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学園に行くようです
入学式
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見慣れた景色が視界を流れていく
カタカタと音を奏でながら揺れる馬車、その馬車にはラージェネ王国財務大臣に就いているランドール家の家紋が描かれていた
その馬車内には一人の美しい令嬢がいた
腰まで伸びているその銀色の髪の毛は傷みなど微塵も感じなく、琥珀色の瞳はパッチリと長い睫毛で整った顔は更に際立っていた
令嬢ことユリアナ・フォン・ランドールは新たに始まる新しい生活に心を踊らせていた
魔法大国ラージェネ王国にある王立アルダーナ魔法学園一学年6クラス編成で四学年構成である。ユリアは今日の入学式終えたら晴れて一年生へとなるのだ
「到着しました」
御者のその声と同時に動いていた馬車が静かに止まった
学園の門には既に何台かの馬車が置かれておりその場には多くの学生服に身を包んだ年頃の男女で溢れていた
ありがとうと言い馬車から一歩出ると一気にその身に視線を集めた
…え、わたし何かしましたか!?
と焦るが実際は彼女の美しい容姿で周囲の人々はユリアに視線を寄せているだけである
すると、何故か学園の門の奥、つまりは内部の方から人の声がざわざわとするのを聞いたユリアは視線を移す
「おい、ユリア」
そこに居たのは2年前から友人としての関係が続くこの国の第2王子アラン・ジス・ラージェネだった
「アランっ!!」
意味も分からなく視線の嵐に耐えて居たユリアからしたら友人であるアランの登場に嬉しくないはずもなく、声を掛け彼に駆け寄った
「ちょっ、ちかいっ!」
駆け寄っただけで距離を置くように一歩下がられた
え、わたしアランに嫌われてるの?!
とショックを隠しきれない顔で彼を見ると
「あー違うからな、俺は俺の命が惜しくて一歩引いただけだからな」
意味のわからない事を言ってきただけである
「私が貴方に近寄るだけで何故命に関わるのよ?私は病原菌ではないわ!」
「お前は知らなくていいよな…こっちの気も知らないとか腹立つけどよ…」
え、だから理由聞いてるのに何故か呆れられながらも怒られた…なぜ!?
「とりあえずいくぞ」
「どこに??」
呆れた視線を送ってきてアランはユリアの手を掴んで歩き出した
その時、二人のやりとりを見て居た周囲の生徒たちが一気にざわついた
「…いや、これは不可抗力だ…これは不可抗力…だから俺は悪くない…悪くないはずだ…」
ブツブツと顔を歪ませながらアランは早足で歩き出す
「ちょ、はやい…アラン早いよ!もう少しゆっくりとして」
「いや、だが…もしこれが兄上にバレたら…だけど、あのまま周囲の生徒達がユリアを見ていたらそれはそれで血生臭いことに…」
「ねぇ、アラン?」
「よし、俺は間違ってない…間違ってないのになぜか胸騒ぎが…」
「アランっ!!」
ようやくユリアの声に気づいた彼は彼女の言いたい事を察するとその歩を緩めた
「どうかしたの?先程からブツブツとして」
「いや、なんでもない。お前、伯爵達は後から来るのか?」
いつの間にか繋がれていた手は外れていて、少し寂しいと思ったが口にはしない
「うん、親族席から見てるって言ってたよ」
「ふーん…あ、そういえば」
急に思い出したかのようにわたしに向き直ったアラン
「今日、壇上で挨拶する人達が誰か知ってるか?」
壇上っていうと…んーと在校生代表の人と新入生代表…あ、アランのことよね、
それと学園長の挨拶に陛下…つまりは
ルーズベルト様がご挨拶なされるはずよね?
