘンリーはジョシュの恋人よ。ジョシュの領地は薬草が育ちやすく広大な薬草畑を所持、運営をしてるのよ。
そこに手に職を付けようとしたヘンリーが雇用されてからの付き合いだそうよ?薬師の才能が開花したヘンリーはとにかく研究熱心、ヘンリーに相談してみましょう。
今はこの溢れたバケツを持って帰宅ね、兄も実験したがっているし早く帰って色々作ってみましょうか。
トライアンドエラー。
チートがないので何度も失敗を繰り返して形にするしかなく、涙目。
兄はパラテの可能性に着目してくれた。
学園に帰っても研究したいので定期的に樹液を持ってきて欲しいと頼まれました、一応ヒントとして炭を混ぜたらどうかと伝えておきましたけど聞くや否や実験して配合量を割り出しており、数日後には硬度の高いゴムを作り上げてくれました…その執念天晴れ(笑)
私なら年単位の時間がかかるところでした!
バラテで作った分厚いゴムシートを見せて貰ったのだけど、これはいい!と少しゴムシートを分けてもらい、その足で靴屋へ向かう。
職人の目の前でスケッチしたハイヒールを見せ靴底にゴムシートを取り付けて欲しい旨を話すと、最初は怪訝な顔をしていた職人達もいざ靴を作っていく過程でゴムシートの扱いやすさに「これは何処で購入できるので?」と問い合わせてきてくれた。
出来上がったハイヒールは前世のそれで私は大満足。今世のハイヒールって、花魁が道中で履いていた下駄のようなデザインで私には不便で仕方なかったのよね…。
このハイヒールに目をつけたのが母(笑)
どうも、立ち姿が美しく見えるようで「私も欲しいのだけどユーリにデザインお願いしてもいい?」とお願いをされた。
兄はゴムシートに特許申請を出してもらい、父は知り合いの商人と共に商会を立ち上げると公爵領でゴムシート工場を建設、雇用が増えたことでスラムの子供達も仕事をもらえるようになったそうで少し豊かになったのだとか。
ハイヒールは母が社交時に履いている姿を見た夫人達からの問い合わせで注文が殺到中だそうで、父はホクホク顔。
デザインは基本となる型を私が幾つかスケッチしておいた事で後はお抱えデザイナーに好みのものを作製しているそうです。
家族には「私が関係しているのは内密でお願いします、ゴムシートは兄の功績ですしね?」とお願いしておいた。
それに多様な種類のゴムシートを作っていた兄に、ガラスで作った大中小の手の形を模したものに液体状態のゴムに塗布し乾燥させたものを数枚作ってもらうと水仕事をする使用人へ渡して「水仕事の際、使用した感想を教えて欲しいの」とお願い。
1週間程で色々な意見があったが、概ね良い評価を得たゴム手袋があったので、これも商品化される事になった。
ある日のこと、実家に帰ってきていた兄が「このゴムシートどんなに頑張っても薄く膜を張るくらいの厚さにしかないないんだよな…」とボヤいた声を聞き逃さなかった私。
「兄様そのゴムシートで避妊具作れば?」
「え?避妊具?!」
「えぇ、男性側に装着すれば避妊できるのではなくて?」
「ちょ、ちょっと!淑女がなんてことを!」
「まぁ!では父様と母様に聞いてみましょ?」
「そう…だね」
両親をお茶に誘い先程の兄との会話を伝えると絶句した後、咳払いをした父から「まぁでも、それが可能ならば望まない妊娠は避けれる可能性があるものな…」と、母も頬に手を添え困ったように「そうね、妊娠すると心も身体も負担がかかるものね…望まない子だと余計に心の負担があるものだし」との声に兄は顔を真っ赤に染めながら「では、その…平均的なサイズなどを割り出して試しに作ってみます」
コンドームGET。
私も手伝い試行錯誤あったものの、試しに作ったそれは小瓶に入れ潤滑油に漬けたもので付属したピンセットで取り出せるようにしている。
ジョシュにコッソリ手渡し「病気の心配はこれで減るかもしれませんわ」と付け加えると大喜び(笑)
他にも女癖の悪い貴族に父が「避妊具だ、使い方は説明書に書いてあるからと」渡したそう。
使用感は兄の元へ届くようにしてあるが、きっと顔を真っ赤にしながら読んでる事でしょうね。
パテラの木は植樹しているが樹液が採取出来るようになるためには前世と同じなら5年ほどかかる為、様子をうかがいながら現状ある木を探して利用している。
早まったかしら?
それでも、貴族達からは父や母へ内密に相談されており多くは無いがそれなりに需要があるようである。どうも、甘やかされた子が外で孕むまたは孕まされる可能性を危惧しての需要であるのが悲しいところではあるが…
ん?私?
ないない、ないです。
今世では遊ぶ気なんて全くない。
前世の私が遊びすぎた結果、今世の私はその辺は真面目になってますよ?
むしろ嫌悪感さえある。
結婚して致す事があればその手腕は振るえるでしょうけど、生憎今の所は1人でも豊かに老後を迎える準備をしているのだから、ふふっ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる