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第2章 魔法学園
第49話 残りの学園生活
しおりを挟む結局俺は残りの学園生活を全力で楽しむことにした。
クラスメイトたちがこの街まで来てくれるまでがタイムリミット。みんなが帰って来てくれたら、俺はリエルやフリストたちとお別れして魔王討伐の旅に出る。
それまでにアルメリアが聖女になれるよう全力でサポートするつもり。彼女が回復系の新魔法を完璧に修得できるようにしてあげる。
他にふたりいるらしい聖女候補の子たちには悪いけど、俺は知り合ったアルメリアをえこひいきしちゃう。でも、念のために確認しておこうかな。
「ねぇ、フリスト。アルメリアは新魔法を使えるようになるためにこの魔法学園まで来てるけど、他の候補はなにしてるの?」
授業が終わって寮に変える時、フリストを呼び止めて聞いてみた。
「ふたりとも聖都にいる。彼女らは人々を癒す力を得るより、女神様に聖都から祈りを捧げることの方が重要だと考えているみたいだからね」
「へぇ。そっちの方が女神様的にはポイント高いのかな?」
「わかんない。回復系の新魔法が追加されたことなんて、少なくとも数千年は無い。僕が創られるより前からこの世界の魔法はほとんど変わってないんだ。だから新魔法を覚えようと選考期間中に聖都から出た聖女候補はアルメリアがはじめて」
聖都にいた方が、女神様が近くにいるって感覚は強いんだと。ただ女神様へ祈りを届ける行為っていうのは、基本どこにいても出来るらしい。
そう言うことなら、聖女として人々の救いになるための力を求めてこの学園に来たアルメリアを俺は応援したいな。
「わかった。教えてくれてありがと」
「僕もユーマに説明しようとしてたんだ。アルメリアはただ安全な聖都で祈ってるだけじゃなく、わざわざここまでやって来て新魔法を学ぼうとしてる。小さな頃からすごく頑張り屋さんだったの。僕が天使としての格を上げたいってのもあるんだけど、僕は純粋に彼女を応援したい」
「俺もそうだよ。だから明日、彼女が希望したら一般人にはまだ公開してない新魔法を教えてあげようかなって思ってる」
「えっ、いいの!? ほ、報酬はまた、僕との添い寝でいいかな?」
俺と一緒に寝て以来、フリストは女の子の身体で過ごすようになった。
制服は男子のものだけど。
「俺がアルメリアに教えたいって思ったんだ。フリストが代償を払わなくても良い」
聖女になっちゃうと魔物とは戦わなくなるだろうから、俺のスキル【特許権】で彼女からステータスポイントを貰うこともできないだろう。
特に見返りは求めない。
それでも良いって思ったんだ。
「ユーマ、ありがと!! 一緒にアルメリアを聖女にしようね」
「うん。全力で協力するよ」
「はーい。それはそうと、ユーマはこの後時間ある?」
本当なら授業後は新魔法研究会に顔を出さなきゃいけない。
「なにか用事?」
「アルメリアから食材を買ってきて頼まれてる。もう寮にある食材が尽きるみたい。でも5人分の食材だから量が多くなりそうでね。僕は君の要望に応えるために女の子の身体になって力が落ちてるんだ。てことで、僕を手伝ってほしい」
天使様とお買い物デートか。
教員たちと俺の考案した魔法について語り合うのはすごく楽しい。
でもそれと美少女とのデートを天秤にかけたら、デートの方が重要度が高かった。
先生たち、すみません。
「いいよ。買い物に行こう」
「わぁ、ありがと!」
フリストが抱き着いてくる。
すごく良い匂いがした。
狙ってやってるのか分からないけど、こんなことされると意識してしまう。
なんとか彼女が離れていくまで耐えきった。
「買い物のリストとかあるの?」
「これ。ここにない食材でも、食べたいものを買っていけば調理してくれるって」
聖女候補ってことは、身の回りの世話をしてくれるメイドさんとかいるようなお嬢様だったんじゃないのかな。それでも料理ができるって凄い。しかもおいしい。
将来、彼女が結婚することがあれば、良いお嫁さんになりそうだ。
一瞬、アルメリアと食卓を囲む自分自身を妄想した。
幸せそうだった。
でも俺はこの世界のために魔王を倒さなきゃいけない。魔王を倒したら元の世界に変える。仮にこの世界に残って彼女と家庭を築いても、普通の人族の俺は若いままのアルメリアを残して老いて死ぬだろう。
同じ理由で、フリストやリエルにも無責任なことはできない。
俺は彼女たちに絶対手を出しちゃダメなんだ。
身体の関係を持つことはできない。
でも……。
「どうしたの? やっぱり何か用事があった?」
「いや、何でもないよ。それじゃ行こうか」
元の世界ではアイドルや女優にもいないような美少女たちと過ごす日々を、今だけは全力で楽しもう。
残り数日の学園生活、俺は悔いの残らないよう過ごすつもりだった。
──***──
みんなでカフェに行ってお茶をした。
リア充だなって実感できた。
アルメリアが無事に新魔法を使えるようになった。その日、御礼と称して彼女が作ってくれた大量の手料理はどれも本当においしかった。
またフリストに添い寝してもらった。
リエルは10個の新魔法を使えるようになり、俺の頬に10回キスしてくれることになった。でもとりあえずまだ貯めてある。
ニーナはずっと語尾が「にゃ」のまま。魔法の授業で、担任代行の俺が回答者に彼女を指名した時の「はいにゃ!」って返事がめっちゃ可愛い。癒される。
そんなこんなで、俺がクラスメイトたちと別れてから1週間が経っていた。
もうすぐリエルたちとお別れだ。
ただ、まだこの街に湊や田中たちは来ていない。
古城跡の方で俺を探しているんじゃないかと思い、何度か足を運んだけど誰もいなかった。書置きとかもされていなかった。
き、きっと深いダンジョンとかに潜ってなかなか出て来られなくなってるんだ。
俺のことを完全に忘れたなんてことない…はず……。
──***──
それからまた1週間経った。
約束した日から2週間。
まだクラスメイトの姿は見かけてない。勇者がどこかで活躍しているって話しも聞かなかった。
「まさか、俺の新魔法を魔族が使ってみんなやられちゃったとか?」
最悪の状況を考え、ものすごく不安になる。
でも情報がなかった。
ただ時間が過ぎていった。
──***──
数日で終わると思っていた学園生活も、明日で1か月が経つ。
しかしクラスメイトたちは帰ってこない。
仲間を探す新魔法をスキル【特許権】で創ってみたが、探索条件に仲間の持ち物などが必要になってしまう。これは大精霊さんに相談してもどうしようもなかった。
魔王が行使した天地晦冥のせいで、俺はクラスメイトの髪の毛一本すら入手できなかったんだ。
俺の不安は限界に達していた。
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