「うん、知ってるよ」
「え、お前知ってるのか?」
その言葉のどこに驚いたのかはよく分からないが目を丸くしていた
「そんなの冊子に書かれてるから誰でも知ってるよ」
あー…やっぱり知らないか
と零した彼になにが?と聞き返したが
後からのお楽しみ。と返されたので口を閉ざした
在校生の席と新入生の席の内在校生は既に席が埋まっていて、新入生の席もかなり埋まっていたが、二席空いてるスペースを探してそこに腰掛けた
「あ、そういえば、壇上で挨拶って緊張しない…見た感じしてないね…」
「そんなことで緊張なんかするか、あほ」
2年前から変わらず口は悪いアランだが、それでも彼の優しさを知ってるからこそ敢えて流す
「なによ、心配してるのよ?もし、噛んだりしたら…」
「したら?」
クスっと笑って極上の笑みを浮かべて口を開いた
「高笑いでもしてさしあげてよ?おほほ」
ふざけた感じで挑発すると彼は顔を逸らして肩を震わせた
え、そんなに怒られることなの?少しふざけただけなのに
「くそっ…凶器だ…この顔面凶器め…」
ポツリと呟かれただけなのだろうが隣同士なので、もちろんユリアの耳には入って
「ちょ、凶器!?それは酷くないです!?わたしがそんなに容姿整ってない事など私が一番知ってますもん!」
「そのアホさも一緒にどうにかしろよ!!」
彼はこっちに顔を向けて言いのけた
「またアホって言いましたね!さっきは流しましたが、今は流しませんからね!」
ユリアの強気な態度に怯んだがアランは鬱陶しいと言わんばかりな態度で
「あぁ!!だからっ…お前は別に」
「別になによ?」
「か…わ…ぃ…とは……も…う…」
ほんとにボソボソっとした声は流石に聞こえなくて、でも彼の整った顔が真っ赤に染まっているのを見ると熱でもあるのかと額をくっ付けた
「熱は…ないわね」
「っ…おまえ…!!」
慌てて肩を押されたのでくっ付いていた額は離れてアランは先ほどより顔を更に赤くしている
「体調悪いなら言いなさいよ、先生呼んで来るわ」
席を立ち教師を呼びに行こうとしたユリアの手を掴むと無理やり引っ張り席に着かせた
「体調が悪いんじゃないから気にするな。それよりもう始まるぞ」
「ならいいのだけど…」
いつの間にか先ほどの怒りなど消えていたがそれには気づく事なく彼に言われた通り居住まいを正して前を見据える
ビクッ
「やばっ…」
隣から漏れたその声になにが?と聞き返すとなんでもないと返ってきた
ーーやっぱりアラン今日は体調悪いのかな?急に武者震いみたいにビクッとしたし…
ーーくっそ、違います兄上、不可抗力ではないけど、俺はユリアに深い想いなど抱いてない…だからその冷たい視線を何処からともなく俺に当てないでくださいっ…
アランの苦悩はユリアの知らぬところでまだまだ続く…
ーーーーーーーーーー
いよいよ、学園編ですよ!!
相変わらずアランは苦悩しているようですね笑
次回新キャラ出せたらなぁ…と考えてます!
ありがとうございました!感想お待ちしてます!
一部修正しました!!
指摘ありがとうございます!
カタカタと音を奏でながら揺れる馬車、その馬車にはラージェネ王国財務大臣に就いているランドール家の家紋が描かれていた
その馬車内には一人の美しい令嬢がいた
腰まで伸びているその銀色の髪の毛は傷みなど微塵も感じなく、琥珀色の瞳はパッチリと長い睫毛で整った顔は更に際立っていた
令嬢ことユリアナ・フォン・ランドールは新たに始まる新しい生活に心を踊らせていた
魔法大国ラージェネ王国にある王立アルダーナ魔法学園一学年6クラス編成で四学年構成である。ユリアは今日の入学式終えたら晴れて一年生へとなるのだ
「到着しました」
御者のその声と同時に動いていた馬車が静かに止まった
学園の門には既に何台かの馬車が置かれておりその場には多くの学生服に身を包んだ年頃の男女で溢れていた
ありがとうと言い馬車から一歩出ると一気にその身に視線を集めた
…え、わたし何かしましたか!?
と焦るが実際は彼女の美しい容姿で周囲の人々はユリアに視線を寄せているだけである
すると、何故か学園の門の奥、つまりは内部の方から人の声がざわざわとするのを聞いたユリアは視線を移す
「おい、ユリア」
そこに居たのは2年前から友人としての関係が続くこの国の第2王子アラン・ジス・ラージェネだった
「アランっ!!」
意味も分からなく視線の嵐に耐えて居たユリアからしたら友人であるアランの登場に嬉しくないはずもなく、声を掛け彼に駆け寄った
「ちょっ、ちかいっ!」
駆け寄っただけで距離を置くように一歩下がられた
え、わたしアランに嫌われてるの?!
とショックを隠しきれない顔で彼を見ると
「あー違うからな、俺は俺の命が惜しくて一歩引いただけだからな」
意味のわからない事を言ってきただけである
「私が貴方に近寄るだけで何故命に関わるのよ?私は病原菌ではないわ!」
「お前は知らなくていいよな…こっちの気も知らないとか腹立つけどよ…」
え、だから理由聞いてるのに何故か呆れられながらも怒られた…なぜ!?
「とりあえずいくぞ」
「どこに??」
呆れた視線を送ってきてアランはユリアの手を掴んで歩き出した
その時、二人のやりとりを見て居た周囲の生徒たちが一気にざわついた
「…いや、これは不可抗力だ…これは不可抗力…だから俺は悪くない…悪くないはずだ…」
ブツブツと顔を歪ませながらアランは早足で歩き出す
「ちょ、はやい…アラン早いよ!もう少しゆっくりとして」
「いや、だが…もしこれが兄上にバレたら…だけど、あのまま周囲の生徒達がユリアを見ていたらそれはそれで血生臭いことに…」
「ねぇ、アラン?」
「よし、俺は間違ってない…間違ってないのになぜか胸騒ぎが…」
「アランっ!!」
ようやくユリアの声に気づいた彼は彼女の言いたい事を察するとその歩を緩めた
「どうかしたの?先程からブツブツとして」
「いや、なんでもない。お前、伯爵達は後から来るのか?」
いつの間にか繋がれていた手は外れていて、少し寂しいと思ったが口にはしない
「うん、親族席から見てるって言ってたよ」
「ふーん…あ、そういえば」
急に思い出したかのようにわたしに向き直ったアラン
「今日、壇上で挨拶する人達が誰か知ってるか?」
壇上っていうと…んーと在校生代表の人と新入生代表…あ、アランのことよね、
それと学園長の挨拶に陛下…つまりは
ルーズベルト様がご挨拶なされるはずよね?
「うん、知ってるよ」
「え、お前知ってるのか?」
その言葉のどこに驚いたのかはよく分からないが目を丸くしていた
「そんなの冊子に書かれてるから誰でも知ってるよ」
あー…やっぱり知らないか
と零した彼になにが?と聞き返したが
後からのお楽しみ。と返されたので口を閉ざした
在校生の席と新入生の席の内在校生は既に席が埋まっていて、新入生の席もかなり埋まっていたが、二席空いてるスペースを探してそこに腰掛けた
「あ、そういえば、壇上で挨拶って緊張しない…見た感じしてないね…」
「そんなことで緊張なんかするか、あほ」
2年前から変わらず口は悪いアランだが、それでも彼の優しさを知ってるからこそ敢えて流す
「なによ、心配してるのよ?もし、噛んだりしたら…」
「したら?」
クスっと笑って極上の笑みを浮かべて口を開いた
「高笑いでもしてさしあげてよ?おほほ」
ふざけた感じで挑発すると彼は顔を逸らして肩を震わせた
え、そんなに怒られることなの?少しふざけただけなのに
「くそっ…凶器だ…この顔面凶器め…」
ポツリと呟かれただけなのだろうが隣同士なので、もちろんユリアの耳には入って
「ちょ、凶器!?それは酷くないです!?わたしがそんなに容姿整ってない事など私が一番知ってますもん!」
「そのアホさも一緒にどうにかしろよ!!」
彼はこっちに顔を向けて言いのけた
「またアホって言いましたね!さっきは流しましたが、今は流しませんからね!」
ユリアの強気な態度に怯んだがアランは鬱陶しいと言わんばかりな態度で
「あぁ!!だからっ…お前は別に」
「別になによ?」
「か…わ…ぃ…とは……も…う…」
ほんとにボソボソっとした声は流石に聞こえなくて、でも彼の整った顔が真っ赤に染まっているのを見ると熱でもあるのかと額をくっ付けた
「熱は…ないわね」
「っ…おまえ…!!」
慌てて肩を押されたのでくっ付いていた額は離れてアランは先ほどより顔を更に赤くしている
「体調悪いなら言いなさいよ、先生呼んで来るわ」
席を立ち教師を呼びに行こうとしたユリアの手を掴むと無理やり引っ張り席に着かせた
「体調が悪いんじゃないから気にするな。それよりもう始まるぞ」
「ならいいのだけど…」
いつの間にか先ほどの怒りなど消えていたがそれには気づく事なく彼に言われた通り居住まいを正して前を見据える
ビクッ
「やばっ…」
隣から漏れたその声になにが?と聞き返すとなんでもないと返ってきた
ーーやっぱりアラン今日は体調悪いのかな?急に武者震いみたいにビクッとしたし…
ーーくっそ、違います兄上、不可抗力ではないけど、俺はユリアに深い想いなど抱いてない…だからその冷たい視線を何処からともなく俺に当てないでくださいっ…
アランの苦悩はユリアの知らぬところでまだまだ続く…
ーーーーーーーーーー
いよいよ、学園編ですよ!!
相変わらずアランは苦悩しているようですね笑
次回新キャラ出せたらなぁ…と考えてます!
ありがとうございました!感想お待ちしてます!
一部修正しました!!
指摘ありがとうございます!
応援ありがとうございます!
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